だいぶ前に番組告知があって、いつやるんだろうと思っていたら、いつの間にか放送していて見逃していた番組、NHK BSプレミアム「小野田さんと、雪男を探した男~鈴木紀夫の冒険と死~」。再放送するのをたまたま見つけて録画した。どんなとり上げ方をしたのだろうかと興味津々でみた。
再現ドラマと関係者へのインタビューで綴られた番組で、小野田元少尉がフィリピン・ルバング島から帰国した70年代の時代状況、時代の空気を表現することに腐心するとともに、家族や友人を出演させることで、鈴木紀夫という男の人柄や生き様を浮き彫りにしていた。誰からも愛され、また家族を愛し大切にしたナイスガイぶりと、夢見る少年がそのまま大人になったような型破りぶりがよく描かれていたと思う。
再現ドラマでは、大河ドラマ「西郷どん」で島津久光役をこなす青木崇高さんが鈴木紀夫役を好演していた。小野田さん役は、映画監督でもある塚本晋也さん。もうちょっと強面で精悍な顔立ちの役者でもよかったのではと思ったが、どうだろう。
この番組制作のきっかけは、おそらく角幡唯介氏の『雪男は向こうからやってきた』だろう。番組制作者同様(たぶん)私も小野田さんの帰国はリアルタイム(小学生だった)で見ていたけれども、当時24歳だった鈴木紀夫さんの存在はまったく記憶になかった。この本に登場していて、初めてその存在を知ったのだ。
番組は2部構成で、「小野田さん編」と「雪男編」になっていたが、じつは彼の2つの行動に通底するのは、小野田さんに会う前、大学生の身分をなげうって敢行した3年9ヵ月にも及ぶ世界放浪の旅のあり方にあるのではと思った。番組では、小野田さん探しのときと、雪男探しのときをオーバーラップさせていたけれども、そんなにシンプルなのか。3部構成にしてこそ、鈴木さんの生き方が見えてくるというものだ。
鈴木さんの世界放浪の旅は、いまの時代では考えられないやりかたをしていた。とりあえず有り金すべてをもって香港へ旅立っている。十分な旅費を所持していないから、滞在国で働いて稼いだり、血を売ってその場をしのいだりしている。移動はヒッチハイク。当然ながら危ない目に何度も遭遇している。そんなバイタリティあふれ、楽天的な彼だからこそ、小野田さんを探したり、雪男を探したりという破天荒な生き方につながったのではないか。
この21世紀にこんな人ははたしているのだろうか。いるのなら、ぜひとも会ってみたいものだ。
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