はざまの庵

分類し難い存在を愛でる覚え書き by aiwendil お気軽にコメントをどうぞ。

東京遠征10/19。

2006-10-21 08:29:10 | アートなど
10月19日は、野暮用のついでに東京で展示会1つとトークイベント1つを観て参りました。

まずは、日本橋のDIC COLOUR SQUAREで開催中の「COLOUR OF 10」。
10人のクリエイターたちによる、「色」をテーマにした作品の展示会です。
佐藤雅彦氏とその門下である気鋭の集団ユーフラテスの手がけた作品があるというので足を運びました。
行ってみれば、非常にユニークな作品ばかり。
まず、ユーフラテスの「midnight animation」は、暗闇の中でじつに驚くべき手法を呈示した作品。科学的であると同時に独特のユーモアも感じさせてくれます。実利的なはずの『休憩』には何故か思わず笑ってしまいました。色と光と知覚の関係性に深い考察をめぐらせたくなること請け合い。佐藤氏の流れを汲む表現は、毎度ながら『なんて素敵なんだろう』と思わせてくれます。科学の素養を持つ方や、オラファー・エリアソンに感激した方、そして何よりものごとの純粋な面白さを愛する方にとっては特におすすめです。(一つだけ不安な点は、第1第2色盲の方々への物理的問題。ひょっとすると作品を体験できない方もいらっしゃるかもしれません。)
他にも、永山裕子氏の「The tale of right」が非常に面白い。偏光レンズを利用した、これも驚くべき視覚効果をもたらす作品。我々が普段目にする色が反射光なのに対し、呈示されるのは透過光で構成された色。「色」とは何かを、驚きと楽しみをもって考えさせてくれる作品だと思います。
衝撃的だったのは、寄藤文平氏の「Color violence」。文字通り、暴力的なまでの色の力を見せつけてくれる作品です。衝撃的すぎて思わず笑いが込み上げました。
森本千絵氏の「イロニンゲン プロジェクト」も面白そうだったのに、時間がなくてじっくり見られず、残念。
会期は11月7日まで。ぜひもう一度訪れてみたい展示会だと思いました。

さて、次に訪れたのはギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)で開催中の「勝手に広告」展のギャラリートーク。
『"表象"はどのように現実世界に定着するのか。 -「勝手に広告」を例として』と題し、写真家のホンマタカシ氏を迎えて、クリエイターの中村至男氏と佐藤雅彦氏が「勝手に広告」プロジェクトの構築過程と、その表現を支える技法について語った鼎談です。
冒頭では、地下展示室からの『中継』で作品を解説するというサプライズ。ホンマタカシ氏の撮影するカメラで中村氏と佐藤氏が作品を紹介しながら、ときに実演。思わぬプレゼン形式に会場からは随時笑いが。出演者たちが目の前にいないにもかかわらず、会場はどっと暖まりました。
ついさっきまで自分がいた現場を、モニタを通したライブ映像で見るのはとても不思議な気分でした。トーク会場はgggの5階なので、物理的にはほんの数階離れただけの距離なのに、空間だけでなく時間的にも隔絶されているかのような感覚をおぼえました。人間の認識する現実感について少し考えさせられる体験でした。
地下での解説を終えると講師3人がエレベーターから登場。その後、スライドショーを使用しつつ、佐藤氏のナビゲーションによって主に中村氏がコンセプトと技法について詳細を話し、ときたまホンマタカシ氏にコメントを求める、という形式でトークが進みました。
話の内容も示唆に富んで興味深かったのですが、何より印象的だったのは、あの3人の取り合わせ。面白い。面白すぎます。中村至男氏は作品から受ける印象そのままのきちっとした几帳面な雰囲気。対してホンマタカシ氏は、写真作品からは繊細で神経質な印象を受けますが、ご本人は自身も『僕は大雑把です』と言うほど非常におおらかで大胆なアーティストっぷり。中村氏がひとつひとつ丁寧に言葉を選んで話せば、ホンマタカシ氏が思いもよらないコメントを放つ、佐藤氏はそんな対照的なお二人をニコニコしながら眺めている、といった、とてもほんわかした鼎談でした。
私が受けた印象では、佐藤氏はホンマタカシ氏のパーソナリティが大好きなんではないかと感じました。『中村さんは几帳面なんですが、ホンマさんはこのとおりなので、2人が同じスタジオで一緒にいるととても面白いんです』と言ってみたり、トーク中はいつも平然としているあの佐藤氏が思い出し笑いで言葉を詰まらせて『ごめんなさい』とつぶやいてみたり。三者三様の個性と相互作用が本当に面白くて興味深いです。
どこまでをどちらが考えたのかを忘れて仕事の分担境界がわからなくなるほど緊密な感性と世界観を共有する佐藤氏と中村氏。その世界へホンマタカシ氏が撮影者として加わることで、一連の作品がより豊かになったであろうことがうかがえました。
他にも中村氏の『説明になってはいけない、少し足りなくて、最後の1本の線を見る人が頭の中で引くくらいがちょうどいい』という趣旨の言葉、そして版の大きさによってVittelのフタの線の数を変えているという話、ホンマタカシ氏が鉛筆の森の撮影について話した『僕の中でこういう世界に見えていたからこういう写真が撮れた』という趣旨の言葉、そしてグリコシティを怖いと評した(『だって至る所にあの子(ビスコの子ども)の顔があるんですよ。監視されてる気分になるじゃないですか』と大真面目で発言)り、Vittelのダムと水道契約できたらいいのにと語るホンマ氏の感性が印象的でした。
総じて、確固たる個性は大きな力になること、そして、でき上がった作品を見るのも面白いけれど作成されてゆく過程を知るのはもっと面白いこと、それらを実感したギャラリートークでした。
そのうち簡単な覚え書きを書く予定ですので、興味のある方はいましばらくお待ちください。

ところで、ホンマタカシ氏は阿部サダヲ氏にちょっと似ているような気がするのは私だけでしょうか(笑)。
気になります。


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2 コメント

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「COLOUR OF 10」 (あきあかね)
2006-10-21 09:21:38
「COLOUR OF 10」
先日、仕事帰りに見てまいりました。
ウォーキングのコースなので、面白そうな時には必ず寄ります『DIC COLOUR SQUARE』
中央通りに面していて入りやすいですし(笑)
今回は佐藤雅彦さんのお名前に惹かれて…。ユーフラテスのお名前は???と思っていましたが、こちらで謎が解けましたm(__)m

暗闇で一定のリズムで動く(ホントは動いていないのですが)赤と緑のライン!
これがなんとも愛らしい!
発想にびっくりさせられます。
他の方の作品も、もう一度ゆっくり見てきたいと思います。
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>あきあかねさま (aiwendil)
2006-10-22 15:13:43
>あきあかねさま
おおっ、いつの間に(笑)!
面白いモノアンテナ、さすがですね。
ユーフラテスは、慶応大学SFCにおける佐藤研卒業生有志から成るクリエイティブ・グループなのだそうですよ。
今回の作品でも、『あっ、この絵は山本さんかな?』とか『これは佐藤匡さんっぽいなあ』とか、そこはかとなく個性が感じられて面白かったです。

受付の方に聞いてみたところ、普段は土日祝日休業のところを、この会期中は無休で展示開催するそうです。
人気投票もあって、トップ作品は商品化されるとのこと。
ひとり何回でも投票できるそうですよ(笑)。
気に入った作品同士で悩むことがなく、嬉しい配慮ですね。
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