大澤朝子の社労士事務所便り

山登りと江戸芸能を愛する女性社労士が、
労使トラブル、人事・労務問題の現場を本音で語ります。

悩みます、定年後の再雇用。希望者全員?「基準」適用?

2012年12月23日 00時29分47秒 | 高齢者雇用

社会保険労務士の大澤朝子です。

高年齢者雇用安定法改正で、当事務所の顧問先も対応におおわらわです。

改正法の施行日は平成25年4月1日。

9月5日法公布から、政令、施行規則、局長通達、指針、Q&Aが出そろったのが11月9日。

他に仕事抱えているし、突然改正されても・・・現場(人事部)は少々困惑気味。

 

ご存じない方に一応説明しておきますが、

今度の改正は、原則として「定年後、希望者全員を65歳まで雇いなさい」というもの。

雇わなくてもいいのは、心身の故障など、就業規則の退職・解雇事由に

ひっかかる人だけ。これって別に人に言われなくても当たり前のことですけど・・・。

 

改正前は、希望者全員じゃなくてもよかったのです。一定の基準を労使協定で

定めて、その「基準」をクリアーした人だけ雇っていれば・・・。

もっとも、これまで、その「基準」にひっかかって雇用されなかった人の割合は

統計的には1.8%だっていうから、この問題にあまり目くじら立てることでもないような

気がしますが、裁判等紛争も起きて、深刻な問題もあったようです。

 

とにかく、改正法は成立し、来年の4月からは、例えば定年60歳の人の

場合、希望すれば会社は65歳まで継続雇用(注1)しなければならなくなります(注2)。

   注1 継続雇用って? =①再雇用 ②勤務延長 のどちらでもOKです。

      殆どが有期労働契約の「再雇用」ですが。

   注2 継続雇用って、正社員でですか? いいえ、雇用形態や労働条件は

      問いません。アルバイト、短時間勤務、嘱託、賃金、勤務時間等ご自由にお決めください。

 

問題は、経過措置。

原則として希望者全員を65歳まで継続雇用しなければなりませんが、

そうはいっても、今まで「基準」を使って一定程度選別していた会社側にも

配慮し、完全に雇用「基準」を廃止するのではなく、徐々に廃止していく方法が

定められました。

   <労使協定で定める雇用「基準」の適用は…>

  • H25.4.1~H28.3.31 61歳以上の者に限る
  • H28.4.1~H31.3.31 62歳以上の者に限る
  • H31.4.1~H34.3.31 63歳以上の者に限る
  • H34.4.1~H37.3.31 64歳以上の者に限る
  • H37.4.1~     「基準」完全廃止

これを見て、普通の人は、あ、そうですか、くらいにしか思わないと思います。

ただし、これを人事が見たら、悩みます。

えーと、〇〇さんの再雇用の契約期間が終わるのは平成28年8月31日で、

契約更新日の9月1日においては、まだ〇〇さんは61歳だから

「希望者全員雇用しなければならない」けど、次の契約更新時の

平成29年3月1日においては62歳だから、「基準」を適用できる・・・

と、こんな調子です。

 

これを平成37年3月31日までやるんですから、人事の手間・気遣いは

大変なもの。いっそのこと、NTTグループのように、希望者全員を雇用し、

その分賃金を下げて、若年労働者の雇用に影響を与えないように

配慮する、という決断をしたのも、かなりうなずけます。

 

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