ロシアはプーチンに引導を渡せ
“シーチン”修一 2.0
【雀庵の「大戦序章」52/通算484 2022/6/8/水】先週末にカミサンが鹿児島で一人暮らしの89歳の叔母さん(亡母の妹)を見舞いに行った。叔母さんの子供は男2人で、長男は関西で、次男は鹿児島でそれぞれ所帯を持っている。次男は足腰の弱っている叔母さんを時々訪ねて、家の掃除や補修、買い物をしているが、奥さんが病弱で介護しなければならないので、結局、叔母さんは歩くのもやっとという不自由な体で炊事洗濯ゴミ出しをしているという。
戦争に負け、家制度を破壊された結果がこの有様である。こんな老後なら結婚も出産も育児もしなくなる。日本民族はやがて絶滅危惧種になりそうだが、災い転じて福となす、日本人は目覚めていくと信じたい。
子供を産み育てる、これは天による初期設定で、人も動物も同じだ。雀を5年間観察しているが、子供が自立できるまでに育つと、親鳥は使命を終えて墓場、多分、多摩丘陵の森の中に消えて行く。動物は皆そうだろう。子供の頃「神聖な象の墓場」とかいう絵本を読んだが「静かに去る」という感じ。
人間は幸か不幸か、子供が大人になっても年金生活の隠居とか老人として長生きする。定年退職は戦前は50歳だったが、55歳、60歳、今は65歳で、看護婦のカミサンは70歳になる今秋にリタイアするという。「呆けるから週に1日、2日とかでも続けたら」と提案したが、「十分やったし、薬を間違えたりとかのミスが怖いから」と言う。天命を果たした、後は余生、ということだ。「ご苦労さまでした」とパーティを開こう。
長生きはそれ自体は意味がない。パワーが残っているなら、いわゆる「第2の人生」に何を成すかが大事ではないか。そう言えば産経2022/6/7「朝晴れエッセー 99歳の現役職人」にはびっくりした。
<わが工場には99歳の現役職人がいる。わが社は昭和14年からヤスリを作り続けている小さな町工場だ。彼女はこの工場でヤスリの目を刻む目立て職人を60年続けてきた。小学生のときは健康優良児だったと聞く。ドッジボールの代表選手として隣町の小学校まで歩いて試合に行ったスポーツウーマンで、生来丈夫な体の持ち主だ。
性格は真面目で負けず嫌い。昔、他の職人が今日は500本、目立てをしたと聞けば、翌朝が来るのももどかしく、誰よりも早く出勤して600本仕上げてみせたと誇らしげに話してくれた。90歳のときには新商品の開発にも携わった。評判となりローカルテレビで紹介された。翌日は会社の電話が鳴りやまず一躍時の人となった・・・
そんな彼女の口からとうとう「引退」の言葉が出たのは99歳の誕生日の前だった。60年やり尽くして彼女が出した決断であったから慰留はしなかった。代わりに新人が技術を覚えるまで週1日でいいから指導に来てほしいと提案したところ「私はそんな中途半端な仕事、嫌いです。最後の日まで今まで通り毎日来ます」。大正生まれの、ちょっと頑固だけれど筋金入りの職人魂、あっぱれとしか言いようがない>
人間はこうありたいが、なかなかできるものではない。「奇跡の人」は無理としても最後まで中露北などアカの絶滅を「天命」として努めたいものだ。世界の動きを知り、咀嚼し、的確に勝つための方策を練る、これは生き甲斐でもあり、毎日の勉強は欠かせない。まあ、勝手な思い込みかも知れないが、古人曰く「嫌な予感はよく当たる」。油断大敵だ。
情報収集のため海外メディアでは英国「BBC」を以前からチェックしていたが、プーチン・ロシアのウクライナ侵略以降、Web版「ニューズウィーク日本版」(NW、米)もチェックするようになった。それまでNWはリベラル≒アカモドキ臭くて好きになれなかったが、戦争になると米国人は俄然、戦意高揚するのだろう、小生好みの記事が増えてきた。NWについてほとんど知らなかったので、同社サイトの自己紹介を覗いてみると――
<国際ニュース週刊誌『Newsweek』は1933年に米国で創刊。日本版は1986年に創刊されて以来、世界のニュースを独自の切り口で伝えることで、良質な情報と洞察力ある視点とを提供するメディアとして一目置かれてきました。
