未来が置いたラーメンをマコトさんは見た。
久しぶりに目にするぬりかべ屋のラーメン。
懐かしい安さんの麺。
息もつかずに全部食べた。
胸がいっぱいになって、何も言えずに店を出た。
マコトさんが置き去りにしてきた全部が、
ドンブリの中にあった。
自分が本当に好きだった人が、誰かがわかった。
釜飯屋を売り、葵さんに別れを告げた。
別れるに当たって葵さんが付けた条件は一つ。
葵さんがお金を受け取らないこと。
マコトさんの手元に億に近い金が残った。
マコトさんはぬりかべ屋の隣の土地を買って、
ぬりかべ屋の駐車場にした。
みんなに頭を下げた。
マコトさんが立ち上がりやすいように、
安さんがマコトさんの頭をいい音で一つ殴った。
昔の常連がそれぞれに歳を重ねて、
またぬりかべ屋に戻ってきた。