赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

Ⅱ.「脱炭素」でトクをするのは誰か――政治に食い込む環境問題の欺瞞②

2023-12-02 00:00:00 | 政治見解



Ⅱ.「脱炭素」でトクをするのは誰か
――政治に食い込む環境問題の欺瞞②
:231202情報

昨日からの続きです。脱炭素政策の先に待ち受けている未来とは何か、脱炭素でトクをするのは誰か、キャノングローバル戦略研究所研究主幹の杉山大志氏の解説を、許可を得て掲載しています。


果ては「超限戦」の主力兵器に

中国の2060年CO2ゼロ宣言には、更に3つのメリットがある。

第1に、中国が協力することで、自由諸国はますます引っ込みが付かなくなり、経済が衰える。彼我、同じ様な目標でも、経済への破壊力は全く異なる。というのは、環境問題で力を振るう国際環境NGOは、資本主義を嫌い、自由諸国の企業や政府には強烈な圧力をかける一方で、中国政府を礼賛し、中国企業は標的にしないからだ。中国にとってこれほど便利な存在はない。

第2に、中国は温暖化を議題に持出すことで、米国内の保守とリベラルの分断を一層深刻に出来る。米国では温暖化は党派問題である。民主党は急進的な政策を支持するが、 共和党は反対する。トランプだけが例外なのではない。

中国にとってCO2ゼロというポ ジション取りは、国際的な圧力を逸らすのみならず、自由諸国を弱体化させ、分断を深める効果があるのだ。世論を活用して戦略的優位に立つという「超限戦」において、今や温暖化は主力兵器となつた。

第3に、太陽光発電、風力発電、電気自動車は何れも、中国が世界最大級の産業を有している。自由諸国 巨額の投資をするとなると、中国 は大いに潤い、自由諸国のサプライ チェーンはますます中国中毒が高まる。更には諸国の電力網に中国製品 多く接続されることになり、サイバー攻撃の機会ともなる。CO2ゼ 口宣言は中国には利点ばかりである。


フェイクニュースによる温暖化プロパガンダ

そもそもなぜCO2をゼロにしなければならないのか?  災害のたびに地球温暖化のせいだと騒ぐ記事があふれるが、悉くフェ イクニュースである。これは公開されている統計で確認できる。

台風は増えてもいないし強くなってもいない。台風の発生数は年間25 個程度で一定している。「強い」に 分類される台風の発生数も15個程度 と横ばいで増加傾向はない。猛暑は都市熱や自然変動によるもので、温暖化のせいではない。

地球温暖化によって気温が上昇したといっても、江戸時代と比べて0.8℃に過ぎない。過去30年間当たりなら0.2℃と僅かで、感じることすら不可能だ。豪雨は観測データでは増えていない。理論的には過去30年間に0.2℃の気温上昇で雨量が増えた可能性はあるが、それでもせいぜい1%だ。よって豪雨も温暖化のせいではない。

このように観測データを見ると、地球温暖化による災害は皆無であったことが解る。以上は過去のことだったが、将来はどうか。観測データを見ると、大きな被害が出るという数値モデルによる予測はある。だが、これは往々にして 問題がある。

第1に、被害予測の前提とするCO2排出量が非現実的なまでに多すぎる。

第2に、この数値モデルは気温予測の出力を見ながら任意にパラメータをいじっている。この慣行はチューニングと呼ばれ、高い気温予測はこの産物である。

第3に、被害の予測は不確かな上に悪影響を誇張している。

政策決定に当たっては、シミュレーションは一つ一つその妥当性を検証すべきである。計算結果を鵜吞みにするのは極めて危うい。


世界のマスメディアで進む 環境問題という名の「洗脳」

実際のところ、過去になされた不吉な予測は外れ続けてきた。温暖化で海氷が減って絶滅すると騒がれたシロクマはむしろ増えている。人が 射殺せず保護するようになったからだ。温暖化による海面上昇で沈没して無くなると言われたサンゴ礁の島々はむしろ拡大している。サンゴは生き物なので、海面が上昇しても追随するのだ。

