9月末で放送が終わったNHK連続テレビ小説「らんまん」にも登場した「ジョウロウホトトギス(上臈杜鵑草)」(Tricyrtis macrantha)
'231026 つくば植物園
主人公の万太郎が本種を発見した時、「おまんは 誰じゃ?」と言ったのが印象的でした。その花に漸く出会うことができました。
よく似た「キイジョウロウホトトギス(紀伊上臈杜鵑草)」(T. macranthopsis)の花は、各所でよく見かけます。
和名は、約140年前に『牧野富太郎博士』が日本で初めて横倉山(高知県越知町)で発見し、花の美しさを宮中に奉仕する「貴婦人・上臈(女官)」に例えて命名しました。
博士は標本をロシアへ送り、ロシアの植物学者「マキシモヴィッチ」が新種として発表し、学名を付与しました。
ユリ科ホトトギス属の多年草。別名:トサジョウロウホトトギス
Tricyrtisは「3つの距」を意味します。高知県(越智町と佐川町、津野町の3か所に自生)の固有種。 絶滅危惧II類(VU)
花期:10月。長さ4~5cmほどで釣鐘状の黄花が葉腋にひとつずつ付き、下向きに咲きます。
雄しべと雌しべは花被片に包まれて外からは殆ど見えない。
『日本植物志図篇(明治21年)』第1巻第1集第1図版 石版(手彩色)4倍拡大(出典:筑波実験植物園牧野富太郎展より)
両種の違いは「ジョウロウホトトギス」↑は、花被片の内側にある紫褐色の斑点が先端にまで見られる。
葉は卵状の長楕円形で、基部が心形で茎の前に出る。
対して、「キイジョウロウホトトギス」↑は、花被片の先端部分には斑点がない。
葉の基部は心形だが、耳片の片側が茎の前に出る。本種より葉が細長い。
「キイジョウロウホトトギス」は、和歌山県の紀伊半島南部にのみ自生します。
「ジョウロウホトトギス」の変種または亜種という説もあります。
仲間には、「サガミジョウロウホトトギス」(T. ishiiana)、「スルガジョウロウホトトギス」(T. ishiiana var. surugensis)があります。