白井健康元気村

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あなたも、やがて「ヨタヘロ」に 【気まま連載】帰ってきたミーハー婆(59)

2022-07-14 05:30:11 | 【気まま連載】帰ってきたミーハー婆

【気まま連載】帰ってきたミーハー婆(59)

あなたも、やがて「ヨタヘロ」に

岩崎邦子 

 



 またまたパークゴルフのプレーをしている時の話で恐縮だが、芝生の上を歩く人たちの姿を、つい観察してしまうようになった。さっさと歩く人、ゆっくり歩く人、のらり、くらりとした歩き方の人もいる。
 少し坂がある時には、仲間の誰かの支えが要る人もいる。年齢を重ねてきた人の特徴ともいえるが、首が前に出ている姿になるが、まだ元気にしっかり歩いている人。腰がかなり曲がっても、懸命に歩いている人。
 さて、私はどんな歩き方をしているんだろう。せっかちな私は自分の打った球に早く近づきたい気持ちで、少々足に痛さがあっても小走りや早足になってしまう。飛距離が出ない私は、順番として一番先に2打目を打つことになることが多いからだ。
 だが、こうした私の思いは、ゆっくり歩きたい人には、お気に召さないようでもある。組み合わせた時のメンバーによって、私の歩き方にも気を付けねばと思っている。
 昔は腰がうんと曲がって、乳母車を押しながら歩いていた婆さんが多かった。農家のように腰をかがめての仕事をしてきた人に顕著であったが、家事をするのも今のような便利な家電がなかった時代には、腰も曲がりやすいのだろう。
 最近は、シルバーカーとも言う手押し車を使う人も見かける。膝や腰への養生に利用されているようだ。今の時代は家事には電気製品が手助けをし、どこかに出かけるにも車があって、楽をしている分だけ足腰に筋力がなくなり、ぎっくり腰やひざ痛や外反母趾が起きるのかも。
 しかし、頑張って自分に合った運動をしたり、食事に気を付けたりして、日々を過ごしてきても、加齢というものは、容赦なく体にも脳にも衰えがやってくる。
 評論家の樋口恵子さんは今年90歳。現在、高齢社会をよくする女性の会の理事長で、次々と執筆活動も何年も前からされている。女性問題、福祉のことなど「婦人公論」にも度々登場され読んだことがある。
 以前に盛んに言われた言葉に「定年夫は濡れ落ち葉」があって、大いに話題になったものだ。濡れた落ち葉は、掃いても掃いてもひっついているが、定年後に趣味のない夫は、妻の後をくっついて離れない様子を、言ったものであって、定年夫への警鐘になったものだ。
 今も樋口恵子さんの活躍は衰えることもなく、著作も『老~い、どん! あなたにも「ヨタヘロ期」がやってくる』『人生やめるとき』『老いの福袋』など数多い。最近作に『老~い、どん!2 どっこい生きてる90歳』がある。
 気になったのは、「ヨタヘロ期」。一体何のことかというと、後期高齢者の75歳くらいから80代にかけて、少しずつヨタヨタヘロヘロの時期があって、やがて寝たきりの時が来ることになる、との警鐘だった。
 そのヨタヘロ期にも、なるべく外に出かけることが大切だ。聴力が衰えてくると、人との会話も遠慮がちになってしまう。樋口さんは、誰とでも良いから、会話を試みることを奨励する。例えばレジの人や受付の人でも。
 そんな樋口さんが言っている言葉に大いに感心し、納得のいくことがある。「微助っ人(ビスケット)」という言葉だ。たとえ、施設に入ることになっても、小さなことでも人のためになる行動をすることが、大切だと。
 先日、有料老人施設に入っている義姉(まさに卒寿の90歳)に電話をすると、大きな声も変わりのない返事がきた。コロナ騒ぎでこの所、帰省するチャンスもすっかり無くしているが、元気な様子。お互いの家族の子供や孫たちの近況などを話すことが出来た。最後に義姉は嬉しそうに言った。
「朝の涼しいうちに、施設周りの草取りを、少しずつしているの」
「え?もしかして、一人でしてるの?」
「外に出かける時は、手押し車の世話になってるけどね。他の人は、ちょっと歩くことも大変だからね」
「あとは、洗濯物を畳むことも、手伝ってるの。館長さんたちが、喜んでくれるのが、嬉しくてね」
 そうか、小さなことでも進んで出来る人が「微助っ人(ビスケット)」なんだと、納得できた。
 さて、最近の私は以前に仲良くしていた人の名や、物の名前がすっと出てこないことがある。会話の途中で、時々行くお店の名前がのどの奥に挟まったように、「あの~」と身振り手振り、口にすることが出来ないこともある。こうなってしまうと、人との会話もスムーズに進まなくなって、何とも、もどかしい。
 ド忘れくらいならまだ許されるだろうが、人との約束もうっかりするようになったら、認知症の初期を連想してしまう。なぜなら、以下のような、認知症への警告としての文面を読んだからだ。
「あなたが80歳になった時、あなたか、あなたの伴侶のどちらかは、すでに認知症を患っています」
 そっか、我が家はまさに、その認知症を、夫か私のどちらか、あるいは両方が患っていることになる。
 そうなると、好きなことをする仲間たちとの会では、年齢が上だからとか、経験豊富だからと言って、その会のお世話役などは、さっさと辞退することに限る。
 往々にして、かつての職場での上司として崇められたことが忘れられないとか、長老としての威厳を保ちたい人もいるかもしれないが、「老害」と陰口を叩かれているに違いない。
 辞める前には、後継者になってくれる人を、きちんと育て、暖かく見守るだけの度量も必要だろう。まだまだ元気でいるつもりの我が夫婦も、ヨタヘロ期の真っ最中である。それでも「微助っ人」が出来るような、日々を暮らしたい。

 

 

【岩崎邦子さんのプロフィール】 

昭和15(1940)年6月29日、岐阜県大垣市生まれ。県立大垣南高校卒業後、名古屋市でОL生活。2年後、叔父の会社に就職するため上京する。23歳のときに今のご主人と結婚し、1男1女をもうけた。有吉佐和子、田辺聖子、佐藤愛子など女流作家のファン。現在、白井市南山で夫と2人暮らし。白井健康元気村では、パークゴルフの企画・運営を担当。令和元(2018)年春から本ブログにエッセイ「岩崎邦子の『日々悠々』」を毎週水曜日に連載。大好評のうち100回目で終了した。


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