延暦寺一山・求法寺の(滋賀県大津市坂本)の武覚超御住職が来る8月21日から25日までの5日間にわたって、戸津説法師(とづせっぽうし)を務められることになり、去る6月4日の宗祖伝教大師様の御命日に、比叡山宗祖御廟・浄土院において長講会(ぢょうごうえ)の法要の後に、大樹孝啓天台座主様から指名を受けられました。
戸津説法というのは、天台宗としてもっとも大事な行事の一つです。毎年8月21日から25日までの期間にわたって、比叡山の山麓で琵琶湖畔の東南寺で行われる法華経についての説法です。天台座主への登竜門ともいわれています。
最初の頃は、東南寺ばかりではなく、生源寺(坂本)、観副寺(下坂本)の三カ所で10日間ずつ30日間実施されていましたが、織田信長の比叡山焼き討ち以降は東南寺のみの30日間、江戸時代になってからは10日間、そして明治からは5日間となりました。
伝教大師様がご両親の供養のために民衆にやさしく法華経を説いた故事にちなむもので、寺のある場所が「戸津ヶ浜」と呼ばれていたことから、そう名付けられたのでした。
東南寺に関しては、大津市が設置した看板には「延暦年間に伝教大師が創立した寺で、比叡山の東南、戸津ケ浜にあったので東南寺という。寛永15年、高島郡今津にあった一堂を当地に移したので一名を今津堂ともいう」と記されています。
私は叡山学院で武覚超御住職から直に教えを受けていますが、会津天王寺の檀家や信徒の一行が平成22年9月、日本海側経由で延暦寺を訪れた際には、当時執行であった武覚超御住職に比叡山会館で「伝教大師と徳一」という題で講演していただいたことがあります。
大樹孝啓天台座主から指名受けた武覚超御住職は、去る6月5日付の読売新聞滋賀版に掲載された記事の中で「平和や人々の心の安寧のため、伝教大師が法華経を説かれたのが始まり。1200年以上、厳粛に行われているのは尊く、歴史の一端を担えるのは身に余る光栄で、この教えを未来に伝えたい」と述べておられます。
武覚超御住職は昭和23年大津市生まれ。大谷大学大学院仏教学専攻博士課程修了。日中友好天台宗協会顧問などを歴任。現在は叡山学院名誉教授、釈迦堂輪番、比叡山長臈、延暦寺学問所所長。
合掌
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