9月14日、つくば植物では「ナツメ」と「サネブトナツメ」の果実が熟して、大量に落果していました。
両種はクロウメモドキ科ナツメ属の落葉小高木です。
子供の頃、ナツメの実を食べたことを思い出します。
「ナツメ(棗)」(Ziziphus jujuba var. inermis) 中国、朝鮮半島原産
和名は芽立ちが遅く、夏に入って芽が出ることに由来します(夏芽)
葉は卵型もしくは卵状楕円形、長さ2~4cm、鈍鋸歯がある。
表面にはやや光沢があり、裏面は平滑。葉の基部にある細く鋭い刺は「托葉」が変化したもの。
初夏に淡黄色の小さい花を多数葉腋につける。
地中海沿岸や中国では古くから重要な果樹である。日本には古く中国から渡来。
果実は長楕円形で長さ1.5~2.5cmで黄褐色に熟します。
生食用とされるほか、乾果として菓子や料理にも広く用いられる。また、古くから薬用としても利用されている。
薬用には熟した果実が用いられます。生薬名をタイソウ(大棗)といい、風邪薬や健胃消化薬などの漢方処方に配剤されます。
おもしろいことに、葉を噛むと甘味を感じなくなります。これは葉に含まれる成分が舌にある甘味センサーをブロックするために生じるもので、ガカイモ科つる性多年草の「ギムネマ・シルベスタ」(Gymnema sylvestre)にも同様の作用があるとのことです。
「サネブトナツメ」(Ziziphus vulgaris var. spinosa) ヨーロッパから中国原産
和名は果実の果肉が薄く、そのため相対的に種子(核:サネ)の割合が大きく太いことから名づけられました。
枝には、葉の基部に生じる托葉が変化した細く鋭い刺があります。
葉は互生し、葉身は卵形から卵状楕円形で基部は非対称となり、3本の目立つ葉脈があります。
また基部は多くの植物と異なり、左右非対称です。
花は淡黄色で集散状につき、初夏に咲きます。
果実はナツメと比較し、小さくてやや球状となり、秋に赤褐色に熟します。
種子は果実の大きさの割に大きく、扁平で楕円状を呈しています。
「ナツメ」と「サネブトナツメ」を比較すると、ナツメの方が果肉が厚く種子が小さい。生食するとさわやかで上品な甘みがあります
一方、サネブトナツメは果実が小さく、果肉は薄い上に酸味があるため果物としてはあまり利用されません。
両種は非常に似ている植物で、学名は変種名の「inermis」と「spinosa」という違いだけです。
「inermis」はトゲのないという意味で、「spinosa」はトゲの多いという意味ですが、ナツメにも刺はあります。
学名を命名した際の標本が無刺種であったようです。
出典:解説はつくば植物園植物図鑑及び公益社団法人日本薬学会「今月の薬草」などより引用
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