送り火のあと

 土曜日は、五山の送り火があった。
 昼間、街の通りで外国人観光客の姿を見かけるたび、今日の送り火を見に来ているのだろうと思った。私は井の中の蛙だが、京都盆地を取り囲む山々に煌煌たる炎の文字を描く送り火のスケールの大きさは、世界的にも有数ではないかと思う。
 山に字が書いてあるね、と息子が言った。送り火があることは知らないはずだけれど、夜の点火に向け、積み上げられた薪や護摩木にかけられた白いカバーが、山の字の形に沿って点々と見えるから、そう言ったのだろう。
 天気予報では、京都の夜は雨で、昼過ぎから雨が降ったり止んだりを繰り返したからどうなるだろうと思ったが、点火の時刻には雨は上った。
 どこかへ見に行こうかと思っていたのだけれど、火がつく前に子供が眠ってしまったから、行かずじまいになった。送り火を見なかったのは、物心がついて以来、京都を離れていた数年前の一年に続き、これが二度目である。
 去年は、NHKがハイビジョン放送で中継をしていたけれど、今年はオリンピック一色で、地元放送局による唯一の中継を見ていたら、少し出かければすぐ実物が見られるのに家の中にいて見ないのは、なんとも惜しいような気がしてきた。
 翌日の太陽は、相変わらず焼きつけるような日差しを送ってきていたけれど、今までとは少し違うような風が吹いて、とくに日暮れ頃には、涼しい空気が流れこんだ。山に灯された火が消えるのと同時に、やはり夏の本体もまた過ぎ去って行ったようである。
 エアコンを入れなくても平気だし、子供の追いかけっこに付き合ってやってもさほど汗もかかない。川辺には、平地へ下りてきた赤とんぼが飛び交っているし、季節は、秋へと廻っている。


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