【連載】腹ふくるるわざ㉕
オミクロンの最期
桑原玉樹(まちづくり家)
東京は連日2万人突破
当ブロブに「オミクロンは終息へ」を書いたのは1月22日だった。1月19日までのデータを基に予測した結果だ。それから約2週間。新型コロナ感染者数はまだ減少していない。それどころか新聞の見出しは「東京ついに2万人突破!」「全国で9万人超え!」「オミクロン急増!」と相変わらず「!」のオンパレードだ。
確かに増加しているが…
「ほんまに終息に向かっているんかいな?」と、疑いの声も聞こえるようだ。そこで再度計算することにした。
西浦博教授(「8割おじさん」で有名)のような難しい感染症数理モデルではなくシンプルだが、むしろこちらの方が当たりそうに思う。東京が2日連続で2万人を超えた2月3日までのNHKの新型コロナ特設サイトにあるデータをグラフにしてみた。
千葉県、東京都、オミクロン先進県の沖縄県、そして全国を加えた。たしかに沖縄県以外は増加が続いている。ちなみにまん延防止等重点措置(まん防)の適用状況も同じグラフに表した。
新規感染者が急増している時期に適用されている。一見すると、政府や各知事は適正な対応をしているように見える。
増加率はもうすぐ1を切る
次に、京都大の藤井聡教授のご説にしたがって増加率を見てみた。増加率が1月5、6日にピークを迎えたことは前ブログ記事で紹介したが、その後も相変わらず減少している。
千葉県、東京都、全国いずれも多少のデコボコはあるものの、順調に下がっているではないか。沖縄県でちょっと予測より増加率の下がり方が少ないときもあったが、概ね前回の予測に近い。
新規感染者数が減少に向うかどうかは、増加率が1を切るかどうかにかかっている。沖縄県はすでに1月19日に1を切ったが、千葉県、東京都、全国ともにもうすぐ1を切りそうだ。
専門家は、「増加率に鈍化が見られるものの停滞することもあり得る」と相変わらずの慎重論だが、沖縄県は1を切って徐々にではあるが下がっている。他県も同じように減少すると見てよいのではないか。
ピークはもうすぐ
そこで増加率がこのまま減少し、ゆっくり1を切って0.9まで低下して安定するという仮定のもとに計算してみた。結果が下の図だ。もうしばらくは新規感染者数は増加するが、感染爆発ではない。間もなくピークを迎え、その後は減少するだろう。
「まん防」が功を奏したのではない
それなのに、「まん防」を適用する都道府県が増える一方である。2月5日には和歌山県も加わり、全国35都道府県に拡大された。間もなくして新規感染者数が減少すると、「『まん防』の効果が表れた」と言われるに違いない。
しかし、図で分かるように、すでに1月5、6日をピークに増加率は減少に向っているではないか。しかもこの日付は新規感染者報告日なのだ。感染→発症(発熱)→PCR検査→検査結果報告に至るまでに1週間から10日間はかかるだろう。
さらに増加率は過去7日の平均で計算しているので、3.5日のズレ、合計すると10日から2週間程度のズレが生じる。つまり、昨年12月末には、すでに感染者の増加率は減少に向っていたのだ。
新規感染者の減少は、決して「まん防」の効果ではない。ましてや「成人式で一部の若者が羽目を外したから感染が拡大した」なんて意見は、データを見る限り的外れである。
医療については、新規感染者数に応じた態勢をとる必要がある。が、今後の動向については、新規感染者数の増減ではなく、増加率の動きで判断すべきではないか。オミクロンが早く終息して、次の変異株が来たときには、大騒ぎせずに冷静に対応したいものだ。
【桑原玉樹(くわはら たまき)さんのプロフィール】
昭和21(1946)年、熊本県生まれ。父親の転勤に伴って小学校7校、中学校3校を転々。東京大学工学部都市工学科卒業。日本住宅公団(現(独)UR都市機構)入社、都市開発やニュータウン開発に携わり、途中2年間JICA専門家としてマレーシアのクランバレー計画事務局に派遣される。関西学研都市事業本部長を最後に公団を退職後、㈱千葉ニュータウンセンターに。常務取締役・専務取締役・熱事業本部長などを歴任し、平成24(2012)年に退職。現在、印西市まちづくりファンド運営委員、社会福祉法人皐仁会評議員。