“やねこじき” 何とも、滑稽な名前であるが、
私の育った阿波市市場町に、400年続く伝統行事である。
私が子供の頃は、よく見に行った。
小さな田舎の小さな町の、そこで一番賑やかな場所が、町の中心にある商店街だった。
その商店街の店の軒先に、手作りの人形が、隣の店と競い合うように飾られていた。
どれも、店の主人が作った素朴な人形ばかりだった記憶がある。
何もない時代だったせいか、それが華やかで賑やかな記憶として、
今も残っている。
あれから、私も年を取ったように、商店街も年老いて行った。
昔のような賑やかさを忘れたように、寂しい通りとなったが、
商工会や、やねこじき保存会の方々の努力で、今も続けられている。
ただ、商店街の中でも出展する店が、かなり少なくなり、今年は12点だった。
その12点も商店街の一番端だったり、商店街からずいぶん離れた場所だったりと
12点全部を探して見るのに苦労した。
結局1点だけは、どうしても探せなかった。
こうなると、昔の華やかさが懐かしく、
この現状を、何とかならない物かと、悔しく思う。
そんな中で、地元中学の美術部の生徒さんの、若々しくはつらつとした作品を見つけた。
「あい・らぶ・有」と名付けられた、その作品は、芸能界やスポーツ界で活躍する“あいちゃん”達や、
レンジャーズのダルビッシュ有をモデルにした作品で、
中学生らしく、芸能界や世界で活躍する若者への憧れや、未来への希望が感じられ、嬉しかった。
「よく似てますね」 横にいた中学生に声をかけた。
「ありがとうございます」 爽やかな声が帰って来た。
この子達がいる限り、この街も“やねこじき”も、まだまだ大丈夫だ!
「来年も、頑張ってね」
彼女たちの爽やかな笑顔に感動して、おせっかいなおばさんは
また、余計な事を言ってしまったようだ。