社会保険労務士の大澤朝子です。
高年齢者雇用安定法改正で、当事務所の顧問先も対応におおわらわです。
改正法の施行日は平成25年4月1日。
9月5日法公布から、政令、施行規則、局長通達、指針、Q&Aが出そろったのが11月9日。
他に仕事抱えているし、突然改正されても・・・現場(人事部)は少々困惑気味。
ご存じない方に一応説明しておきますが、
今度の改正は、原則として「定年後、希望者全員を65歳まで雇いなさい」というもの。
雇わなくてもいいのは、心身の故障など、就業規則の退職・解雇事由に
ひっかかる人だけ。これって別に人に言われなくても当たり前のことですけど・・・。
改正前は、希望者全員じゃなくてもよかったのです。一定の基準を労使協定で
定めて、その「基準」をクリアーした人だけ雇っていれば・・・。
もっとも、これまで、その「基準」にひっかかって雇用されなかった人の割合は
統計的には1.8%だっていうから、この問題にあまり目くじら立てることでもないような
気がしますが、裁判等紛争も起きて、深刻な問題もあったようです。
とにかく、改正法は成立し、来年の4月からは、例えば定年60歳の人の
場合、希望すれば会社は65歳まで継続雇用(注1)しなければならなくなります(注2)。
注1 継続雇用って? =①再雇用 ②勤務延長 のどちらでもOKです。
殆どが有期労働契約の「再雇用」ですが。
注2 継続雇用って、正社員でですか? いいえ、雇用形態や労働条件は
問いません。アルバイト、短時間勤務、嘱託、賃金、勤務時間等ご自由にお決めください。
問題は、経過措置。
原則として希望者全員を65歳まで継続雇用しなければなりませんが、
そうはいっても、今まで「基準」を使って一定程度選別していた会社側にも
配慮し、完全に雇用「基準」を廃止するのではなく、徐々に廃止していく方法が
定められました。
<労使協定で定める雇用「基準」の適用は…>
- H25.4.1~H28.3.31 61歳以上の者に限る
- H28.4.1~H31.3.31 62歳以上の者に限る
- H31.4.1~H34.3.31 63歳以上の者に限る
- H34.4.1~H37.3.31 64歳以上の者に限る
- H37.4.1~ 「基準」完全廃止
これを見て、普通の人は、あ、そうですか、くらいにしか思わないと思います。
ただし、これを人事が見たら、悩みます。
えーと、〇〇さんの再雇用の契約期間が終わるのは平成28年8月31日で、
契約更新日の9月1日においては、まだ〇〇さんは61歳だから
「希望者全員雇用しなければならない」けど、次の契約更新時の
平成29年3月1日においては62歳だから、「基準」を適用できる・・・
と、こんな調子です。
これを平成37年3月31日までやるんですから、人事の手間・気遣いは
大変なもの。いっそのこと、NTTグループのように、希望者全員を雇用し、
その分賃金を下げて、若年労働者の雇用に影響を与えないように
配慮する、という決断をしたのも、かなりうなずけます。