【連載】藤原雄介のちょっと寄り道(61)
続・なんと私に詐欺電話が!
白井市(千葉県)
先週の記事を読んだ友人、知人、その他の沢山の方々から電話、LINE、メールで反応があった。思わぬ反響の大きさに驚くとともに、詐欺電話が社会問題化している事実をつくづく思い知ったものである。
「怖いね。自分だけは大丈夫、詐欺なんかに絶対引っ掛からないなどと侮らず、普段から詐欺電話を見抜き、対応できる心構えをしておかないとね」
そんな感想が殆どだった。
が、悪友たちの一部には――
「雄介も大したことないな。こんな単純な作り話にまんまと騙されかけるなんて!」
と思いやりのかけらもない辛辣な言葉を浴びせる、根性の悪い輩もいた。
確かに、後になって考えると、自分のアホさ加減がつくづく情けない。しかし、いきなり「警視庁捜査一課特殊犯罪捜査課」「秘密情報漏洩罪」「刑事罰逮捕状」「容疑者」「全銀行口座凍結」といった、オドロオドロシイ単語を突き付けられると、どうなるのか。
犯罪とは縁のない市民なら、、善良を絵に描いたような私市民なら、平穏な日常がいとも簡単に崩れていくような、恐怖にも似た感情に支配されてしまうだろう。
善良を絵に描いたような私もそうだった。真面目な口調のナカムラ刑事の話に耳を傾けながらも、同時に現状を整理し、とるべき行動について目まぐるしく考えを巡らせていたからだ。
相手の話に対する集中の欠如が、マイナンバーカード番号を迂闊にも伝えてしまった原因かも知れない。そう今になって思うが、本当に悔しい。
さて今回は、詐欺電話の後、私がとった一連の対策についてお話ししよう。
まず、市役所に行き、現マイナンバーカードの無効化と新規発行手続きをした。市役所の担当者はとても丁寧に対応してくれた。賢明なる読者諸兄姉皆様は、筆者のようにマインバーカード番号を漏らしてしまうような醜態とは無縁だと思う。
が、この機会に番号漏洩により予想される事態について理解しておくことも無駄ではないので紹介したい。
まず、マイナンバーカード番号が流失しただけでは、個人情報が盗まれることはない。また、本人になりすまして公的な手続きを行える訳でもない。マイナンバーカードを利用する際には、顔写真付きの身分証明書(運転免許証等)の確認が義務付けられているし、暗証番号も必要である。
しかし、住民票の移転、印鑑登録、婚姻届けの提出(ま、私には関係ないが…)などの手続きが勝手に行われてしまう可能性は排除できないらしい。これは、ネットで得た情報だが、どうしてそんなことができるのか、そのカラクリが私には分からない。
最も懸念されるのは、マイナンバーカードが銀行口座に紐付けされている場合、銀行口座の取引明細が閲覧される可能性だ。
マイナンバーカードの無効化と再発行手続きのためには、4枚ほどの届け出用紙に記入する必要があり、結構面倒くさかった。市役所の担当者は、「大丈夫ですよ!」と声を掛けてくれたが、同時に「是非、警察にも届け出てください」と助言された。
幸い、市役所内に所轄警察署の支部があるという。私は、早速支部のドアを開けた。簡単な報告・届け出でだけで事足りるだろうと思いきや、対応してくれた女性巡査から、予想に反し、根掘り葉掘り詳しい事情聴取を求められた。
▲「へー、すごいですね」と女性巡査がブログ記事を絶賛
途中で面倒くさくなったので、先週のブログ記事「なんと私に詐欺電話が!」を見せて、「詳しくはここに書いてあります」とスマホを差し出すと、彼女は食い入るように熱心に読み、「へー、すごいですね。こんなに詳細なレポートをよくまとめられましたね!」
と感心することしきり。続けて、「少々お待ちください」と言葉を残しながら、直ぐ所轄の警察署に電話し、担当刑事に結構長い時間をかけて報告していた。その結果、小一時間ほど離れた場所にある警察署から刑事が市役所まで事情聴取に来るという。
私はその日、別の用事があったのだが、きちんと刑事が捜査してくれるのであれば、心強いと考え、刑事の到着を待つことにした。人生で初めて自分が絡む事件で、刑事から事情聴取される思うと、何だか子供のようにワクワクドキドキした。
やがてホンモノの刑事(巡査部長)がやってきた。A刑事としておこう。30代半ばと見受けられる温厚そうな青年である。彼は、事前に私のブログを読み込んでおり、私と対面したときには事件の概要を把握してくれていた。
▲この人はA刑事ではありません
A刑事とのやりとりの詳細をここに記す訳にはいかないが、彼にはブログに書き切れなかった細かい情報を伝えた。また、A刑事は、詐欺犯人(たち?)が私のスマホにかけてきた総ての電話番号を記録し、わざわざ拙宅にまで足を運んで、固定電話の受信記録まで調べあげたのである。
「これまで(ブログ記事のような)詳細な詐欺電話内容の情報はなかったので、今後の詐欺電話対策に大変参考になります。犯人特定に向け、最大限の努力をしますので、ご安心ください」
A刑事は私に心強い言葉をかけてくれた。
この顛末を書くかどうか悩んだのだけれど、ひょっとしてこの駄文が詐欺電話犯人の目に留まるようなことがあれば、ささやかな抑止力にでもなりはしないかと書き留めた次第だ。
今後、事件の進展があればこの場を借りて報告しようと思うが、「秘密情報漏洩罪」で起訴されることのないようA刑事と相談してからにするつもりである。
【藤原雄介(ふじわら ゆうすけ)さんのプロフィール】
昭和27(1952)年、大阪生まれ。大阪府立春日丘高校から京都外国語大学外国語学部イスパニア語学科に入学する。大学時代は探検部に所属するが、1年間休学してシベリア鉄道で渡欧。スペインのマドリード・コンプルテンセ大学で学びながら、休み中にバックパッカーとして欧州各国やモロッコ等をヒッチハイクする。大学卒業後の昭和51(1976)年、石川島播磨重工業株式会社(現IHI)に入社、一貫して海外営業・戦略畑を歩む。入社3年目に日墨政府交換留学制度でメキシコのプエブラ州立大学に1年間留学。その後、オランダ・アムステルダム、台北に駐在し、中国室長、IHI (HK) LTD.社長、海外営業戦略部長などを経て、IHIヨーロッパ(IHI Europe Ltd.) 社長としてロンドンに4年間駐在した。定年退職後、IHI環境エンジニアリング株式会社社長補佐としてバイオリアクターなどの東南アジア事業展開に従事。その後、新潟トランシス株式会社で香港国際空港の無人旅客搬送システム拡張工事のプロジェクトコーディネーターを務め、令和元(2019)年9月に同社を退職した。その間、公私合わせて58カ国を訪問。現在、白井市南山に在住し、環境保全団体グリーンレンジャー会長として活動する傍ら英語翻訳業を営む。