赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

国際秩序を破壊するプーチン

2023-12-20 00:00:00 | 政治見解



国際秩序を破壊するプーチン :231220情報


プーチンの目指す世界とその悪影響について、当ブログおなじみの北野公伯氏に解説していただきました。早速ご覧ください。


▼プーチンが目指す「弱肉強食の世界」――「人の物は俺の物」プーチンが破壊した国際秩序

プーチンは2008年、「クリミアはウクライナのものだ」と断言していました。英語字幕もありますので、是非ご覧ください。【証拠映像】

ところが、このインタビューから6年後の2014年、プーチンはクリミアを奪ったのです。さらに8年後の2022年2月、プーチンは、ウクライナ侵攻を開始しました。そして2022年9月、彼は、ルガンスク州、ドネツク州、ザポリージャ州、へルソン州を併合しました。

勝手に隣国の領土を併合してしまう、驚愕の事態です。

プーチンは、ウクライナ侵攻の理由として、「迫害されているルガンスク州、ドネツク州のロシア系住民を助ける」ことを挙げていました。しかし、「ザポリージャ州」と「へルソン州」については、まったく言及がなかったのです。

なぜ彼は、この2州を併合したのでしょうか? はっきり言えば、「併合できたから」でしょう。


▼北海道に迫っている危機

事実上、「国際法とか過去の約束とか全然関係ない」というプーチンの「相対的領土観」、これは【 北海道はロシア領 】と主張するミロノフ元上院議長の言葉によく表れています。
『時事』2022年4月9日付。:〈ロシアのウクライナ侵攻を受けて日本が対ロ制裁を科す中、ロシアの政党党首が「一部の専門家によると、ロシアは北海道にすべての権利を有している」と日本への脅しとも受け止められる見解を表明した。〉

「北海道はロシア領」だそうです。

〈見解を表明したのは、左派政党「公正ロシア」のミロノフ党首で、1日に同党のサイトで発表された。公正ロシアは政権に従順な「体制内野党」。ミロノフ氏は2001~11年に上院議長を務めた。〉(同上)

「北海道はロシア領」発言をしたのは、「元上院議長」です。いってみれば、大物政治家。そのロジックが、驚愕物です。

〈「どの国も望むなら隣国に領有権を要求し、正当化する有力な根拠を見いだすことができる」と明言した。〉(同上)

これ、わかりますか? ロシアが、他国の領土を欲しくなった。その時、「正当化する有力な根拠を見出すことができる」というのです。

たとえば、プーチンが「北海道を手にいれたい」と思った。その時、「北海道はロシア領である」という「有力な根拠」を見出すことができる。要するに、「作り出すことができる」と。

ちなみに、ロシアが力をつけてきたら、どうやって北海道を奪うのでしょうか? 小野寺まさる先生から聞いた話では、「アイヌは、ロシアの少数民族だ。ロシアの少数民族アイヌは、日本で迫害されている。だから、ロシアはロシアの少数民族アイヌを迫害から守るために、北海道に侵攻しなければならない」というロジックなのだそうです。

「ルガンスク、ドネツクのロシア系住民は、迫害されている。だから、救わなければならない」と同じようなロジックですね。プーチンの世界観は、明らかに「弱肉強食」です。

「ロシアは国連安保理で拒否権を持つ常任理事国だ。だから、何をしても国連で罰せられることはない。欲しいものは、なんでも口実をでっちあげて手に入れる。人の物は俺の物。俺の物は俺の物。」というのが、プーチンの価値観なのです。でなければ、なぜ「北海道はロシアの物」と言うのか説明できません。


▼プーチンがぶち壊した国際秩序

さて、世界を「国際法以前の状態」に戻してしまったプーチン。広く悪影響を及ぼしています。

南米のベネズエラ。石油が豊富なこの国には、チャベスという、反米の闘士がいました。彼は2006年9月の国連演説で、アメリカのブッシュ大統領のことを「悪魔」と呼んでいました。

チャベスは2013年に亡くなり、ニコラス・マドゥロが大統領になりました。そのベネズエラで12月3日、驚くべき国民投票が実施されました。ベネズエラの東の隣国ガイアナの「エセキボ地域=ベネズエラ領かどうかを問う国民投票」が実施されたのです。



『毎日新聞』12月3日付。:〈南米ベネズエラで3日、隣国ガイアナの資源地帯「エセキボ地域」のベネズエラへの帰属を一方的に問う国民投票が実施された。地元メディアによると「95%以上の承認を得た」との暫定結果が発表され、独裁色の濃い反米左派マドゥロ大統領は「地滑り的勝利だ」と強調。周辺地域に緊張が生じている。〉

驚くべきロジックです。たとえてみましょう。ロシアで、「北海道はロシア領かどうかを問う国民投票が実行されました。95%のロシア国民が、北海道はロシア領と認めました。だから、北海道はロシア領です」。

あるいは、中国で、「沖縄は中国領かどうかを問う国民投票が実施されました。95%の国民が、沖縄は中国領と認めました。だから、沖縄は中国領です」。

ベネズエラのロジックは、これと同じです。ところで、非常に重要なポイントが二つあります。一つは、ベネズエラが領有権を主張しているエセキボ地域は、ガイアナの領土の【 約7割 】 を占めている。つまり、マドゥロはガイアナの領土7割を奪って、ガイアナには3割しか残さないつもりなのです。

もう一つのポイント。マドゥロの動きが活発化している理由は、「ガイアナの石油資源を奪いたい」という思惑があること。どういうことでしょうか?

『フォーブス ジャパン』12月2日付。:〈エセキボをめぐる最近の対立が、この地域での莫大な石油の発見と関係している点は否定できない。2015年以来、米エクソンモービルをはじめとする石油会社はガイアナで46の油田を発見しており、直近では10月に発表されたものを含め今年も4つ見つかっている。ガイアナの原油埋蔵量は110億バレルを超える可能性があり、開発されれば国民はクウェートやアラブ首長国連邦(UAE)よりも豊かになるだろう。〉

いずれにしても、マドゥロのやり方は、きわめて「プーチン的」と言えるでしょう。そして、実際プーチンは、チャベスの時代からベネズエラと良好な関係を保ってきました。もし、「ベネズエラーガイアナ戦争」が勃発すれば、当然ロシアには大きなメリットがあります。アメリカは、ウクライナ、イスラエル、ガイアナを支援する「三正面作戦」を強いられることになる。そうなると、ウクライナ支援が減る可能性が高まるでしょう。

『日経新聞』12月7日付。」〈ロシアとの関係の深さを指摘する声もある。中東やウクライナ情勢に中南米での混乱が加われば、欧米諸国をかき回せるとの意図だ。ベネズエラはロシア製の武器や戦闘機を用いている。過去にはロシアが原子力巡洋艦をカリブ海に派遣して合同軍事演習を実施したこともある。4月にはロシアのラブロフ外相の訪問を受け入れて、両国の経済関係の強化を確認した。〉

というわけで、ベネズエラの独裁者マドゥロが、プーチンを「見習って」隣国ガイアナの70%の領土を「自国領」と主張しています。また戦争がはじまるかもしれません。

注)12月11日のCNNは「ベネズエラとガイアナ、高官級会合の開催で合意」との報道あり。

「欲しいものは、理由をでっちあげても手に入れる」という悪しき先例を作ったプーチン。「悪のグローバリズムと戦うナショナリストの英雄」と一部で神のごとく崇拝されているプーチン。彼が作っているのは、「完全弱肉強食の世界」であることをしっかり認識する必要があるでしょう。




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