これまで何度か平興商店の前を通っていたが、実際寄れるタイミングで、通りかかることはそう多くなかった。とは言っても、何回かそういうタイミングはあり、時間もあるときもあったのだが、どうも怖じ気づいてしまうのだ。
50になるおじさんが怖じ気づくってのもどうかと思うのだが、怖じ気づいちゃうんだからしょうがない。
散歩がてら、前日5月4日に歩いたのと同じようなコースを歩く。
4日は、中1の息子を伴い、公会堂でやってる中川政七商店の岩手博覧会を見に行った。雨の中だったのに、こんなに繁盛してるのか? と驚くほどの盛況。こういう賑わいを芝居にもなんとか持ち込みたい。
その、公会堂からの帰り道も、平興商店のことが頭をよぎらなかったわけでもないが、子連れで角打ちっていうのも、ちょっとアレだなと思い、紺屋町は避けて通った前日。
こどもの日ということで、かみさんは子連れで暗殺教室を見に出かけた。で、俺が散歩で出かけると「まさかの満席で入れなかった」というメール。「そんなこともあるんだ」と驚きながらも、俺は徒歩で内丸あたりを目指す。
わずかにぱらつく雨を気にしながらも傘を持たずに出かけた。最初の目的は、大手先のギャラリーCyg。アートブックターミナルという企画展で、うちの劇団の拓さんが、作品を出しているのだ。
こういうヤツね
https://www.facebook.com/%E3%81%97%E3%81%BF%E3%81%98%E3%81%BF%E7%94%BB%E5%BB%8A-954191291281827/?fref=ts
あとで聞いてみたら、広野君も出していたという。うっかり見逃した。一通り見て、ゼミナール斎藤君の台本まで出ているのも横目で見ながら、内丸園地の屋台を見る。昨日はここで、息子に黒糖タピオカ入りマンゴーミルクを買った。今日は店が多少入れ替わっている。
すでに完売のところとかもあり、驚く繁盛ぶりだ。
それから行列の白龍の前を通り過ぎ、肴町あたりを目指す。雨が多少気になってきて、屋根のあるところに行きたかったのだ。
肴町アーケードは子どもの日イベントをやっていて、ここもそれなりに賑わっていた。
お隣の一家に出会ったり、東家の社長が疲れ切ってるところに話しかけたりしながら、じわじわと紺屋町の方に近づいていった。
最初からそれを目的にしてたわけではないが、身軽であとの予定もない日である。思い切って昭和レトロの引き戸を開けた。
NHK杯体操選手権のテレビの音が響く店内。手前の方にテーブルと丸いすがいくつか並んでいて、冷蔵ケースがあり、その奥にも席があるようだ。
ちょっと見たことないものを飲んでみたいので、冷蔵ケースをじっくりのぞき込む。
菊の司平井六右衛門そのまんま、とかすみにごり(だったかな?)が気になる。
しばらく考え込んでから、かすみにごり(だったような気がする)を選択。
「席はどこが良いですか? 奥もありますし、テレビの見られるところもあります」とおばちゃんが優しく教えてくれる。このあたりで、だいぶ緊張がほぐれてくる。
「んじゃ、テレビのあるところで」
NHK杯体操選手権がちょっと気になっていたのだ。
斜め向かいには、常連さんと思しき、白髪にキャップをかぶった柔和な表情の紳士。三角フラスコを前に、ちびちびと飲っている。
(三角フラスコ?)
聞いてみようと思ったが、なんとなく店内を見回しているうちに、燗酒の大きいのが三角フラスコだということがわかった。
一升瓶からかすかににごった酒が、コップになみなみと注がれる。最初は口から迎えに行く。菊の司らしいしっかりした味わい。そこに濁りが相まって、飲み応えがいや増している。
次第に酔いが回るほどに、はす向かいのおじさんとの話もちょこちょこと。趣味が山菜採りであるとか、茨城にちょっと縁があるとか、そんな話。
2杯目に亀の尾を頼む頃には、一つ席を空けたところに、どうも地元の人じゃないっぽい人がやってきたり、さらに隣の席に、女性二人組がやってきたりと、昼間からそれなりに賑わっている。
2杯目を飲み干す頃には、さらに常連の親父が勢いよくやってきて、高校野球を見てきた話などをまくしたてる。二言三言言葉を交わして、そろそろと席を立った。
表に出るとまだ明るい。
千鳥足になるほどでもないが、全くしらふってほどでもない酔い心地でふらふらと帰宅の途についた。そのうちまた寄ろう。今度はイワシの蒲焼きの缶詰でもつまみにしよう。