エゾリス イメージ画像(OldiefanによるPixabayからの画像)
動物カメラマンの仕事はきつそうだ。私も登山中に動物の写真を撮れないかなどど思うけれども、そもそも動物に遭遇するチャンスが少ない。比較的よく遭遇するシカであっても、10回の登山で1回あるかどうかではないか。それを考えると、動物の採餌シーンや、鳥の飛翔シーンをピンをばっちりと合わせてとらえることは至難の業であることは容易にわかる。
そんな動物カメラマンの撮影現場に2週間密着したのが、TBS系列『情熱大陸』(2月21日放映)だった。ようやく録画したものを先週見ることができた。
番組が取り上げていた上田大作さんは43歳。最初からカメラマンを目指したわけではなく、サラリーマンからの転身だ。自然に魅せられ、山口から北海道に移り住んで14年。年間250日はワゴン車の中で寝泊まりを繰り返し、動物の決定的瞬間を求めて移動するというから、そのつわものぶりがわかる。その間だれとも話さないことが多く、日本語を忘れるともいう。
番組内で印象的だったのは、上田さんが知床でエゾリスがクルミを割っている音がするといって立ち止まったシーン。そのときナレーションが入る。スタッフは皆耳をそばだてたが、だれもその音は聞こえなかった。音が止んだといって、視線をあちこちに飛ばす上田さん。肉食動物が獲物を狙うような鋭い目だ。やがてすばしこく木の幹を駆け上がるエゾリスを見つける。そしてマツぼっくりのようなものをかじるエゾリスを特大の望遠レンズをつけたカメラでとらえる。見事な撮影だった。
風蓮湖に行くと、移住当初に世話になった漁師がいて、自然と漁を手伝おうと体が動く。その漁師の家に招かれて、サクラマスの燻製をふるまわれて会話がはずむと、傍らにいた漁師の奥さんが彼はここらでは「まぐろちゃん」と呼ばれてるのよという。なぜかって、止まったら死んじゃうから。
番組の締めでは、それを証明するかのように、根室でハクトウワシを追う上田さんを映し出していた。オオワシの群れのなかに1羽だけ頭が白いワシが紛れ込んでいた。まさしくハクトウワシだ。ハクトウワシはアメリカのシンボルのような猛禽類で、本来日本には生息していない。そのワシを見たという目撃情報を得て、現場にかけつけ、ようやく見つけたのだ。彼の活動はとどまることを知らない。明日も次の撮影現場へ、明後日もまたその次の撮影現場へと移動していくのだろう。