大澤朝子の社労士事務所便り

山登りと江戸芸能を愛する女性社労士が、
労使トラブル、人事・労務問題の現場を本音で語ります。

◆退職金制度? あ、うちの総務部長に作らせるから

2014年02月05日 10時51分31秒 | 退職金
本日は、退職金のお話です。

今から10年以上も前になるでしょうか。

終身雇用制、年功序列時代の「遺産」である「基本給連動方式」の退職金をご存知でしょうか。

基本給連動方式といいますのは、最終基本給に勤続年数に応じた乗率を掛けて支給する退職金のことで、
最終基本給が基準となりますので、中小企業でも、結構な金額になったりするものです。

当時よく聞いた噂は、退職金制度を作った総務部長本人が定年退職を迎え、
自分はたっぷりの退職金をもらって退職していった。
後に残ったのは、すかすかになった会社の預金通帳。
次の退職者に払おうとしたら1円もなかった、というようなもの。

中小企業が「退職金破綻した」などという物騒な噂があちこちで聞こえていた頃がありました。

当時、低金利の影響で、適格退職年金廃止の問題が沸き起こっていました。
「退職金」にまつわる書籍も多数出版されました。
最も気に入った本では『小さな会社の退職金の払い方』(北見昌朗、大平吉朗共著)
がありましたが、「退職金倒産に脅える全国の社長さん必読!」なんていう帯が付いていました。

さて、会計処理上、退職金を社内準備(積み立て)しても、損金算入されません。
ですので、中退共、特退共、養老保険(損金算入は2分の1)、上乗せ年金制度等で退職金準備を
するのが「常識」なのですが、そんな難しい? 問題はともかく、

経営者さんと退職金の話をしていて、感じるのは、経営者の意識は昔と
ちっとも変っていないということ。まず、危機感がないです。

制度に対する認識もそうですが、退職金を取り巻く諸制度についてはあまりご存じない。
また、退職金制度を新たに作りたい、と考えている経営者の方も、所詮、自社内で
処理できる(専門家にお金を払ってまで作りたくない)という意識が結構あります。

それはそれで個人の自由なので、他人がとやかく言う必要はありません。

少なくとも、退職金制度を作るということは、労働契約上、従業員に約束することですし、
また、額も多額なものになりますので、多方面から検討する必要があると
申し上げたいだけです。

どうも、経営者の意識に「退職金債務」を負う「覚悟」が足りないように思われます。

「退職金制度? あ、うちの総務部長に作らせるから」。

自社の社員のみに任せて作った退職金制度の場合は、
前述の話ではないですが、

・「退職金破綻」の危険がないか
・世間相場からかけ離れていないか
・自社の実力に合っているのか

ぐらいは、少なくとも、経営者ご自身の目でしっかりとチェックしたいものです。

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