納豆争奪戦

 息子は納豆が大好きである。そんなに好きだとは知らなかったから、このあいだ、息子が遊んでいるうちに一人で食べてしまおうとパックを開けると、すぐに察知してとことこやって来て、食べたいという顔でにこにこ見た。一口食べると、しきりに納豆を指差して、もっともっととほとんど全部食べてしまった。
 自分が食べるだけでなく、人が食べているのを見るのも好きである。仕事から帰ってきた夫が遅めの夕食で納豆を食べようとすると、膝によじ登ってまた納豆を指す。欲しいのかと思えばそうではなく、今度は夫に食べろ食べろと勧めているのである。お箸をぐるぐる回したり、納豆が数珠だまのように糸を引いて落ちていくのが面白いのかもしれない。
 このように大好物であるから、先日の夕方、近所のスーパーへ納豆を買いに行くと、売り場がすっからかんである。「本日の納豆は売り切れました」と手書きの札が立ててあった。納豆が全部売れるなんて、こんなことってあるのかしらんと不思議に思って首をひねっていたが、あとで、納豆がどこかのテレビでとりあげられたためであるということを知った。
 別の日にもう少し規模の大きいスーパーに行ってみると、一種類だけかろうじて残っていた。ここにも、「テレビで放映されたために、納豆の生産が追い着きません」というようなことが書かれていた。
 へそ曲がりの私は躊躇した。みんなが買うから買っているように思われるのは嫌だ。私の買い物かごの中の納豆をちらと見た人やレジのおばさんに、ああ、この人も、テレビでやっていたから、なんて思われるのが嫌なのである。もっとも、周りの人は実際自分が思っているほど私に注意なんか払っちゃいないだろうから、そんなことを気にする必要はないのだろうけど。
 二年前に妊娠していたときには、寒天ブームにぶち当たった。妊娠後期には便秘になりやすくなるので、食物繊維の豊富な寒天を作って食べようと店に買いに行ったところ、どこも品切れであった。ようやく入荷された粉寒天を、ブームに乗っていると思われたら嫌だなと思いながら、必要に駆られて仕方なく買った。
 納豆も、息子が大好きであるから仕方なく買った。
 テレビでは、毎日のようにあの食べ物がいいのだとか、これがいいのだとかやっている。要するに、いろんなものをまんべんなく食べればよいのだろう。
(もっとも、そのテレビで放映された納豆に関するデータは、どうやら捏造だったらしいけど。)


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