【気まま連載】帰ってきたミーハー婆(56)
6月の花に魅せられて
岩崎邦子
6月の花の代表のような紫陽花が見事に咲き誇る道を歩いていると、ついその一輪を手折りたくなる。そして脳裏をかすめるのが「花泥棒!」。そんな思いが先に立ってしまう。
花泥棒とは、他人の所有地に生えている花を、他人の許可なく持ち去る行為で、窃盗罪となる。花だけでなく、畑に入ってネギ(例)などを無断で取ってきたら、これも窃盗罪だ。
「花泥棒は罪にならない」の声もあるけど…。あまりにも奇麗な一輪の花をついつい摘んでしまった場合、「それは仕方がない。人間として理解できる」という意味なのかも。が、法律的にはれっきとした窃盗罪である。
さて梅雨時の今が最盛期なのが紫陽花。少し日陰を好む花だ。長谷寺や明月院の境内に見事に咲く紫陽花を、テレビで盛んに中継している。だが、日本各地には「おらの町が一番!」と、桜と同じように紫陽花の名所だと名乗る所が数多い。近場では松戸市の本土寺や、宗吾霊堂の東勝寺、川村記念美術館が挙げられる。
散歩中にどこからか良い香りが漂ってくれば、「くちなし」だろう。白い花で、私は大好きだ。「とても幸せ」「優雅」の花言葉も素敵ではないか。この時期は花の種類も豊富だ。
大事に育てられている花だけでない。愛らしい花を咲かせる雑草もある。カタバミ、タデ、アザミ、カラスノエンドウなどがあって、子供のころはシロツメ草(俗にクローバーと言っていた)の花を手折って、かんざしを作ったりしたものだ。
最近はアカツメクサのほうが、多くなってしまった。ドクダミはハート形の葉っぱが愛らしく、白い花びらのような苞が十字星のようで可憐、だが、その匂いには馴染めない。昔から虫刺され、化粧水、薬草茶になるとして重宝がられる。
春から夏にかけて道路沿いに咲く花で、オレンジ色のナガミヒナゲシ、464号線沿いの道端などにも咲いているが、力強くて黄色い花のオオキンケイギク、池などで見られ、やはり黄色い花のキショウブなどは、外来種なんだとか。
特に奇麗な黄色い花のオオキンケイギクは、ポットに入れて庭で植える人もいるらしい。でも、この花は強靭なあまり、在来種を駆逐することも。なので、人の手で広げないように、「特定外来生物」として駆除・処分されるんだって。
ところで、カレンダー上で6月には祭日はないが、私個人にはある。まず孫息子の誕生日だ。「父の日」もある。そして月末には、別に嬉しくもないけどね、私の誕生日もあるのだ。
25歳になる孫息子だが、通勤に便利なようにと、都区内で一人暮らし。食事づくりにも工夫しながら頑張っている様子だ。ついでに孫娘も独立していて、我が家は中老夫婦と老夫婦と相成った次第。
「父の日」は6月の第3日曜日である。どうして「父の日」が誕生したのか。男手一つで育ててくれた父に感謝したジョン・ブルース・ドット夫人が、「母の日」に習って提唱したのが始まりだという。
男女同権の立場から不都合であるという考えから、「母の日」の起源に遅れること3年、1934年にアメリカで「父の日委員会」が結成され、「父の日」が定められた。「母の日」のカーネーションほどポピュラーではないが、「父の日」の花はバラ(薔薇)となっている。
バラの花は愛好家も非常に多く、咲く時期も春(5月~6月)と秋(10月~11月)にある。その種類もいろいろあって、トゲのある木の総称である「うばら」「いばら」が、「ばら」に略された。
紫陽花と同じように次々と改良された新種のバラがあり、甘い香りが、香水の材料にも使われる。花の大きさが3㎝位の小さいのは、「ミニ薔薇」と呼ばれ、たくさんの花をつける。
さて、「父の日」に、アメリカの娘がLINEで「Happy Father's Day!」と送ってきた。孫娘と一緒の写真付きだったので、夫は殊の外、嬉しさが隠せないようだった。
「孫バカ」丸出しでパークゴルフをする仲間の女性に、「孫の写真!」などと、見せているのには呆れた。普段の孫娘は大学の勉強に忙しいからか、家族のグループLINEにも、スルーを決め込んでいることが多かったこともあっての、歓びなのだろう。
写真の背景には、Hoboken(ホーボーケン)の街から望むマンハッタンの夜景が美しく輝いて見える。ちなみに、「フランダースの犬」のホーボーケンは、ベルギー・アントワープ市から5㎞にある。
ニュージャージー州にあるホーボーケンは奇麗な街だ。娘の次女の大学があって、その一帯は治安も良くあるが、少し離れれば、やはり危険な地域もある。マンハッタンの中にもハイレベルな街並みもあるが、治安には問題ありの危険地域もあるのと同じだ。
孫は大学3年生。6月から夏休みになり、日本でも名の知れたLという化粧品会社のオフィスに週2日出かけ、残りの日はオンラインで仕事をするらしい。8月半ば過ぎまでインターンシップ(就業体験)をするのだとか。それらのことが、何とも楽しいらしい。
アメリカでは、コロナの騒ぎはもう過ぎたことのような周りの状況の中で、マスクのこともワクチンのことも話題にする人は、ほとんどいないようである。
だが、娘家族はアジア系のマーケットに行くときだけは、白い目で見られるのが嫌で、マスクの用意はしているという。日本でも、コロナ騒ぎは過去のものになって、マスク無しの生活が当たり前になるのが待たれる。
孫娘たちが小さかった頃、6月になると、日本に来て小学校に体験入学していた。以来、アメリカの長い夏休みを利用しての日本滞在の習慣が続いていたが、それが途絶えてしまったのは、やはりコロナ騒ぎが起因している。
日本への一時帰国も、円安の今はチャンスなのかも。入国後の待機規制もなくなったが、子供たちの学校(長女の孫娘は日本の大学、次女はアメリカの大学)事情や、バイトの都合、航空運賃(コロナ時期からは、かなり値上がって)のこと、日本の気候のことを考えて、思案しているようだ。
私達夫婦が今は元気にしているので、そうしたことを考慮の材料にしているのだが、どちらかに体調などの具合が悪くなれば、様子見をしながら日本に一時帰国してきてくれるだろう。
ベランダのアガパンサスの花は、薄紫の蕾が日に日に膨らんできた。元気で日々を過ごしていられるように!私の誕生日には、満開の花となって魅せてくれますように!
【岩崎邦子さんのプロフィール】
昭和15(1940)年6月29日、岐阜県大垣市生まれ。県立大垣南高校卒業後、名古屋市でОL生活。2年後、叔父の会社に就職するため上京する。23歳のときに今のご主人と結婚し、1男1女をもうけた。有吉佐和子、田辺聖子、佐藤愛子など女流作家のファン。現在、白井市南山で夫と2人暮らし。白井健康元気村では、パークゴルフの企画・運営を担当。令和元(2018)年春から本ブログにエッセイ「岩崎邦子の『日々悠々』」を毎週水曜日に連載。大好評のうち100回目で終了した。