CO2の濃度は江戸時代に比べる と既に1.5倍になった。その間、地球の気温は0.8℃上がった。だが、観測データで見れば何の災害も起きていない。むしろこの間、経済成長によって、人は長く健康に生き るようになり、食糧生産は増え、飢えは過去のものになった。

今後も緩やかな温暖化は続くかもしれない。だが破局が訪れる気配はない。「気候危機」や「気候非常事態」と煽る向きがあるが、そんなものは何処にも存在しない。

ではなぜフェイクニュースが蔓延したか。

政府機関、国際機関、NGO、メディアが不都合なデータを無視し、異論を封殺し、プロパガンダを繰り返し、利権を伸長した結果だ。

急進的な環境運動は今や宗教となり、リベラル勢力のアジェンダに加わった。それは人種差別撤廃、貧困撲滅、LGBT、マイノリティの擁護などに伍して、新たなポリティカ ル・コレクトネスになった。

日本のHK、英国のBBC、ド イッの公共放送、米国のCNNやABCなど、世界の主要メディア、そ してGAFAや大手SNSも環境運動の手に落ちた。彼らは不都合な観測データを隠蔽し、不確かなシミュ レーションをまるで確立した事実であるかの如く報道し、単なる自然災害を温暖化の影響だと意図的に誤解させてきた。異論は封殺し、急進的な環境問題を支持するよう諸国民を洗脳した。


日本にはしたたかなエネルギー政策が必要だ

日本政府のCO2ゼロ宣言は、プロパガンダの発生源である西欧に同調したものに過ぎない。科学的知見はかかる極端な対策を支持しない。 だが一旦、国の方針とした以上、後戻りは難しい。すると課題はこれをどう解釈し対処するか、である。

菅前首相は正確には「実質」ゼロを目指すと言った。実質とは日本の技術によって海外で削減されるCO2 も含める、という意味だ。これを弾カ的に使う他ない。

製造業を強化し、経済成長を図ることで、あらゆる技術の進歩を促すべきだ。温暖化対策技術は、それを母体として生まれる。これを「上げ 潮シナリオ」と呼ぼう。

世界でなかなかCO2が減らないのは、削減にかかるコストが高いからだ。良い技術さえ出来れば問題は解決する。今LED照明は実力で普及しており、既存の電灯を代替して大幅にCO2を減らしている。 今後も例えば全固体電池の普及が期待される。電気自動車は補助金がなくとも実力で普及できるようになるだろう。日本はかかる真つ当なイ ノベーションを担うべきだ。

政府の役割は基礎研究への投資等多々ある。だが一方で、日本を高コ スト体質にしてはならない。かって 政府は太陽光発電を強引に普及させた。結果、電気料金は高騰した。いま流行りの洋上風力、水素発電等も、政策を誤ればその二の舞になる。

日本の製造業がイノベーションの真の担い手になる為には、電気料金は低く抑えねばならない。これには原子力も石炭火力も必要だ。 良い技術さえあれば、世界中でCO2は減る。日本のCO2排出は世界 の3%に過ぎない。その程度を日本発の技術で減らすことは経済を犠牲にせずとも出来る。

米国の共和党支持者は、温暖化危機説がフェイクであることをよく知っている。議会でもメディアでも 観測データに基づいた合理的な議論がなされている。このため、バイデ ン政権が何を言っても、議会では税 や規制等の法律は阻まれ、米国のCO2が実はそれほど減ることはない。

しかし日本はそうなっていない。のみならず強固な利権がそこかしこに出来てしまった。省庁は各々の温暖化対策予算と権限を持っている。 その補助金に群がる企業がある。研究者は政府予算を使って温暖化で災 害が起きるという「成果」を発表す る。メディアはそれをホラー話に仕立てて儲ける。

この帰結として、日本の国力は危険なまでに損なわれつつある。だが それを明言する人は稀だ。温暖化問に異議を唱えると、レッテルを貼られ、メディアやネットで吊るし上 げられ、利権から排除されるからだ。 だがCO2ゼロを強引に進めるならば、国民経済は破壊され、日本の自由や安全すら危うくなる。憂国の士は、この問題が深刻であることを理解し、声を上げねばならない。


(この項、了)




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