今年の春頃、青森の渡辺源四郎商店(劇団である)から、「北のまほろば祭り2」に出演してくれないかというお話が来た。10月に劇団の本公演があるので、12月くらいだったら行けるかなと思い、そんな返事をした。
30分くらいの芝居をやってくれると良いらしい。ちなみに、そんな作品は、なくはないが、それなりに手間がかかる。というか、何人か出演することになる。ギャラもそれほど出るわけではないので、人数はできる限り絞りたい。となると、オレが自分で出て、30分持たせられるような、そういう演目の方が良い。
そんなオレには、1つやってみたいことがあった。
ことは、2021年に遡る。さらに遡ること3年、映画「ボヘミアン・ラプソディ」を見た後、にわかに歌番組でも島津亜矢が歌ったり、氷川きよしが日本語訳で歌ったりしていた。でまあ、英語で歌うのも大変だなぁと思っていたのだが、日本語訳はより大変そうだなぁと思っていたのである。
日本語の歌は基本的に1文字1音で作られていて、英語の翻訳は、大体字余りになる。音は5つしかないのに、文字数は10になってしまう、みたいなことが良くあるのだ。また、英語の歌は、韻を踏んでいることも多く、普通に訳すと、韻は大体消滅してしまう。特に、フレーズの最後で伸ばす音の母音が違っていると、なんか変な感じがしてしまう。
そこらへんの事情を上手く翻訳して日本語の歌詞を作ったのが「アナと雪の女王」の主題歌である。「Let it go,Let it go 」を「ありのー、ままのー」と訳し、伸ばす音の母音を合わせ、前後で意味を取る仕組みになっている。
このあたりをお手本として、横目で「デイドリームビリーバー」のタイマーズ版や、「アローンアゲイン」の有頂天版を見ながら「ボヘミアン・ラプソディ」のオリジナル訳を誰に頼まれることもなく始めたのである。
まあなんというか「ボヘミアン・ラプソディ」を気持ちよく日本語で歌ったみたかったわけですね。それが2021年のこと。この年は息子が受験なので、寝室を勉強部屋として明け渡し、夜な夜な翻訳作業にいそしんでいたのである。
英語が得意なわけでもないので、英語と和訳を見比べ、英語の母音を拾い上げて、意味と韻を両方取れることを理想としながら、意訳をしていく。韻も意味も完全に合わせることは難しすぎるので、ある程度諦めるところもあり、大胆に変えるところもあり、まあ、そこらへんはやりたいようにやって、ちょっとウケを狙ったりというところもあり、そんな感じで訳していった。
そんな作業がハタと止まったところがあった。それが「Beelzebub」である。これ日本語に訳せば「蝿の王」ということになり、文字数は1つ余るが、最後の母音は合っている。だが、何となくしっくり来なかった。そこで3年停滞した。
「北のまほろば祭り2」のオファーが来て、すぐにやったのは、コーラスを含めた伴奏を作ってくれる音響スタッフをお願いすることだった。運良く水井米くんが引き受けてくれたのだが、あとで、ちょー七面倒くさい作業に苦労することになったのは、まあ、そんなこともあるだろうなと。
とまあここも長くなったので、続きはしばらく後に。
多分2週間前にキャストを交代するという事態は、初めてのことだったと思う。諸般の事情により、架空の劇団第27回公演「白い象のあぽかりぷす」に急遽出演するということになった。
ここに至る過程は、いろいろと問題もあるので詳細は控えるが、久しぶりに心身に負担のかかる決断だった。そして、実際出演するもんだから、そこらへんの負担も久しぶりだった。
まあ、負担と言ってるけど、それ相応の楽しみというか、リターンもあるわけで……。思ったよりもセリフが入っていたのが救い。さすがに2週間前に、ラップもアリの振付もアリの出番もかなりアリの、という役を誰かにお願いするのも忍びない。
というわけで、自劇団の本公演に出演する事態は、かなり久しぶりとなった。もっと早いうちに決断しとけば良かったとも思ったが、それはそれ、なんとかなるのではないか、出来るのではないか、といった希望的観測を信じたかったのである。
何の役かというと「キノコ」である。ラップも振付もセリフもあるキノコである。しかも、途中から歩き始めるという荒唐無稽である。地上を覆い尽くすキノコネットワークが、砂漠や海、果ては月にまでそのネットワークを広げようとするのである。
こうやって書いているとまったくもってなんだかよくわからないが、芝居を見ると、多分何となく、なんかわかったような気になってくれるだろう、という期待はある。
1ステ目、2カ所ほどセリフが飛んだ。じっとりとした間が出来てしまう。なんとか周りの役者の協力を得て、力業でクリアしたが、反省することしきり。しかしながら、まずまず観客の反応も良く、笑いを取るべきところでは取れていたので良しとしよう。2ステ目以降は、セリフは飛んだモノの、じっとりした間が出来ることはなく、コロコロと芝居は流れた。
やはり本番とお客さんの力は偉大である。個人的に「本番1回は、稽古10回分」くらいの密度があると思っていて、本番は重ねるごとにその出来は向上していくモノだと思う。これが10回、20回と本番を重ねていくと、飽きてくるとか、自己模倣に陥りがちになることもあるだろうか?
そんなことを考えながら、なんとか本番を終えたが、実は次が控えているのである。青森の渡辺源四郎商店(劇団である)からのお誘いで「北のまほろば祭り2」に出演が決まっている。12月の7、8の2日間、30分くらいの独芝居的なものをやる予定なのである。
その内容はどんなものかというと……長くなりそうなので次に続く。
10月2日にゆぴあすに行った。ここに行く目的はサ活である。
https://blog.goo.ne.jp/abusann/s/%E3%82%B5%E6%B4%BB
まず最初に身体を流し、露天に身体を沈める。今年の夏は長かった。しかし、さすがに10月である。日中に半袖になることはあっても、もはや夏ではなかろうと思っていたが、そうでもなかった。
時刻は4時くらい。夕方の風情は漂っているが、まだ暗くなるほどではない。目の前は森ってほどでもないが、木々がそれなりに生えていて、当然のように自然豊かである。まずはゆったりと身体を温めていると。
「カナカナカナカナ」
ん? ヒグラシ? え? 10月だよ?
「カナカナカナカナカナ」
間違いない! ヒグラシである。10月2日にヒグラシかぁ・・・衝撃だった。
八日目の蝉どころではない。10月のヒグラシである。もはやお相手はいないかも知れないのに、夏の夕方風情の鳴き声が響き渡っている。
こりゃ驚いたね。と、ひとしきり驚いたところで、ちょっと柔軟体操をしてみる。
ここの露天はわりと空いていて、迷惑がかかる人はいない。そんなわけで温まった身体でゆっくりと身体をほぐす。足を前後に開いて前の足を曲げ、ふかく腰を落とし、腸腰筋あたりを伸ばす。
そして、開脚をしてゆっくりと角度を広くしていく。
そのときだった。
浴槽脇の椅子で涼んでいたおじさんがオレに声をかけた。
「スゴいですね、足、開きますね」
急なことだったので、オレもアタフタしそうだったが、風呂の中ではリラックスしてるので、落ち着いて答えた。
「いやあ、温まると柔らかくなるんですよ」
オレにはヒグラシが衝撃だったが、そのおじさんにとってはオレの開脚が衝撃だったのだろうか? 思わず話しかけずにはいられないような。そういやオレもこの間、カモシカ見て女子中学生に声をかけたのだった。