かれこれ2ヶ月近く前に購入した文庫本です
今ころ読み終わったのは、内容がちょっと重くて、なかなか読み進まなかったからです。
裁判員裁判の様子が描かれています。
裁判員裁判といえば、死刑や無期懲役のような重犯罪が適応となるようで、最近では残忍な犯行現場写真などによるPTSDが問題視されていますが、この物語の裁判は、シングルマザーが喘息の息子を残して仕事に行き、発作で死なせてしまうというもの。
保護責任者遺棄の容疑でした。
裁判員が主人公なので、被告の様子は裁判でしかわかりません。
夫を事故で亡くし、喘息持ちの6歳の息子と2人暮らし。
その息子はちょっとした反抗期にありました。
自身は広告代理店のクリエイティブディレクターというキャリアウーマン。
事件当日、朝から風邪気味のまま保育園に出し、その後、発熱で呼び出しがかかり、一旦退社して息子を迎え、かかりつけ医に連絡して帰宅。
いつものように吸入で落ち着いたのを確認して、大事な会議のために出社。
しかし、いつもは順調に終わるはずの会議がこじれ、その後も仕事をすることに。
仕事を終え、会社の近くに住む恋人(人の夫!)の家に行き、車で送ってもらうことにします。
しかし、その男もすぐには出られず、また将来のことで口論となり、帰宅が大幅に遅れます。
その間、2回息子に電話をしますが、出ませんでした。
きっと寝ているのだろう、と判断します。
そして、帰宅すると息子は亡くなっていました。
裁判で明らかになるのは、息子は実は夫と別の女性との子供だったこと。
それを承知で実子として育てていたのです。
争点は、被告が息子の危機を認識していたか、ということです。
検察の主張も、弁護人の主張も、そして裁判員や裁判官の考えも、どれも共感できるのです。
そこから、どうやって結論を出せばよいのか・・・、これは相当悩みます。
でも、一人で子育てして働く親の苦労がよくわかりました。
どうして子供を一人にしたのか?
どうして恋人の家に行ったのか?
子供への愛情が不足していたのでは?
でも、それって自分にも当てはまるかも
クー太郎が心配だけど「いつものことだから大丈夫」とか自分に言い聞かせて仕事に行ったりします。
ちょっとくらい具合が悪くても、予定していた旅行なら行ってしまうかもしれません。
信頼して預けられるとはいえ、とても他人ごとは思えませんでした。
結局、被告がどれだけ息子を想っていたか、同様に息子も母を想っていたか、の証が、冷凍庫に入っていた一つの抹茶アイスでした。
息子が少し具合が良くなった時に、アイスを買いに行き、母親の分も買っておいたのです
裁判員と裁判官との評議の結果、懲役2年6ヶ月、執行猶予付きの有罪判決となります。
命を保護する責任というのは本当に重い、とあらためて思いました。
ちなみに、喘息は本当に怖い病気です。
確かに、体を鍛えることは大切ですが、時に「甘やかし過ぎ」と思われ、医療従事者でも軽視することがあります。
正しい知識を持って、正しく恐ること、が重要なのでしょう。