近年は日本版オリジナルの記事を大幅に増やし、本国版以上に国際色あふれる誌面に。また、中国や韓国などのアジア情勢の分析の深さや鋭さは、第一線で活躍するビジネスパーソンや論壇、政府関係者など政財界の要人から高く評価されています。
国内外のメディアが伝える「日本」とは一線を画す独自の視点、そして日本と世界の関係を冷静に見つめる報道姿勢もまた、論壇などで信頼を得ています。テレビや新聞、ネットでは得られない深い追求、多角的な視点。それが、ニューズウィーク日本版のバリューです。発行:株式会社CCCメディアハウス>
メディアハウス?・・・小生が編プロ(編集プロダクション)「メイルボックス」を起業した1984年頃、日本一の編プロと言われていたのが確か「メディアハウス」だったが、今はCCC=カルチュア・コンビニエンス・クラブの傘下に入ったのだろう。CCCはレンタル事業の「TSUTAYA」、書店の「蔦屋書店」で知られているそうで、「ライフスタイルに革命を起こすような仕組み、カルチュアを創り、編集し、提案する」のが理念だという。
小生は起業の際に「理念」を掲げなかった。カッコイイ理念を掲げたところで3年後に生き残っているのは3割しかないし、理念で仕事が来るはずもない。良い仕事をしていれば自ずと仕事は来ると思っていたが、確かにそうなった。ところが入金されるのは納品してから2~3か月後、手形払いだと5か月後で、起業から半年間は金欠病できつかった。知らぬが仏で、どうにか耐えたが、知っていたら起業しなかったかもしれない。結婚、主産、育児もそうか?
「知らぬが仏」・・・知らないから人間は突き進む、進めば明るい明日があると信じている、大方は努力すればそれなりに報われるが、残念ながら地獄への道だったということも・・・うーん、考えてみればそれは珍しくないパターンかもしれない。
登山家の野口健氏が「引き返す勇気」、つまり、運を天に任せるのではなく、状況をしっかり見て、リスクが高い時は「下山を選ぶ勇気」が必要だと説いている。山岳登山の場合は失敗はイコール「死」が多く、再チャレンジはできない。痛恨のミスになりやすい。
狡猾なはずの独裁者プーチンが戦略、戦術を誤ってウクライナ侵略を始めてしまった。側近の中には「今はまずい」という異論もあったが、聞く耳持たずどころか「臆病者め!」と罵倒し、その場面をニュースで流し、「力強く頼もしいプーチン大統領」をアピールして見せた。
こうなると最早「引き返す勇気」の出番はないし、それなりの「戦果」を得られなければ停戦も休戦もできなくなった。引くに引けずの八方ふさがり、泥沼にはまったような・・・マスコミが「長期戦になる」と言うのはそういうことだろう。
「ニューズウィーク日本版」2022/6/4、ウィリアム・アーキン(ジャーナリスト、元陸軍情報分析官)氏の「プーチンは4月に進行がん治療、3月に暗殺未遂 米機密情報のリーク内容」から。
<プーチンは病んでいるようだ──そんな最新の分析結果が5月末に情報機関から上がってきて、バイデン米大統領とその政権内部では、ロシア大統領の健康状態が大いに話題になっているらしい。
もちろん機密扱いの情報だが、プーチンは既に進行癌で、4月に治療を受け、どうにか持ち直したようだという。米情報機関の幹部3人が本誌だけに明らかにした。去る3月にプーチン暗殺の試みがあったことも、この報告で確認されたという。
本誌への情報源は、国家情報長官室(ODNI)と国防総省情報局(DIA)の幹部、そして空軍の元幹部。いずれも匿名を条件に、本誌の取材に応えた。3人とも、プーチンが権力への妄執を強め、ウクライナ戦争の先行きが読みにくくなったことを懸念しつつも、ロシアが核兵器の使用に踏み切るリスクは減ったとみている。
「プーチンの支配力は強いが、もはや絶対的ではない。プーチンが実権を握って以来、これほど主導権争いが激しくなったことはない。みんな、終わりが近いと感じている」と情報源の1人は述べた。
