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地球儀を見ながら考えた 【連載】藤原雄介のちょっと寄り道(83)

2025-01-11 05:30:43 | 【連載】藤原雄介のちょっと寄り道

【連載】藤原雄介のちょっと寄り道(83)

地球儀を見ながら考えた

 

さまざまな世界地図

 

 普段、世界地図を見る機会はありますか。あるとすれば、殆どの場合、子供の頃から慣れ親しんでいる日本が世界の中心に位置している以下のような地図だろう。小学校低学年の頃、「日本は世界の中心なんだ!」と無邪気に誇らしく思った微かな記憶がある。領土の標記問題はさておき、中国やアジア諸国でも太平洋が真ん中にある構図は基本的に変わらない。

▲日本で使われている世界地図だと日本は世界の中心だ

 

 一方、下の写真は、我が家の居間に掲げている世界地図のパネルだ。英国で購入したもので、毎日飽かず眺めている。この地図では、日本は東の果て、極東の海上にポツンと孤立しているが、アジア以外、即ち、欧州、中近東、北中南米、アフリカでは押し並べてこれとほぼ同じレイアウトの地図が使われている。
 世界の中心はニューヨークかロンドンだ。気付かされるのは、太平洋と比べ、北大西洋も南大西洋も殊の外狭く、南北アメリカ、アフリカ、欧州は近接していると言うことだ。どちらの地図を頭の中に描くかで、世界の見え方は変わってくるだろう。

▲アジア以外の世界地図では、日本は世界の果てにある

 

 どちらの地図も、メルカトル図法で描かれているので、高緯度地域の面積が著しく大きく表示される。「Search Labs | AI による概要」では、メルカトル図法を以下の様に定義している。

〈メルカトル図法は、地球の各点を赤道に接する円筒面に投影した地図を作成する投影法です。フランドル(現ベルギー)の地理学者であるメルカト(Gerardus Mercator)によって1569年に提案されました。
 メルカトル図法の特徴は次のとおりです。
 ●経線は等間隔の平行線、緯線は経線と垂直な平行線で間隔が高緯度ほど大きくなる
 ●経緯線は長方形を構成する
 ●任意の2点を結ぶ直線は等角航路を示す
 ●十分狭い範囲では形が正しい
 メルカトル図法は、航海図や航空図などに広く用いられています。〉
 
 日本以外で使われる世界地図で好きな点がひとつある。それは、パンゲア大陸からローラシアとゴンドワナに分かれ、その後現在の五大陸が形成されたという「大陸移動説」が絵解きのようによく分かることだ。「アフリカの頭蓋骨」の後頭部は、カリブ海にスッポリ収まるし、世界各地の地形をジグソーパズルのように組み立てて行くのが楽しくて仕方がない。

 

 

 トランプ氏が大統領就任前から、カナダは米国の51番目の州になった方がお互いに幸せになる、グリーンランド購入、パナマ運河の管理権取得、メキシコ湾をアメリカ湾と呼ぶ、等などの暴言(?)を連発し、世界中から非難囂々である。どこまで本気なのか、相手が受け入れ不可能な問題提起をしておいて、後からそれを引っ込める代わりに譲歩を引き出すという中国人が好んで使うような交渉戦術なのか。恐らく世界中の政治家たちも理解し切れていないに違いない。
 日本のニュースでは、トランプ氏の発言そのものに焦点が当てられ、発言の背後にある意図については語られない。BBCなどは解説記事を配信したりしているが、日本のメディアは、「ワガママなジャイアンの戯言」で片付けている。
 私は、トランプ氏の挑発的な言説に同意する訳ではないが、地政学、安全保障の視点から見れば、合理性を感じる部分もある。現在、トランプ氏の発言で脚光を浴びているグリーンランドは、世界最大の島と言われているが、地球儀で北極周辺を真上から見ると、メルカトル図法の地図で見るほど大きくはないことが分かるだろう。
 更に、米国とロシアはベーリング海峡を挟んだ隣国であり、グリーンランド周辺の資源開発、温暖化によって航海が容易になってきた北極海の制海権確保が米露欧加にとって喫緊の課題となってきていることもよく理解できる。

 安倍総理(当時)が、「地球儀を俯瞰する外交」を提起した慧眼に改めて敬服したい。地球儀は、メルカトル図法の平面地図を見ているだけでは気付かない、様々なことを教えてくれるからだ。
「自由で開かれたインド太平洋(FOIP=Free and Open Indo-Pacific)」、日米豪印戦略対話 (Quadrilateral Security Dialogue)、海外の日系人社会との連携などのアイデアは、正に地球儀を眺めながら、思いつかれたのだろう。とりわけ、FOIPは、第一次トランプ政権で米国の国家戦略とした採用されたことを日本人は改めて思い起こすべきだ

