阿部ブログ

日々思うこと

米国民主党の中間選挙敗退と政策の継続性

2010年11月08日 | 日記
アメリカ民主党が先の中間選挙で大敗した。が、その予兆は既にあった。
2009年2月16日にオバマ大統領が署名して「アメリカ回復・再投資法」(American Recovery and Reinvestment Act of 2009、ARRA)が成立した。
このARRAにより送配電網再構築、スマートグリッド、再生可能エネルギー開発、電気自動車普及促進などへの一連の大規模な投資へと繋がっている。ただし、このARRA法案は、議会通過前後から様々な批判が沸き起こっていた。
これは様々な抗議活動を生み、ARRAなど景気刺激策に伴う国家債務の増加に対して全米に広まり始めた。この抗議活動は、「ティーパーティー」(Tea Party movement)と呼ばれ反オバマ色を強める大きなうねりとなっていた。
2010年2月6日にティーパーティーの大規模な全米集会がテネシー州ナッシュビルで開かれ、ペイリン前共和党副大統領候補(前アラスカ州知事)が基調演説を行い「大きな政府の下で(国民生活を)不安定にさせ(国家財政の)負債が増える」と批判している。米国議会予算局によれば2010年会計年度は、当初1兆3490億ドルと推定していたが、それを超え過去最悪の1兆6000億ドル(144兆円)に達するとしている。

この財政赤字の拡大と民主党の中間選挙敗退、つまりは共和党の反撃と保守派やリバータリアンの発言力と存在感が増す中、オバマ政権の政策の継続性が危ぶまれている。特に医療改革は反対のベクトルが強く働く事になるだろう。

また重要インフラである次世代電力網スマートグリッドの整備とも関連するが、電気自動車の普及に欠かせない充電インフラの整備が財政赤字の影響を最も大きく受けそうだ。
今後の電気自動車の大衆消費者市場の拡大には政府の支援が欠かせないが、公共の充電スタンド建設への政府融資を関係する企業・団体は求めている。しかし、こうした政府主体の財政支援は、政治的に強い反対に直面する可能性が高い。これは当初から認識はされていたが、今回の中間選挙に敗退した事でさらに困難さを増す結果となる。

今後、益々連邦政府の巨大財政赤字に対する懸念は増大する環境下で、GMとクライスラーを政府が救済したことに根強く反感を持つ議員もおり、電気自動車への補助金投入については財政的な側面の議論も含め様々な論争を巻き起こすだろう。今後の米国政府の政策継続性については、慎重に観察する必要がある。

グリーンランドの氷解と資源開発

2010年11月08日 | 日記
北極圏の海氷衰退が世界のエネルギー資源と海運に多大な影響を与える事は十分に認識されているが、グリーンランドの氷解による影響も十分に考慮されなければならない。北極の海氷と違い陸上に存在する氷塊が溶ける事による海面上昇は世界的な問題として認識されるべきである。決してツバルなど海洋国家だけの問題ではない。

グリーンランドは、世界最大の島で全体の80%が氷床と万年雪に覆われており、氷の厚さが最大3000メートルに達するところもあるほどで、例えばグリーンランドの全ての氷と雪が溶けた場合、現在の海面が約7.2メートル上昇するとの試算がある。

一方、北極海と同様、エネルギー資源においては、新たな鉱物資源の探査が可能とも言われている。日経新聞によると、温暖化によりグリーンランド沿岸の凍結時期が短くなっており、新たな航路の新設も可能になっているという。例えばデンマーク領グリーンランドの鉱物資源調査会社アンガス&ロス(AGU)社がグリーンランドに有するブラック・アンゲル鉱山で、従来鉱物を搬出できる時期が1年のうち半年だったのが、現在では8ヶ月になり、将来的には通年の搬出が可能となると予測している。

前述のようにグリーンランドの殆どは雪と氷塊に覆われており、沿岸部の一部しか資源探査が行われていなかったが、永久凍土の融解により深部での調査が可能となっている。このような状況から同島の鉱物資源を狙った動きが出てきている。例えばデンマーク政府は、国営石油NUNAOILを新たに設立。また鉱物資源開発の国営Nunamineralは新たに始まった金鉱開発への投資を募るためコペンハーゲン株式市場に上場したりしている。

