『ときめく小鳥図鑑』 中村 文〔文〕 吉野俊幸〔写真〕 樋口広芳〔監修〕(山と渓谷社)
最近やたらと、野鳥やバードウォッチングの本を渉猟している。なぜかといえば、身近に野鳥がたくさんいることに気づいてしまったから。今までなんで気づかなかったのだろうというくらい野鳥がいる。もしかして私の住んでいるこの一帯は野鳥の宝庫なのだろうか。
それまでは、たまにスズメがいるなとか、ウグイスだと思い込んでいる人が多いメジロがいるなとか、ヒヨドリがいるなとか、限られた知っている鳥には目がいっていたのだが、それ以外はさっぱり名前もわからないし、声もわからずで自ら避けていたのかもしれない。そんなある日、森鴎外の『椋鳥通信』で名前だけは知っていた、ムクドリが周りにたくさんいることに気づいた。あれこれとネットで調べて、その鳥がムクドリだとわかり、興味が一気に広がったのだ。
そしてこの本。実際に出合ってみたいなという、かわいらしい小鳥たちが満載されている。まずカバー写真は愛らしい姿をしているエナガ。おそらく編集担当者と文章を書いている中村さんがかわいいといって選んだに違いない。この小鳥の紹介文の冒頭には、「たとえるなら、ふわふわの毛糸玉」とある。たしかに、まんまるな生き物。えてして丸いものはかわいらしく見えるものだ。
この本がいいのは、とにかく身近にいる小鳥たちがオンパレードなことだ。高尾山で見られるヤマガラも登場している。誰かが餌付けしたことで、登山者に寄ってくることで有名になったあの鳥だ。黒のネクタイがトレードマークのシジュウカラや、鍋かむりのニックネームのあるコガラなどシジュウカラ科の野鳥はなぜか親近感を覚える。山でたまにみかける小さなミソサザイ、木曽駒でひたすら鳴いて、飛び回っていたイワヒバリも出ている。イワヒバリの写真を見ると、草原地帯でピーチク、パーチクやっているヒバリと、あまりに姿・形が違うので驚かされる。同じスズメ目に分類されているのに、これほど異なるとは。頭でっかちのモズにも注目したい。しかしこの本によると、頭でっかちなのはオスだけだと書かれていて、メスは頭でっかちではない。すっきりとした姿のメスの写真も掲載されている。モズに限らず、オスとメスで種類が違うんじゃないかというくらい、見かけが異なるものが結構いるようだ。
カラフルな小鳥たちには、ぜひ出合ってみたい。ルリビタキ、カワラヒワ、ベニマシコ、オオルリなど。セキレイといえば、尾羽を上下にピクピクさせる白と黒のハクセキレイが身近だけれども、胸から腹にかけて黄色いキセキレイという鳥もいる。
見て楽しい本、でもやはり自然の中で実物を見てみたいものだ。
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