ただし3人とも、今はプーチンがほとんど姿を見せないため、彼の立場や健康状態を正確に把握するのは難しいと指摘した。「氷山があるのは確かだが、あいにく霧に包まれている」と、ODNIの幹部は電子メールで伝えてきた。
プーチンが他国の誰かと接触すれば、それが「ベストな情報源の1つ」になるが、「ウクライナ戦争のせいで、そういう機会がほとんど干上がってしまった」と言ったのはDIAの幹部。対面でしか得られない貴重な情報が、現状では不足していると指摘した。
そもそも「こちらの願望に基づく臆測は危ない」と言ったのは空軍の元幹部だ。「ウサマ・ビンラディンやサダム・フセインのときも、私たちは恣意的な臆測で痛い目に遭った。その教訓を、果たして私たちが学んだかどうか」
【マッチョな男が今では】上半身裸で馬に乗ったりして、プーチンは男らしさを誇示してきた。それはロシア政府が綿密に作り上げたペルソナ(人格)であり、西側の大統領とは違うぞというメッセージを世界にばらまくのに役立った。しかし、今はどうだ。外国の首脳と会ったときの、あの異様に長いテーブルは何だったのか。どう見てもウイルス感染と身体的接触への異様な恐怖心の反映ではないか。
ウクライナ侵攻に先立つ2月7日、フランスのマクロン大統領と会談したときも、この長テーブルが使われた。その様子から、諜報のプロはプーチンの衰えを読み取った。「握手もしない。抱擁も交わさない。なぜだ、と私たちは思った」。ODNIの幹部はそう言う。
そして4月21日、プーチンは国防相のセルゲイ・ショイグと会ったが、このときのテーブルは狭かった。外国メディアは、長らく表舞台から遠ざかっていたショイグに注目したが、実はプーチンも4月にはほとんど姿を見せていなかった。この日のプーチンは体調が悪そうで、だらしなく足を投げ出し、右手でテーブルの端をしっかりつかんでいた。
プーチンはパーキンソン病か、という説が流れた。いや、あれはKGB(旧ソ連の諜報機関)時代の訓練で染み付いた姿勢だとする見方もあった。妙にしっかりした姿勢や歩き方、そして右腕の位置は、上着の内側に隠した銃をいつでも取り出せるようにするためのものだと。
アメリカの情報機関はこの映像を精査した。遠隔診断のプロも、精神医学の専門家も加わった。そして大統領府に上がってきた結論は、どうやらプーチンは深刻な病気で、おそらく死にかけているというものだった。
プーチンはずっと、巧みにマッチョな自分を装ってきた。しかし実は、新型コロナウイルスの感染予防を口実に長期にわたって姿を見せなかった間に、深刻な病が進行していたことが疑われるのだ。
次にプーチンが姿を現したのは5月9日の「戦勝記念日」。顔はむくみ、前かがみに座っていた。プーチンの健康状態とウクライナでの戦況は同時進行で悪化していた。米情報機関は、プーチンの健康状態が従来の推測よりも深刻であり、ロシアという国も同じくらい疲弊していると判断した。
その3日後、ウクライナの情報機関を率いるキーロ・ブダノフ少将がイギリスのテレビで、プーチンは「心理的にも肉体的にも非常に悪い状態で、病状は重い」と述べ、政権内にはプーチンを引きずり降ろす計画もあると語った。
「プーチンは病気か? もちろんだ」とも元空軍幹部は言った。「しかし、だからと言って早まった行動を起こしてはいけない。プーチン後の権力の空白は、この世界にとって非常に危険だ」
【病状の深刻度を覆す新たな報告】そして5月末、バイデン大統領の下に情報機関からの最新の報告が届いた。その内容は、プーチンの病状は深刻だとする2週間前の報告を覆すものだった。実際、5月25日にはプーチンがモスクワの軍病院を視察する映像が流れた。翌26日にはイタリアのドラギ首相と電話会談し、国内の実業界の会議にもビデオで姿を見せた。
30日にはトルコのエルドアン大統領と電話で会談し、ウクライナのゼレンスキー大統領と対面で協議する可能性にも言及した。つまり、当座の健康には自信ありということだ。
ロシアの外相ラブロフも、5月末にフランスのテレビでプーチンの重病説を一蹴した。最近の精力的な活動を引き合いに出し、「分別のある人なら、彼に何らかの病気の兆候を見いだすことは不可能だろう」と述べた。
