阿部ブログ

日々思うこと

スマートグリッドの本質

2010年11月27日 | 日記
2008年9月以降の世界同時不況を受け先進国及び発展途上国も含めた世界各国政府は、積極的に交通、電力、通信、上下水道など社会インフラへの莫大な投資を行っているが、これは単なる景気対策や単純な社会インフラ再構築ではない。地球環境の問題解決も視野に入れ、最新の情報通信技術を全面的に取り入れたインテリジェントな社会インフラを整備することにより、持続可能な低炭素社会への転換を志向する重要な取組みである。その例が米国のグリーンニューディール政策で、特に欧米諸国では、社会インフラの老巧・劣化が進行しており、社会インフラへの投資が早急に必要なこともあり、これを期に社会インフラのリニューアルとスマート化を一気に成し遂げようとしている。

インフラのスマート化とは、情報通信技術(ICT)を使ってリアルタイムで様々な公共サービスの供給と需要を最適化、効率化することを指す。その代表例がスマートグリッドであるが、社会インフラのスマート化は二酸化炭素削減や省エネ化に役立とともに、新たな産業の育成と成長の基盤となるものである。

一方、発展途上にある新興諸国における社会インフラへの投資は、その規模と数、及びその投資額で先進国を遥かに凌駕している。90年代からの経済グローバル化の進展により、急激な経済成長が持たされた新興国では、深刻な電力・食料・水不足、慢性的な交通渋滞、熱帯雨林伐採や産業廃棄物による環境破壊と汚染など様々な社会問題が顕在化しており、その解決のために、中国、インド、ブラジルなど成長著しい国々で、今後も莫大な社会インフラ需要が見込まれている。

今後、新規に社会インフラを構築するこれらの国々では、スマートグリッド的な最先端のICTを全面的に取入れることにより、分散かつリアルタイムで、多様な社会インフラのシステムが相互に接続され、将に「System of Systems」としてインフラ全体が有機的に連携・統合され、これにより交通渋滞を緩和し、衛生的に管理された水や食料が安定的に供給され、再生エネルギーを中心とした電力にアクセスできる持続可能なスマートな社会システムへの転換が実現する可能性がある。すなわちこれら新興国では、ICTにより欧米先進国とは異なる社会発展の形態をとる可能性があるということだ。段階的にではなく、いっきに地球環境に優しく賢い社会システムへの転換が行われうる。

賢い社会システムとは、多様なインフラ・システムがICTにより融合・一体化し、限りある資源・エネルギーからの便益を最適化する社会を言う。