グリーンランドの地質調査機関GEUSによると、同島の西沖合では原油が海底にしみ出す油徴が確認されているとの事で、サウジアラビアの原油埋蔵量の4割に当たる油田と、北海油田の3分の1に相当する油田の2つが眠っているという説もある。
北極や南極と違い、グリーンランドは自治政府の独立も含めまさに手付かず領域であり、我々は資源・エネルギー戦略の未開拓エリアとしてグリーンランドに着目するべきではないか。

イランの核問題の軍事的解決?

2010年11月08日 | 日記
イランは原子力発電など関連施設の建設を進めている。特にウラン転換施設は地下に建造されており、イスラエルの疑念を高める結果となっている。
この地下深くに構築された強固な建造物をどうやって攻撃し破壊するのか?
まずレーザー誘導弾10発程度の通常爆弾で地下に穴を開ける。この爆弾穴に、広島・長崎に次ぐ戦術核爆弾が投下されるだろう。

イスラエル国内にある空軍基地からイラン国内のウラン転換施設までは往復約3200km。この距離を地中海に向けてF15やF16が飛行訓練を繰り返しており、当然の如く燃料空輸機からの補給訓練も行われている。訓練としては準備万端。これらイスラエル空軍の動きはキプロスやマルタなどに展開するイギリスのGCHQや電子偵察情報組織が監視を続けており、当然アメリカも当然知っている。

しかし、イスラエルの攻撃準備が進むなか、イランは既に2003年に核兵器開発を断念しているという情報がある。確かに核武装して良いことは何も無いだろう。労力とコストと、それに見合う利益・国益を得る事ができるか?
これは考える必要が無いのは明らかだ。イランがペルシャ帝国の再興を目指すのでなければ~。

アメリカ政府がイランの核問題は軍事力ではなく外交により解決されるべきとしているのは、上記の情報を踏まえた当然の結果。
だが、イスラエルによるイラン攻撃の脅威はまだ収まっていない。イラクの混乱は未だ収まっていないし、アフガニスタンにおいてはベトナム以上の泥沼化が「ウィキリークス」などの情報から明らかだ。この間に位置するイランを更に攻撃するのか?

実は、2002年夏に米軍はウォーゲーム(軍事シュミレーション)を行った。この演習は「ミレニアム・チャレンジ2002」と命名されイランを仮想敵国としたもの。結果は米軍の敗退。その後、演習をやり直して勝利したが。
この演習では、ペルシャ湾岸に入った空母を中心とする艦隊が、イラン軍の自爆船や対艦巡航ミサイルによる攻撃を受け、艦船のほぼ半数が沈められるか、作戦遂行ができない状態に追い込まれた。これは米軍の電子監視網の裏をかいて巡航ミサイルと弾頭ミサイル戦力をうまく移動させた為、空軍の攻撃を回避出来た。イラクのように対空防衛レーダー・システムを稼働させれば、対レーダーミサイルを搭載した爆撃機に攻撃・破壊される。イラン軍はこの演習で対空防衛レーダーのスイッチをオフにしたのだ。
演習はイラン軍の対空防衛レーダーのスイッチを入れた状況でやり直しとなり、前述の通り、米軍の勝利。

ミレニアム・チャレンジ演習は、ペルシャ湾と言う制約が多いチョークポイントへの戦力投入を阻む障害が大きくなっていること明確になった。
現在では、海面近くを飛行できる対艦ミサイルの調達や商船に隠れて移動する自爆船。また湾岸戦争時よりさらに探知が難しい機雷。それに近年その静粛性能が飛躍的に向上したディーゼル潜水艦は本当に探知が難しい。イランはこれらの兵器や船艇・潜水艦を保有している。

安易な軍事手段による核問題解決は、アメリカ・イスラエルは高い代償を払う可能性が高いし、ホルムズ海峡が戦闘によりタンカーの運航が出来なくなると日本のみならず、中国や台湾・韓国などの経済に甚大な影響がある事は、小学生でもわかることだ。