だがDIAの幹部に言わせると、「何も問題はないというラブロフの主張は客観的な診断ではなく、単にプーチンへの忠誠を誓う発言にすぎない」。ならば今も、プーチンは肉体的にも政治的にも難しい状態にあるのだろうか。
プーチンはクレムリン内部の政敵を排除し、自分の配下にある情報機関さえ信用していないのか。彼は本当に死にかけているのか。そうだとして、プーチン後には何が起き、誰が台頭するのか。バイデン政権は、表向きはプーチン重病説を「単なる噂」と一蹴しつつ、実際にはこれらの問題を精査している。
「仮に、その情報は信頼できると判断したとしても彼の賞味期限がいつ切れるかは分からない」と、ODNI幹部は言う。「プーチンなきロシアに(早まって)支持のサインを送るわけにもいかない」
【口を滑らせたバイデン】ちなみにバイデン大統領とオースティン国防長官は口を滑らせ、ロシアつぶしの意図をほのめかしてしまったが、2人ともその後に慌てて撤回している。「プーチンが元気だろうと病気だろうと、失脚しようとしまいと、ロシアが核武装している事実に変わりはない。こちらがロシアをつぶす気でいるなどと、向こうに思わせるような挑発はしないこと。戦略的安定の維持にはそれが不可欠だ」と、このODNI幹部は付け加えた。
DIAの幹部も、プーチンが病気で死にかけているとすれば、それは「世界にとって好ましい」ことだと言いつつ、「ロシアの未来やウクライナ戦争の終結につながるだけでなく、あの狂人が核兵器に手を出す脅威が減るからだ」と説明した。「弱くなったプーチン、つまり盛りを過ぎて下り坂の指導者は、自分の補佐官や部下を思いどおりに動かせない。例えば、核兵器の使用を命じた場合とかに」
確かに、全盛期のプーチンなら閣僚や軍部の反対を押し切って思いどおりの決断を下せただろう。しかし傷ついたプーチンは「もはや組織を完全に牛耳ってはいない」ようだから、そう好きなようにはできないという。
「プーチンが病気なのは間違いない・・・が、死期が近いかどうかは臆測の域を出ない」。このDIA幹部はそうも言った。「まだ確証はない。こちらの希望的観測を追認するような情報ばかり信じて、自分の疑問に自分で答えを出すのは禁物だ。今もプーチンは危険な男であり、もしも彼が死ねば混乱は必至だ。私たちはそこにフォーカスしている。君も、備えは怠るな」>(以上)
独裁者はナンバー2を育てない。いつの日か自分を駆逐する敵になるかも知れないからだ。家康の後継者はすべて徳川家の血筋である。男系男子の子孫を大量に生み育てるのが大事だから、11代将軍家斉は「種まく人」、正室、側室、“お手付”合わせて40人以上の畑にタネを蒔き、53人(男子26人、女子27人)の子を成した。当時は子どもの死亡率が高かったこともあるが、それでも無事に成年になったのは28人だという。
プーチンは表向きはロシア正教会の信者であり一夫一婦が原則だから、あちこちにタネを蒔くわけにはいかないし、世襲制もない。自分が死ぬまで独裁を続けなければ後任から何をされるか分かったものではない。
日々、病気は進行するし、カリスマ性は低下するし、求心力は衰えていくし、貯め込んだユーロとドルは封印されているし、国際社会から孤立を深めていくし、短期決戦のはずだったウクライナ戦線は泥沼化しつつある・・・上記のODNIの幹部は「かつては無敵に見えた男が、今は未来、とりわけ自分の未来と格闘しているようだ」と評したという。
小生ならこの重圧には耐えきれず、「裸にて 生まれてきたに 何不足」、病気を理由にさっさと引退するが・・・歴史に名君として名を刻みたい妄執の人、プーチンはそれができない。ロシア人がプーチンに引導を渡す勇気がなければ、ロシアが三流国に堕ちることは間違いない。ロシアは岐路にある。
・・・・・・・・・・・・・・
目安箱:ishiifam@minos.ocn.ne.jp
https://blog.goo.ne.jp/annegoftotopapa4646
