大澤朝子の社労士事務所便り

山登りと江戸芸能を愛する女性社労士が、
労使トラブル、人事・労務問題の現場を本音で語ります。

会社命令の「早帰り」に休業手当の支払い義務はありやなしや

2012年12月27日 00時18分43秒 | 労働基準

社会保険労務士の大澤朝子です。

よくあることなのに、誠を知らないために、間違ったことを

していることって、よくありませんか?

今日は、会社都合で「仕事もうないから、早く帰っていいよ」という場合の

休業手当の支払い方法についてのお話です。

 

ある会社で、9時から15時まで(休憩1時間)1日5時間働いているA子さん。

ある日、社長さんから言われました。「きょうは、仕事もうないから、14時で帰っていいよ」と。

(またか・・・)A子さんはパートタイマーなので時間給。最近受注が減って、パートの仕事も減り気味。

早帰りすると、その分の賃金はもらえません。

早く帰れるのはいいですが、その分給料が減ってしまうので、嬉しいような、

がっかりするような・・・。 

 

<質問>

こういう場合、会社は、A子さんに何か保障しなくていいのでしょうか?

次のうち、あなたが正しいと思う記号を1つ選んでください。

なお、労働条件の最低基準を定めている労働基準法の観点から答えてください。

A子さんの時給を800円と仮定します。

 

<選択肢>

(イ) 会社はA子さんに正規の勤務時間で得られたであろう賃金

  4,000円(5h×800円)を支払わなければ、労基法違反である。

(ロ) 会社は、A子さんの勤務時間が1時間減ったことを保障するため、

  1時間の賃金の100分の60(1h×800円×0.6=480円)を加算して、

  実働3,200円+480円=3,680円を支払わなければ、労基法違反である。

(ハ) 会社は、A子さんに、何も支払わなくてもよい。

  実労働時間分の賃金3,200円(4h×800円)を支払えば足りる。

 

<正解>

(ハ)

労働基準法では、使用者の責に基づく休業の場合、平均賃金の

100分の60(以上)の休業手当を支払わなければならない、とされています。

(労働基準法第26条)

これは、1日全部休業の場合も、また一部労働の場合も当てはまります。

 

また、6割というのは、賃金保障の意味ですから、とにかく、使用者は、

1日あたり6割の賃金保障をすれば、労基法上の責は免れることになります。

従って、1時間早帰りを命じた会社は、A子さんに6割保障、すなわち、

2,400円(5h×800円×0.6)以上を支払っていれば足りることになります。

この日、A子さんは、4時間分の賃金3,200円を受け取りました。

6割を上回っているため、使用者側に労基法の休業手当としての

不足分を保障する責はありません(昭27.8.7基収第3445号)。

 

もちろん、使用者が(イ)や(ロ)など、法を上回る休業手当を支払うことは

使用者側の自由であります。

 

<参考>労働基準法第26条「休業手当」

「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、

使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60

以上の手当を支払わなければならない。」

 

 

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