次回公演のキャストが全員決定した。とりあえずめでたい。ホンも出来ているので、あとは粛々と稽古するだけである。しかし、コロナ禍がいまだ収まっていない状況で、本番の日にどうなっているかはわからないので、いろいろ気をつけることはまあ、あるだろう。
そんなわけで、駅まで散歩して電車で帰ってくることにする。(電車と書いたが正確には気動車である)と、これが正解だったのか間違いだったのか・・・。
駅の2階、北口のみどりの窓口前には、ワゴン販売で、地場の野菜やお土産などを売っている。案外高くもないので、たまに心惹かれるものがあったりするのだが・・・ありました。盛岡産タケノコなんと300円。ウルイも入手。で、ちょうど良い時間の山田線に乗り上盛岡を過ぎ、トンネルに入るあたりで、ちょっとした衝撃があった。
何かを轢いたような振動だ。
トンネルの出口あたりで止まり、確認作業になった。しばらく停車。運転士は指令とやりとりをして、オレを含めて数人の乗客は、何が起こったのかよくわからないので、くらいトンネルの前をのぞき込んだり、運転士の方を見たり、乗っていた車掌さんを見たりしている。電車に乗っていて、何かのトラブルで停車し、そのまま待機、という経験は、震災以来である。多分。
オレもとりあえず立ち上がって、轢いたであろう後ろの方を見たりするのだが、何しろトンネルなので何も見えない。暗い。で、若い女性の車掌さんに「何か轢きましたかね?」と聞くと「多分」ということで、とにかくなんか轢いたらしい。
そんなに大きな衝撃でもなかったし、運転士さんもパニックになってたりしないので、人ってことはないと思うが、とはいえあんまり気分の良いものではない。木の枝とかだったら、なんてことないんだけど、生き物はやだなぁ。
10分ほども停車しただろうか? とりあえず発車し山岸駅で車両の点検をするという。車両の点検・・・ここでも全く気づいていない。何のことかって?
帰り際に生協で買い物をする。最近、レシートタイプのポイント券が廃止され、来店ポイントを自分でつけるという方式になっている。最近そのやり方を覚えたので、ポイント機械の前に行くと先客が。年配の女性が、なかなかポイントが付かないみたいで苦労している。ま、あとでいいかなと、スルーしようとしながらふと見ると、その人が機械にかざしているのは、生協のカードではなく、コジカカードだった。
お店違うよ! というか、カード違うよ! 何となく指摘するのも憚られたのだが、首をかしげながら何度もコジカカードをかざしている。自分のカードが違うということに気づかないのだ。手に持って、目の前で機械にかざしているというのに。しかしこれは恐らく認知バイアスがかかっていて、スーパーのカードという共通点があるため、なかなか気づかないのだろう。目に入っているようでいて入っていない。
このことは、スマホを見ているときに気づく。メールを見たりしようとしてスマホを見る。画面を閉じて、しまう。あ、何時だっけ? と思う。また開く。時間を確認する。このとき、メールを見ている視界の端には時計の時刻が表示されている。しかしこれを認知しようとしていないと、見えない。数センチしか離れていないし、目には入っているはずなのに見ていない。こういうことが人間には良くあるのだ。
で、件のコジカカードの人だが、後ろに並び始めちゃったので、思わず教えちゃいました。
「お母さん、それ、コジカカード」
いろいろご批判もあろうが、年配の女性に話しかけるとき、最も無難な呼びかけ方としては「お母さん」じゃないかと思うのだ。
「あらやだ!」と恥ずかしそうにしていたが、まあ、そんなこともあるものである。
帰宅し、大谷翔平の試合を見ると、久しぶりのホームラン! しかも2打席連続で2本目は初の満塁ホームランというおまけまで付いた。
そんなこんなで、さて、来年の原作ものの芝居についてちょっといろいろ下準備をなどと思っていたら電話。「車のエンジンの修理、今日からだったんですけど・・・」
「ああ! 全く忘れていた! 頭の片隅にもなくなっていた! 忘れていることすら忘れていた!」
こういうことが10年くらい前は年に1回だったのが、最近は年に数回起こる。「電車の車両の点検」じゃ、全く海馬は動いてくれなかったようだ。
代車はアクアの新車である。ハイブリッドである。乗り込んでみると、シフトが・・・? えっと、どこにどうすれば? シフトレバーはある、しかし、それが直線状に下に引くタイプでもなければ、マニュアルみたいに上下と左右に動かすタイプでもない。短いシフトがただそこにあるだけである。ん? これどこをどうすればいいかわかんない・・・と雨に濡れた子犬のような目でお店の人を見上げてしまった。すると、気づいた店員さんがドアを開け、説明してくれた。
「横に動かしてから下に引くとドライブ、横に動かしてから上に上げるとバック。で、Pにしたい場合はこのボタンを・・・」そう、パーキングはボタンなのだ。
でまあ、帰宅して停車してからよくよく見ると、シフトレバーの横に矢印の図があって、こう動かすとD、こうやるとR、こうするとBと、書いてあって、Nにするには一度Dに入れてから、というのは速度が表示されるパネルに文字で案内が出る。
うーむ、なかなか難しい。そしてBってなんだ?
とまあ、あたらしいテクノロジーというのは、年寄りを戸惑わせるのだな。そして、人は目に入っていても見えてないことが多いんだな。