https://note.com/gifted_hawk281/n/n9b3c7f4231f9
まぐまぐID 0001690154「必殺クロスカウンター」
“シーチン”修一 2.0
【雀庵の「大戦序章」52/通算484 2022/6/8/水】先週末にカミサンが鹿児島で一人暮らしの89歳の叔母さん(亡母の妹)を見舞いに行った。叔母さんの子供は男2人で、長男は関西で、次男は鹿児島でそれぞれ所帯を持っている。次男は足腰の弱っている叔母さんを時々訪ねて、家の掃除や補修、買い物をしているが、奥さんが病弱で介護しなければならないので、結局、叔母さんは歩くのもやっとという不自由な体で炊事洗濯ゴミ出しをしているという。
戦争に負け、家制度を破壊された結果がこの有様である。こんな老後なら結婚も出産も育児もしなくなる。日本民族はやがて絶滅危惧種になりそうだが、災い転じて福となす、日本人は目覚めていくと信じたい。
子供を産み育てる、これは天による初期設定で、人も動物も同じだ。雀を5年間観察しているが、子供が自立できるまでに育つと、親鳥は使命を終えて墓場、多分、多摩丘陵の森の中に消えて行く。動物は皆そうだろう。子供の頃「神聖な象の墓場」とかいう絵本を読んだが「静かに去る」という感じ。
人間は幸か不幸か、子供が大人になっても年金生活の隠居とか老人として長生きする。定年退職は戦前は50歳だったが、55歳、60歳、今は65歳で、看護婦のカミサンは70歳になる今秋にリタイアするという。「呆けるから週に1日、2日とかでも続けたら」と提案したが、「十分やったし、薬を間違えたりとかのミスが怖いから」と言う。天命を果たした、後は余生、ということだ。「ご苦労さまでした」とパーティを開こう。
長生きはそれ自体は意味がない。パワーが残っているなら、いわゆる「第2の人生」に何を成すかが大事ではないか。そう言えば産経2022/6/7「朝晴れエッセー 99歳の現役職人」にはびっくりした。
<わが工場には99歳の現役職人がいる。わが社は昭和14年からヤスリを作り続けている小さな町工場だ。彼女はこの工場でヤスリの目を刻む目立て職人を60年続けてきた。小学生のときは健康優良児だったと聞く。ドッジボールの代表選手として隣町の小学校まで歩いて試合に行ったスポーツウーマンで、生来丈夫な体の持ち主だ。
性格は真面目で負けず嫌い。昔、他の職人が今日は500本、目立てをしたと聞けば、翌朝が来るのももどかしく、誰よりも早く出勤して600本仕上げてみせたと誇らしげに話してくれた。90歳のときには新商品の開発にも携わった。評判となりローカルテレビで紹介された。翌日は会社の電話が鳴りやまず一躍時の人となった・・・
そんな彼女の口からとうとう「引退」の言葉が出たのは99歳の誕生日の前だった。60年やり尽くして彼女が出した決断であったから慰留はしなかった。代わりに新人が技術を覚えるまで週1日でいいから指導に来てほしいと提案したところ「私はそんな中途半端な仕事、嫌いです。最後の日まで今まで通り毎日来ます」。大正生まれの、ちょっと頑固だけれど筋金入りの職人魂、あっぱれとしか言いようがない>
人間はこうありたいが、なかなかできるものではない。「奇跡の人」は無理としても最後まで中露北などアカの絶滅を「天命」として努めたいものだ。世界の動きを知り、咀嚼し、的確に勝つための方策を練る、これは生き甲斐でもあり、毎日の勉強は欠かせない。まあ、勝手な思い込みかも知れないが、古人曰く「嫌な予感はよく当たる」。油断大敵だ。
情報収集のため海外メディアでは英国「BBC」を以前からチェックしていたが、プーチン・ロシアのウクライナ侵略以降、Web版「ニューズウィーク日本版」(NW、米)もチェックするようになった。それまでNWはリベラル≒アカモドキ臭くて好きになれなかったが、戦争になると米国人は俄然、戦意高揚するのだろう、小生好みの記事が増えてきた。NWについてほとんど知らなかったので、同社サイトの自己紹介を覗いてみると――
