つづき
私は、いくつか、ぶなんに撮影をこなしていた。
そして、あるセットでの出来事。
ふと見ると、セットの横にシャボン玉を発生させる機械が、
やかましいディーゼル音を出していた。
シャボン玉とヌードのロマンティックな写真を撮ってくださいとでも言うのか?
みなさんもやってみればわかるが、シャボン玉の写真
なんてレンズのゴミにしか写らない。
ましてや、女性とシャボン玉両方をきれいに撮るなんぞは
プロでもむずかしいことなのだ。
どうせ事務屋が机の上で考えたのだろう。
現場の人間に聞けば、無理であることはすぐに気がついたろうに。
フィルムメーカーなのにとんだ恥をさらしたものである。
やはり、現場が第一である。
それでもディーゼル音に閉口しながら、私は撮影の準備にとりかかった。
すると、まわりがざわつき始めた。
見ると、モデルの後ろ、つまり我々の真正面におじさんがいるではないか。
おじさんは、自分以外そばにだれもいないから、いい場所
をみつけたという喜びで、にこにこしていた。
しかし、なぜ自分以外だれもいないか、おじさんは本当の理由を知らない。
そう、そこにいると「あなたが写ってしまう」のだよ。
飛び交う怒号のなか、おじさんは係員につまみ出されてしまった。
かわいそうに、おっさん舞い上がってしまったんだね。
みんな並んで、短い時間で必死に撮影してるもんだから、気が立っているんだよ。
その気持ち、わかる~。
撮影会のルールでは、モデルより後ろにいって撮影してはいけないことになっている。
でも、これって教えてもらうことなのかな?
常識的に考えればわかると思うのだがね。
先生の不評をかったシャボン玉発生器は早々に止められ、
哀れ、ただのプラスチックの板だけになったセットで撮影
はつづくのであった。
-- つづく --
*2015年 追記
上記で撮影会のルールについて述べていますけども、休憩時間
には撮影しない、というルールもあります。
やはりモデルもOFFの時間は撮影されたくないようです。
「裸まで撮らせてんのに、なんで?」
と思っている方がいるかもしれませんが、女ってそんなもんです。
裸より、メークを直してる姿を撮られたくないようですよ。