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波乱含みの2025年が明けた 【連載】頑張れ!ニッポン⑰

2025-01-09 05:30:13 | 【連載】頑張れ!ニッポン

【連載】頑張れ!ニッポン⑰

波乱含みの2025年が明けた

 

釜原紘一(日本電子デバイス産業協会監事)

 

 

▲エヌビディアのロボットAI

 

半導体売上ランキング上位の動き

 年が明けても半導体業界は相変わらず目まぐるしい動きをしている。業績不振に苦しむインテルからは多くの人材が流出しているとの報道があった。主にエヌビディア、サムスン、AMDなどへ流れていると私の知人は言っていた。インテルはAI向けの製品等の開発遅れが指摘されているが、昨年12月1日に退任した同社元CEOのパット・ゲルシンガー氏が数年前のリストラで技術者を減らしすぎたのではないかと言う人もいる。
 今は絶好調のエヌビディアが今後どこまで走り続けるのかということも関心の的だ。その成長があまりに急激だったので、どこかに歪が生じていないかと心配するのは日本人的発想だろうか。
 韓国のサムスンも最近怪しくなっていると指摘する人もいる。サムスンに次ぐメモリ大手の韓国のSKハイニックスがHBMというメモリで売り上げを急拡大させて、サムスンを激しく追い上げているというのだ。 
「SKハイニックスなんて、数年前までは潰れるのではないかと思っていたのに」と知人のひとりは言う。エヌビディア向けにHBM(High Bandwidth Memory)というDRAMの開発に成功し急成長したと言われている。
 HBMはメモリチップとロジックチップを重ね合わせて立体構造をとって、データの転送スピードを驚異的に速くしたものだ。大量のデータ処理を必要とする画像処理プロセッサに必要なメモリとしてエヌビディアが大量に調達している。
 そんなわけで、SKハイニックスは今やサムスンに迫る勢いだらしい。HBMはシリコンチップを積層するので技術的には大変難しいとされている。他社もHBMの製造に注力しているが、SKハイニックス社はこの技術の確立にいち早く成功していた。

▲サムスンに迫る勢いのSKハイニックス▼

 

日本は本当に「技術大国」か?

 半導体技術には設計技術、プロセス技術、パッケージ技術などがある。設計技術はアメリカが抜きん出ており、ファブレス半導体企業が多く誕生する土壌となっているようだ。日本はプロセス技術が得意であったが、先端工場が無くなると共にプロセスエンジニアが大量にリストラされたので、日本には先端プロセスに精通した技術者は少なくなった。
 プロセス技術の最高の人材は今やTSMCに集中しているのではないかと想像される。パッケージ技術は、日本もまだ強みがあると期待したい。しかし、先端技術を追求できる半導体メーカが少なくなった今、この分野でも劣勢に立たされるのではないか。
 何しろ日本には半導体技術者が少なくなっているからだ。そもそも日本の大学で理工系の学生の割合は30%程度だが、先進諸国は大体50%前後だとのデータがある。技術立国などと言うが、実態は文系大国ではないかと思えてくる。

国際競争力が低下した日本

 IMD(国際経営開発研究所)が発表した2024年版の『世界競争力年鑑』(2024年6月公表)によると、日本は67か国・地域の中で38位であり、前年の35位からさらに低下している。過去を振り返ると、このデータが初めて公表された1989年からバブル期終焉の1992年までは日本は世界1位だったのだ。
 しかし、バブル崩壊から金融危機を経て日本の順位は年々低下し、2019年以降は30位台で推移している。2024年の順位では韓国が20位、中国が14位、台湾が8位となっている。因みに1位はシンガポール、2位がスイスだった。
 競争力評価の項目は多岐にわたるが、項目別の日本の順位は経済状況21位、政府の効率性42位、ビジネスの効率性51位、インフラ21位となっている。「失われた30年」と言うが、こういうデータにもそれが反映されているのだ。そんな状況が世間でどの程度知られているか知らない。だが、日本がいつまでもこのような状態を許していい訳がない。
 私は製造業出身なので、どうしても製造業中心の発想で考えてしまう。「日本は国土も狭くて資源も乏しいので、1億人が生きていく為には原料を海外から輸入し、それを加工して付加価値の高い製品として輸出するしかない」とずっと信じて来て、製造業への道を進んだのが正直なところである。しかし、昭和に生まれ育った人間が抱く、古い発想なのかも知れないと一抹の不安も感じている。
 経済の中心が一次産業から二次産業、さらに三次産業へと流れて行くのだとすれば、今後の日本はソフト産業に力を入れてもいいかも知れない。現にアニメや映画などが海外で人気があると聞くと、ソフトパワーも今後期待できる分野なのかと思う。が、経済安保の観点からは重要産業の製造を他国に依存するのは避けなければならないだろう。
 また、製造業は日本人の気質に合っているような気もする。細かい事にこだわって面倒な事も根気よく続けるのが日本人だ。その点、台湾など中華圏では手っ取り早く儲けられる商業に興味があり、時間のかかる製造には余り関心が無いと聞く。ところが、TSMCの台頭を見ると、決してそんなことはないようである。さて、日本はこれからどうなって行くのだろうか。今年も面白くなりそうだ。

 

【釜原紘一(かまはら こういち)さんのプロフィール】

昭和15(1940)年12月、高知県室戸市に生まれる。父親の仕事の関係で幼少期に福岡(博多)、東京(世田谷上馬)、埼玉(浦和)、新京(旧満洲国の首都、現在の中国吉林省・長春)などを転々とし、昭和19(1944)年に帰国、室戸市で終戦を迎える。小学2年の時に上京し、少年期から大学卒業までを東京で過ごす。昭和39(1964)年3月、早稲田大学理工学部応用物理学科を卒業。同年4月、三菱電機(株)に入社後、兵庫県伊丹市の半導体工場に配属され、電力用半導体の開発・設計・製造に携わる。昭和57(1982)年3月、福岡市に電力半導体工場が移転したことで福岡へ。昭和60(1985)年10月、電力半導体製造課長を最後に本社に移り、半導体マーケティング部長として半導体全般のグローバルな調査・分析に従事。同時に業界活動にも携わり、EIAJ(社団法人日本電子機械工業会)の調査統計委員長、中国半導体調査団団長、WSTS(世界半導体市場統計)日本協議会会長などを務めた。平成13(2001)年3月に定年退職後、社団法人日本半導体ベンチャー協会常務理事・事務局長に就任。平成25(2013)年10月、同協会が発展的解消となり、(一社)日本電子デバイス産業協会が発足すると同時に監事を拝命し今日に至る。白井市では白井稲門会副会長、白井シニアライオンズクラブ会長などを務めた。本ブログには、平成6年5月23日~8月31日まで「【連載】半導体一筋60年」(平成6年5月23日~8月31日)を15回にわたって執筆し好評を博す。趣味は、音楽鑑賞(クラシックから演歌まで)、旅行(国内、海外)。好きな食べ物は、麺類(蕎麦、ラーメン、うどん、そうめん、パスタなど長いもの全般)とカツオのたたき(但しスーパーで売っているものは食べない)


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