<国際ニュース週刊誌『Newsweek』は1933年に米国で創刊。日本版は1986年に創刊されて以来、世界のニュースを独自の切り口で伝えることで、良質な情報と洞察力ある視点とを提供するメディアとして一目置かれてきました。
近年は日本版オリジナルの記事を大幅に増やし、本国版以上に国際色あふれる誌面に。また、中国や韓国などのアジア情勢の分析の深さや鋭さは、第一線で活躍するビジネスパーソンや論壇、政府関係者など政財界の要人から高く評価されています。
国内外のメディアが伝える「日本」とは一線を画す独自の視点、そして日本と世界の関係を冷静に見つめる報道姿勢もまた、論壇などで信頼を得ています。テレビや新聞、ネットでは得られない深い追求、多角的な視点。それが、ニューズウィーク日本版のバリューです。発行:株式会社CCCメディアハウス>
メディアハウス?・・・小生が編プロ(編集プロダクション)「メイルボックス」を起業した1984年頃、日本一の編プロと言われていたのが確か「メディアハウス」だったが、今はCCC=カルチュア・コンビニエンス・クラブの傘下に入ったのだろう。CCCはレンタル事業の「TSUTAYA」、書店の「蔦屋書店」で知られているそうで、「ライフスタイルに革命を起こすような仕組み、カルチュアを創り、編集し、提案する」のが理念だという。
小生は起業の際に「理念」を掲げなかった。カッコイイ理念を掲げたところで3年後に生き残っているのは3割しかないし、理念で仕事が来るはずもない。良い仕事をしていれば自ずと仕事は来ると思っていたが、確かにそうなった。ところが入金されるのは納品してから2~3か月後、手形払いだと5か月後で、起業から半年間は金欠病できつかった。知らぬが仏で、どうにか耐えたが、知っていたら起業しなかったかもしれない。結婚、主産、育児もそうか?
「知らぬが仏」・・・知らないから人間は突き進む、進めば明るい明日があると信じている、大方は努力すればそれなりに報われるが、残念ながら地獄への道だったということも・・・うーん、考えてみればそれは珍しくないパターンかもしれない。
登山家の野口健氏が「引き返す勇気」、つまり、運を天に任せるのではなく、状況をしっかり見て、リスクが高い時は「下山を選ぶ勇気」が必要だと説いている。山岳登山の場合は失敗はイコール「死」が多く、再チャレンジはできない。痛恨のミスになりやすい。
狡猾なはずの独裁者プーチンが戦略、戦術を誤ってウクライナ侵略を始めてしまった。側近の中には「今はまずい」という異論もあったが、聞く耳持たずどころか「臆病者め!」と罵倒し、その場面をニュースで流し、「力強く頼もしいプーチン大統領」をアピールして見せた。
こうなると最早「引き返す勇気」の出番はないし、それなりの「戦果」を得られなければ停戦も休戦もできなくなった。引くに引けずの八方ふさがり、泥沼にはまったような・・・マスコミが「長期戦になる」と言うのはそういうことだろう。
「ニューズウィーク日本版」2022/6/4、ウィリアム・アーキン(ジャーナリスト、元陸軍情報分析官)氏の「プーチンは4月に進行がん治療、3月に暗殺未遂 米機密情報のリーク内容」から。
<プーチンは病んでいるようだ──そんな最新の分析結果が5月末に情報機関から上がってきて、バイデン米大統領とその政権内部では、ロシア大統領の健康状態が大いに話題になっているらしい。
もちろん機密扱いの情報だが、プーチンは既に進行癌で、4月に治療を受け、どうにか持ち直したようだという。米情報機関の幹部3人が本誌だけに明らかにした。去る3月にプーチン暗殺の試みがあったことも、この報告で確認されたという。
本誌への情報源は、国家情報長官室(ODNI)と国防総省情報局(DIA)の幹部、そして空軍の元幹部。いずれも匿名を条件に、本誌の取材に応えた。3人とも、プーチンが権力への妄執を強め、ウクライナ戦争の先行きが読みにくくなったことを懸念しつつも、ロシアが核兵器の使用に踏み切るリスクは減ったとみている。
「プーチンの支配力は強いが、もはや絶対的ではない。プーチンが実権を握って以来、これほど主導権争いが激しくなったことはない。みんな、終わりが近いと感じている」と情報源の1人は述べた。
