原油、天然ガス、軍事産業などへの経済的影響
——イスラエル・ハマス戦争 :231221情報
パレスチナの武装組織ハマスがイスラエルに対し、かつてない規模の攻撃に出て以降、激しい戦争が続いていますが、この影響により世界経済には多大な影響がでています。
当初、大幅に値上がりすると見られていた原油価格は産油国間の事情で原油安とはなりましたが、天然ガスは高騰し、EUは化石燃料の「脱ロシア化」を図っているにもかかわらず、ロシア産のLNGを輸入しなければならない事情があります。原因は、天然ガスをEUに輸出していたイスラエルの天然ガス生産停止が影響を及ぼしているからとのこと。戦争の影響は極めて大きいと言えます。
この間の事情を、国際政治学者はどう見ているのか、詳しい解説をお願いしました。
イスラエル・ハマス戦争によって原油価格が若干値上がりを起きていて、ブレント原油(商品市場で主要な位置を占める原油銘柄のひとつ。主にイギリスの北海にあるブレント油田から採鉱される)価格が1週間で6%くらい上がりました。ヨーロッパの指標になる原油の価格が6%くらい上がりましたが、それと同じくして1週間で天然ガスも急騰したのです。オランダの先物市場がヨーロッパの天然ガスの指標銘柄になっているのですが、40%も上がりました。
なぜ天然ガスの価格が上がったと思いますか?
それは今やイスラエルという国は天然ガス輸出国となっているからです。そのイスラエルが戦争で危ないということで、沖合の大きな海底ガス田を止めました。しかも、エジプトの方に行く天然ガスパイプラインも閉鎖したのです。要するに、それで天然ガスがヨーロッパの方へ行かなくなって値上がりをしました。
その伏線として、バイデン政権がノルウェー海軍の援助を得てやったと言われていますが、ノルドストリーム1・2という4本ある天然ガスパイプラインのうち3本を去年の9月の下旬に破壊したのです。
当然それにより、ウクライナ戦争中も安定供給源だったロシアからの天然ガスがパイプラインで入ってこなくなりました。まだLNG液化の方は入っていますが、当然ながら値段は高くなってきます。LNGの方は取っておけるといっても2週間が限度であるようです。天然ガスも非常に低い温度を保っておかなければならず、取っておくこと自体にものすごくエネルギーがかかってしまいます。
現在、ロシアからの安定供給を侵されていて、尚且つイスラエルから来ていたものが入らなくなるということで、天然ガスがヨーロッパにおいて1週間で40%も値上がりしてしまいました。
イスラエルは紛争を理由にして、海洋ガス田を運用しているアメリカのシェブロンに対して生産停止を要請しています。ガザ地区の近くを通過してエジプトまで伸びているガスパイプラインもイスラエルが閉鎖しました。紛争が長期化すると、エジプトの液化天然ガスの輸出にも悪影響がありそうです。
それから10月13日までの週で、バルト海において破壊活動によるものだと思われるガスパイプラインの損傷が起きていました。こういった複合的な理由で、オランダのTTFという天然ガス先物価格が急騰したということです。バイデン政権がノルドストリームを破壊したとすれば、ヨーロッパの方としては、大変いい迷惑ということになります。これは反ロシア派でやった人たちにとっては、自業自得という言い方もできると思います。
石油ではなくて、天然ガスの方に影響が出ているというのは面白いところです。石油の方はOPECの方に生産余力があります。日量500万バレルくらいは余裕があって掘ろうと思えば、掘れるけど掘っていません。500万バレルのうち300万バレルくらいはサウジアラビアが持っていますから、当国が今回は国際経済危機にしてはいけないということで、慎重に今回のイスラエル・ハマス紛争で振舞っています。
だから石油が値上がりしないように我々は、供給を増大させる用意があるということが伝わっていますので、石油市場の方は安定しているのです。実際に供給の余裕枠があり、まだ、糊代も相当あります。天然ガスの方は生産と消費が拮抗しているので、糊代の部分に供給の余裕分がありません。それで危ないとなるとすぐに値上がりしてしまうということです。
世界中で紛争が起きてくると金価格は押し上げることになります。有事のドル買いというのもありますけど、有事のゴールド買いということで、より安定した資産を求めるということになってきます。アメリカの防衛産業にはプラスとなっているのです。
実はイスラエルも相当な兵器をウクライナに送っていました。それでイスラエル自身の兵器がなくなってしまい、アメリカの兵器・弾薬等の在庫も非常に少ないのですが、ウクライナよりもイスラエルが優先ということになります。ウクライナとしては兵器・弾薬が入ってくる量が減るので、益々戦争を継続するのが難しくなるでしょう。
それで兵器産業としてはプラスですが、特に消耗品となる弾薬や砲弾などの注文はきます。戦争はいつまでも続くものではなく、続いても1年半とか2年後には需要が減ってしまうので、防衛産業にプラスというのは短期的なボーナスのようなものです。また、イスラエルはITやバイオなどのハイテク産業の冠たる国です。ユダヤ人の優秀な頭脳で次から次へと新しい起業が行なわれていますが、戦争によって兵隊に人手が取られるということでハイテク産業経済の成長にはマイナスでしょう。
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