試練の塩鮭

 ご長寿猫を目指すため、味付けの濃い人間用の食べ物は極力あげないようにしようと決めたのだが、きょうのお昼に塩鮭を焼いたら、さっそくふくちゃんがやって来た。
 みゆちゃんはほとんど人の食べるものに興味がないからいいのだけれど(唯一、卵だけはちょっと気になるらしく、スクランブルエッグを作ると、人が食べたあとのお皿に残った半熟卵の汁を、ちょっと舐めたりする)、ふくちゃんは、魚を焼くたびにそばへ寄ってくるから困る。塩焼きとか照り焼きなら、味のついていない身の中のほうをあげることができるけど、味噌漬けとかししゃもは少し塩辛いと思う。
 きょうの塩鮭も辛かった。ふくちゃんは、鮭のお皿の横にきちんと座って待っている。勝手に手を出したりすれば「だめ」と叱れるけれど、健気にただじっと見つめているだけだから、決まりが悪い。出来るだけ目を合わさないようにして、さっさと片付けた。
 もらえないとわかると、ふくちゃんは皿のそばを離れて、テーブルの端に置いてあった、次男のうさぎのガラガラをかぶっと噛んだ。みゆちゃんと違って単純で裏表のないふくちゃんだから、ただ遊んでいるだけなのだろうけれど、こちらの気持ちから、塩鮭をもらえなかった腹いせに、うさぎに八つ当たりしているように見えた。
 仕方がないので代わりに乾しカマをあげることにした。冷蔵庫から袋を取り出したら、かごの中で寝ていたみゆちゃんもぴょんと飛び出した。
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