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山の神にお供して歩きつづける、ある山のぼら~の記録。ネイチャー、冒険の本もとりあげるよ。

登山家谷口けいのカッコいい生き方『太陽のかけら』

2020-12-20 | 山・ネイチャー・冒険・探検の本


『太陽のかけら――ピオレドール・クライマー谷口けいの青春の輝き』大石明弘(山と渓谷社)

名前だけは知っていたが、こんな元気印の登山家だったのかとこの本を読んではじめて知った。しかしもう、谷口けいさんはこの世にはいない。ニュースで覚えている人も多いと思うが、2015年12月21日大雪山系黒岳山頂付近からトイレに行ってくるといってそのまま岩壁から滑落して命を落としている。

この本では、彼女の学校時代の友人、知人、その後の活動でのパートナーなどに取材することで、人物像を浮き彫りにしていく。著者自身が谷口けいさんの山友だちである。

谷口さんは家にいる息苦しさから、高校時代にまずアメリカへの留学を試みる。自らの前に敷かれていたレールを拒んだのだろう。そして彼女はアメリカの地で自分の生き方のベースを見出したのだと思われる。とにかくポジティブに考え、やりたいことをあきらめずにやる。その後大学へ進学するのだが、普通では考えられない方法を彼女はとる。家を出て自活をしながら受験勉強をし、学費まで稼ぐ。決して家が貧しいわけではなく、それが“けい”流なのだ。

学生時代にはチャリンコのサークルに入り、日本全国を自転車で走るようになり、果てはモロッコ自転車ツーリングを単独で敢行。仲間に刺激を与え、今度は仲間からニュージーランドに誘われて南島を自転車ツーリングする。自転車で自然のなかを走り自然に親しんだ、この経験がその後の彼女の活動の原点になるのだろう。やがて活動は趣味の域を超えていく。

山岳会に入ると、アラスカのデナリ登頂を皮切りに、高所へ、岩壁へとエスカレートしていく。さらには女性だけのチームで海外のアドベンチャーレースにも参加するなど、活動はアクセル全開。野口健のエベレスト清掃登山にも参加し人脈も広がり、知名度もあがっていく。そんななかで先鋭的なクライマー平出和也さんと出会う。

カラコルムの山で登攀パートナーとなってからは、シブリン、カメット、ナムナニ、シスパーレ等に遠征し注目される。とくに2008年未踏のカメット(7756m)に南東壁からピークハントすると、その功績が認められ、なんと女性初のピオレドール賞を平出さんとともに受賞することになる。本人は「女性初」という冠が気に入らなかったらしいが、快挙である。

彼女の原動力はなにか。この本から見えてくるのは、大きな好奇心と、やらなければならないという使命感か。遂行するために究極のポジティブ・シンキングをし、自らに厳しい試練を課して、へこたれない精神力で乗り越える。それを可能にしているのがネアカの性格なのだろう。

一度お会いしてみたかったが、もうそれは果たせない。

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