ただし3人とも、今はプーチンがほとんど姿を見せないため、彼の立場や健康状態を正確に把握するのは難しいと指摘した。「氷山があるのは確かだが、あいにく霧に包まれている」と、ODNIの幹部は電子メールで伝えてきた。
プーチンが他国の誰かと接触すれば、それが「ベストな情報源の1つ」になるが、「ウクライナ戦争のせいで、そういう機会がほとんど干上がってしまった」と言ったのはDIAの幹部。対面でしか得られない貴重な情報が、現状では不足していると指摘した。
そもそも「こちらの願望に基づく臆測は危ない」と言ったのは空軍の元幹部だ。「ウサマ・ビンラディンやサダム・フセインのときも、私たちは恣意的な臆測で痛い目に遭った。その教訓を、果たして私たちが学んだかどうか」
【マッチョな男が今では】上半身裸で馬に乗ったりして、プーチンは男らしさを誇示してきた。それはロシア政府が綿密に作り上げたペルソナ(人格)であり、西側の大統領とは違うぞというメッセージを世界にばらまくのに役立った。しかし、今はどうだ。外国の首脳と会ったときの、あの異様に長いテーブルは何だったのか。どう見てもウイルス感染と身体的接触への異様な恐怖心の反映ではないか。
ウクライナ侵攻に先立つ2月7日、フランスのマクロン大統領と会談したときも、この長テーブルが使われた。その様子から、諜報のプロはプーチンの衰えを読み取った。「握手もしない。抱擁も交わさない。なぜだ、と私たちは思った」。ODNIの幹部はそう言う。
そして4月21日、プーチンは国防相のセルゲイ・ショイグと会ったが、このときのテーブルは狭かった。外国メディアは、長らく表舞台から遠ざかっていたショイグに注目したが、実はプーチンも4月にはほとんど姿を見せていなかった。この日のプーチンは体調が悪そうで、だらしなく足を投げ出し、右手でテーブルの端をしっかりつかんでいた。
プーチンはパーキンソン病か、という説が流れた。いや、あれはKGB(旧ソ連の諜報機関)時代の訓練で染み付いた姿勢だとする見方もあった。妙にしっかりした姿勢や歩き方、そして右腕の位置は、上着の内側に隠した銃をいつでも取り出せるようにするためのものだと。
アメリカの情報機関はこの映像を精査した。遠隔診断のプロも、精神医学の専門家も加わった。そして大統領府に上がってきた結論は、どうやらプーチンは深刻な病気で、おそらく死にかけているというものだった。
プーチンはずっと、巧みにマッチョな自分を装ってきた。しかし実は、新型コロナウイルスの感染予防を口実に長期にわたって姿を見せなかった間に、深刻な病が進行していたことが疑われるのだ。
次にプーチンが姿を現したのは5月9日の「戦勝記念日」。顔はむくみ、前かがみに座っていた。プーチンの健康状態とウクライナでの戦況は同時進行で悪化していた。米情報機関は、プーチンの健康状態が従来の推測よりも深刻であり、ロシアという国も同じくらい疲弊していると判断した。
その3日後、ウクライナの情報機関を率いるキーロ・ブダノフ少将がイギリスのテレビで、プーチンは「心理的にも肉体的にも非常に悪い状態で、病状は重い」と述べ、政権内にはプーチンを引きずり降ろす計画もあると語った。
「プーチンは病気か? もちろんだ」とも元空軍幹部は言った。「しかし、だからと言って早まった行動を起こしてはいけない。プーチン後の権力の空白は、この世界にとって非常に危険だ」
【病状の深刻度を覆す新たな報告】そして5月末、バイデン大統領の下に情報機関からの最新の報告が届いた。その内容は、プーチンの病状は深刻だとする2週間前の報告を覆すものだった。実際、5月25日にはプーチンがモスクワの軍病院を視察する映像が流れた。翌26日にはイタリアのドラギ首相と電話会談し、国内の実業界の会議にもビデオで姿を見せた。
30日にはトルコのエルドアン大統領と電話で会談し、ウクライナのゼレンスキー大統領と対面で協議する可能性にも言及した。つまり、当座の健康には自信ありということだ。
