『天災から日本史を読み直す――先人に学ぶ防災』磯田道史(中公新書)
10月の末に訪れた甲州高尾山・棚横手山の台風被害がすさまじかったので、前々から気になっていた『天災から日本史を読み直す』を手にとってしまった。歴史学者の磯田先生が古文書をひもといて、天災の歴史を振り返り、先人から防災の知恵を授かろうというものだ。
この本では、地震、津波、噴火、台風、土砂崩れといった天災がとり上げられているが、そのなかから台風が引き起こす高潮について紹介しよう。高潮というのは、理解していたようでいて、じつは正確にはよく理解していなかった。ちなみにWikipediaでは、こんな説明が出てくる。
高潮(たかしお)は、台風や発達した低気圧が海岸部を通過する際に生じる海面の高まりを言う。地震によって発生する津波とは異なる。
やっぱりよくわからない。でも、磯田先生の説明は明快だった。
低気圧は海を吸い上げて潮位を上昇させる。気圧が1ヘクトパスカル下がると、海面は1センチ吸い上げられる。また、台風の疾風は海水を吹き寄せて海面を上げる。風速の2乗に比例して海がせり上がる。
数字で説明されると、イメージできるから不思議だ。2013年にフィリピンに上陸したスーパー台風(台風30号)の中心部は、895ヘクトパスカル(1気圧は1013ヘクトパスカル)だったというから、それだけで海面を118センチも上昇させるわけだ。さらにそこに通常の台風の2.17倍の力の暴風が吹き荒れたとされているので、2.17×2.17≒4.7倍の海面を上昇させる力が働いたことになる。
巨大台風がこれから毎年のように日本列島にやってくるとすれば、いままでは比較的看過されていた高潮にも注意をしていく必要があるといえるのだ。
磯田先生ありがとう。
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