大澤朝子の社労士事務所便り

山登りと江戸芸能を愛する女性社労士が、
労使トラブル、人事・労務問題の現場を本音で語ります。

◆変形労働時間制と割増賃金

2014年11月18日 14時55分51秒 | 労働基準
「従業員から割増賃金の請求をされた!」との相談で、一番多いのが、
・「変形労働時間制」を採っていない、
・入社時に「労働条件通知書」を渡していない、
・就業規則(賃金規程)もない、
という「3無い」の中小企業です。

もちろん、そういう事業所さんには社労士の指導が入っていないわけで、
給料支払いの現状を見ると、大変、大雑把といいますか、払わなくてもいいものを
支払い、払わなければならないものを支払っていないというようなことも見受けられます。

その「支払っていない」問題点を従業員から指摘され、
退職したら、労基署へ直行です。何十万の残業代の請求が――。

そういう企業さんのタイムカードを見ると、「変形労働時間制」を
採っていれば、こんなに残業代を請求されることはなかったのに……と
残念に思うことがあります。

変形労働時間制は、一般の事業所の場合は、次の二つのいずれかが可能です。
・1箇月単位の変形労働時間制
・1年単位の変形労働時間制

これらの変形労働時間制の場合、
以下の時間が法定労働時間外労働となります。

①1日の法定労働時間外労働
就業規則等で1日8時間を超える時間を定めた日はその時間、
それ以外の日は8時間を超えて労働した時間

②1週間の法定労働時間外労働
就業規則等で1週40(特例事業場44)時間を超える時間を定めた週はその時間、
それ以外の週は40時間を超えて労働した時間(①で時間外労働となる時間を除く。)

③対象期間の法定労働時間の総枠(40時間×対象期間の暦日数÷7日)を
超えて労働した時間(①又は②で時間外労働とされた時間を除く。) 

言い換えれば、対象期間の総枠の労働時間内ならば、就業規則等で所定労働時間を
定め、具体的には毎月の勤務カレンダーに定めることにより、変形労働時間制を
採らない場合よりも、残業時間とされる時間が軽減されるということです。

中には「うちは変形労働時間制を採っているんだ」と公言する人がいますが、
労基法に則り、一定要件をクリアーしていないと、変形労働時間制を採ったことに
なりません。口で言っているだけではダメです。

採用されたい場合は、お近くの社労士に相談してみてください。


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