ロシアの外相ラブロフも、5月末にフランスのテレビでプーチンの重病説を一蹴した。最近の精力的な活動を引き合いに出し、「分別のある人なら、彼に何らかの病気の兆候を見いだすことは不可能だろう」と述べた。
だがDIAの幹部に言わせると、「何も問題はないというラブロフの主張は客観的な診断ではなく、単にプーチンへの忠誠を誓う発言にすぎない」。ならば今も、プーチンは肉体的にも政治的にも難しい状態にあるのだろうか。
プーチンはクレムリン内部の政敵を排除し、自分の配下にある情報機関さえ信用していないのか。彼は本当に死にかけているのか。そうだとして、プーチン後には何が起き、誰が台頭するのか。バイデン政権は、表向きはプーチン重病説を「単なる噂」と一蹴しつつ、実際にはこれらの問題を精査している。
「仮に、その情報は信頼できると判断したとしても彼の賞味期限がいつ切れるかは分からない」と、ODNI幹部は言う。「プーチンなきロシアに(早まって)支持のサインを送るわけにもいかない」
【口を滑らせたバイデン】ちなみにバイデン大統領とオースティン国防長官は口を滑らせ、ロシアつぶしの意図をほのめかしてしまったが、2人ともその後に慌てて撤回している。「プーチンが元気だろうと病気だろうと、失脚しようとしまいと、ロシアが核武装している事実に変わりはない。こちらがロシアをつぶす気でいるなどと、向こうに思わせるような挑発はしないこと。戦略的安定の維持にはそれが不可欠だ」と、このODNI幹部は付け加えた。
DIAの幹部も、プーチンが病気で死にかけているとすれば、それは「世界にとって好ましい」ことだと言いつつ、「ロシアの未来やウクライナ戦争の終結につながるだけでなく、あの狂人が核兵器に手を出す脅威が減るからだ」と説明した。「弱くなったプーチン、つまり盛りを過ぎて下り坂の指導者は、自分の補佐官や部下を思いどおりに動かせない。例えば、核兵器の使用を命じた場合とかに」
確かに、全盛期のプーチンなら閣僚や軍部の反対を押し切って思いどおりの決断を下せただろう。しかし傷ついたプーチンは「もはや組織を完全に牛耳ってはいない」ようだから、そう好きなようにはできないという。
「プーチンが病気なのは間違いない・・・が、死期が近いかどうかは臆測の域を出ない」。このDIA幹部はそうも言った。「まだ確証はない。こちらの希望的観測を追認するような情報ばかり信じて、自分の疑問に自分で答えを出すのは禁物だ。今もプーチンは危険な男であり、もしも彼が死ねば混乱は必至だ。私たちはそこにフォーカスしている。君も、備えは怠るな」>(以上)
独裁者はナンバー2を育てない。いつの日か自分を駆逐する敵になるかも知れないからだ。家康の後継者はすべて徳川家の血筋である。男系男子の子孫を大量に生み育てるのが大事だから、11代将軍家斉は「種まく人」、正室、側室、“お手付”合わせて40人以上の畑にタネを蒔き、53人(男子26人、女子27人)の子を成した。当時は子どもの死亡率が高かったこともあるが、それでも無事に成年になったのは28人だという。
プーチンは表向きはロシア正教会の信者であり一夫一婦が原則だから、あちこちにタネを蒔くわけにはいかないし、世襲制もない。自分が死ぬまで独裁を続けなければ後任から何をされるか分かったものではない。
日々、病気は進行するし、カリスマ性は低下するし、求心力は衰えていくし、貯め込んだユーロとドルは封印されているし、国際社会から孤立を深めていくし、短期決戦のはずだったウクライナ戦線は泥沼化しつつある・・・上記のODNIの幹部は「かつては無敵に見えた男が、今は未来、とりわけ自分の未来と格闘しているようだ」と評したという。
小生ならこの重圧には耐えきれず、「裸にて 生まれてきたに 何不足」、病気を理由にさっさと引退するが・・・歴史に名君として名を刻みたい妄執の人、プーチンはそれができない。ロシア人がプーチンに引導を渡す勇気がなければ、ロシアが三流国に堕ちることは間違いない。ロシアは岐路にある。
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