目指せ! 標高1122メートル

山の神にお供して歩きつづける、ある山のぼら~の記録。ネイチャー、冒険の本もとりあげるよ。

進化するサバイバル術『ツンドラ・サバイバル』

2016-01-02 | 山・ネイチャー・冒険・探検の本

 『ツンドラ・サバイバル』 服部文祥(みすず書房)

この本のタイトルを見た瞬間に、NHK BSの番組を思い浮かべた。タイトルを忘れていたが、いま検索してみたら、2014年1月放送の「地球アドベンチャー 冒険者たち 北極圏サバイバル ツンドラの果ての湖へ ~登山家 服部文祥~」だった。服部氏のサバイバル登山の流儀で、ロシアのツンドラ地帯を狩猟しながらエル・ギギトギン湖へ向かい、そこで幻の岩魚を釣るという内容だ。番組自体は、NHKということもあり、淡々と事実を連ねているだけでエキサイティングな場面は少なかった印象があるのだが、本であれば、書きたいことはすべて書ける(?)はず。番組の裏話などもたくさん出ているのだろうと、期待して読んでみると、果たしてその通りだった。番組中、際立って目立っていた猟師にして漁師、カリブー狩りの名手ミーシャとは、本当に偶然出会ったと書かれているし、ロシア人スタッフとやりあう、日本人スタッフたちの百戦錬磨ぶり、ギギトギン湖からの帰還がうまくいかず、食糧が尽きてあわや遭難かというところまで追いつけられたエピソードなど、テレビでは窺い知れない隠された事実が次々に暴露されていて面白すぎた。

さらにこの本には大きなおまけがついている。タイトルからは、ツンドラのことしか書かれていないように受け取れるが、実際はそうではない。2部構成になっていて、第1部に日本編が入っている。服部氏が日本でどんなサバイバル登山を重ねていたのかがよくわかる。彼がしばらく冬のサバイバル登山を控えていたのは、冬場の寒さを思うと億劫になったという率直な記述があって、たしかに行きたくなくなるだろうなと、頷いてしまった。家でぬくぬくしていたほうが、当然ながら快適なのだから。登場してくる各山域では、狩猟のシーンが綿密に描写されていて、射撃の腕は経験を積むごとに格段にアップしていることがわかる。何事も経験とそれを踏まえての研究、工夫で上達するものなのだ。そして獲物を仕留めるごとに、自分が食べるために、生き物の生命を奪う行為の重さを感じていることもヒシヒシと伝わってくる。親子鹿のエピソードは、身にしみた。

日本編でとくに興味を引いたのは、「情熱大陸」の裏話で、撮影者(随行者)として平出和也さん(最近はミャンマーのカカポラジに行っている)が選ばれることだ。サバイバル登山に同行して狩猟の邪魔にならず、しかも撮影が可能な人は、平出さんしか思い浮かばないと服部氏は彼を指名するのだ。道なき道をそこそこのペースで歩け、写真だけでなく、動画も撮れる人となると、そうそう人材はいないだろう。また、本書で採り上げられていたコースとして、面白そうだなと思ったのは、以下2つだ。同じコースをたどるのはムリとしても、一部コースを真似てたどることはできるだろう。

【知床半島秋期サバイバル継続遡下降】
糠真布川~海別岳~熊追川~シュンクンベツ川~斜里岳

【四国、剣山山系、冬季サバイバル登山】
山河内~鰻轟山~湯桶丸~甚吉森~四ッ足峠~三嶺

こんな山の登り方もあるのかと興味本位だけから読んでも、十分楽しめる本。みなさんもどうぞ。

 

参考:
サバイバル~服部文祥の世界 http://blog.goo.ne.jp/aim1122/e/3584f7a1a2c26f1c7ce4530134acf60a
狩猟をしながら探検行『アグルーカの行方』 http://blog.goo.ne.jp/aim1122/e/02f5e833d349dffdc8050e9ebf61bd59

ツンドラ・サバイバル
服部 文祥
みすず書房

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 外国人観光客人気No.1の稲荷山 | トップ | 2015年年末裏磐梯のスキー場事情 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

山・ネイチャー・冒険・探検の本」カテゴリの最新記事