 その点、石破総理はどうだろうか。アジア版NATO、自衛隊のグアム駐留、日米地位協定の見直しなどの華々しいキャッチフレーズが並ぶが、専守防衛でNATOのような相互防衛義務が果たせるのだろうか。
 なんでもアジア版NATOには中国の参加も検討の余地あり、と。一体どうすればそんな発想が出てくるのだろうか。米国に出張できない外務大臣もいる。ホントに日本の外交安全保障政策は大丈夫だろうか。

 

▲地球を北極中心に見ると北極海の周りに多くの国がひしめき合っているのがよく分かる

 

 さて、地図にまつわるちょっと面白い話を三つご紹介しよう。

【豪州から見た世界 Upside down World Map】
 オーストラリア国民から見た世界はこんな感じだ!勿論、ジョーク。こんな地図は土産物屋で売っている。

 

▲逆さま世界地図

 

【もう一つの逆さま地図 中国にとって日本列島は本当に邪魔】
 令和元年版の『防衛白書』に「我が国周辺海域における最近の主な中国軍の活動」と題された興味深い地図が載っている。この地図は、もともとは富山県が作成したもので、正式名称は「環日本海・東アジア諸国図」という。1994年に初版がつくられ、2012年に改訂された。
「中国、ロシアなどの対岸諸国に対し、日本の重心が富山県沖の日本海にあることを強調するのが富山県の目的だったが、防衛省・自衛隊では1999年頃から日本列島が大陸側からどう映るかを視覚的に理解するために使われるようになったという。
 なるほど、中国が太平洋に進出しようとするのを日本列島が意地悪く蓋をしているように見える。これでは、息が詰まりそうになるだろうと中国にヘンな同情をしてしまいそうだ。

 

▲令和元年版の『防衛白書』から中国から見ると日本列島は本当にジャマ

 

【ウリカトル図法による朝鮮半島と日本列島】
 ウリカトル図法とは、メルカトル図法とハングルの「ウリ=私たち(の)、我々(の)」との合成語だ。下の地図をご覧いただきたい。違和感を覚えませんか。そう、日本が意図的に小さく表示されているのだ。ちなみに日本海はEast Sea(東海)と表記されている。

▲ウリカトル図法による朝鮮半島と日本列島

 更に韓国のネトウヨの掲示板には、こんな地図もあるらしい。巨大な朝鮮半島に、ちっぽけな日本列島。まさか、同じ地図上に異なる縮尺が混在するこの異様な地図を真に受ける人はいないと思うのだが、韓国の方が大きいと信じている人は少数ながら実在するらしい。ホントかな? そして、英語とハングルで「日本海? 否、東海!」と書かれている。何故か、首都名がカタカナでソウルと書かれているのがご愛敬だ

 

 

▲ウリカトル図法だと、巨大な朝鮮半島と何故か異様にちっぽけな日本列島

 

           

  

【藤原雄介(ふじわら ゆうすけ)さんのプロフィール】
 昭和27(1952)年、大阪生まれ。大阪府立春日丘高校から京都外国語大学外国語学部イスパニア語学科に入学する。大学時代は探検部に所属するが、1年間休学してシベリア鉄道で渡欧。スペインのマドリード・コンプルテンセ大学で学びながら、休み中にバックパッカーとして欧州各国やモロッコ等をヒッチハイクする。大学卒業後の昭和51(1976)年、石川島播磨重工業株式会社(現IHI)に入社、一貫して海外営業・戦略畑を歩む。入社3年目に日墨政府交換留学制度でメキシコのプエブラ州立大学に1年間留学。その後、オランダ・アムステルダム、台北に駐在し、中国室長、IHI (HK) LTD.社長、海外営業戦略部長などを経て、IHIヨーロッパ(IHI Europe Ltd.) 社長としてロンドンに4年間駐在した。定年退職後、IHI環境エンジニアリング株式会社社長補佐としてバイオリアクターなどの東南アジア事業展開に従事。その後、新潟トランシス株式会社で香港国際空港の無人旅客搬送システム拡張工事のプロジェクトコーディネーターを務め、令和元(2019)年9月に同社を退職した。その間、公私合わせて58カ国を訪問。現在、白井市南山に在住し、環境保全団体グリーンレンジャー会長として活動する傍ら英語翻訳業を営む。


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