杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

珈琲店タレーランの事件簿 2 ちょっとネタバレ

2013年09月08日 | 
岡崎 琢磨 (著) 宝島社(出版)

京都の街にひっそりと佇む珈琲店“タレーラン”に、頭脳明晰な女性バリスタ・切間美星の妹、美空が夏季休暇を利用してやってきた。外見も性格も正反対の美星と美空は、常連客のアオヤマとともに、タレーランに持ち込まれる“日常の謎”を解決していく。人に会いに来たと言っていた美空だったが、様子がおかしい、と美星が言い出して…。姉妹の幼い頃の秘密が、大事件を引き起こす。 (BOOK」データベースより)


前作と一緒に予約してたので、比較的短期間で二冊読破ということになりました。
前作より進歩してる気はするのだけど、相変わらず大切なポイントを読者に提示せず土壇場でオセロの駒をひっくり返すように矢継ぎ早に「真実」を繰り出してくる手法は変わらないのね。見事な伏線、というには少々強引で粗さも目立つので、「お見事」と騙された満足感より「何それ!」と軽く憤慨しちゃうという・・惜しいな

姉妹が小さい頃生き別れた「筈」の父親がポイント。
美空が父ではないかと探し当てた男と姉に隠れて会っていて、アオヤマ君は妹に協力しているんですが、男の正体は違っていて、大騒動に発展。
「本当のこと」がわかってしまえば、確かにおかしな点がいくつも伏線で登場してるのよね。
アブナイ借金取りに追われているらしい男の素性や、タレーランで主要登場人物が顔を合わせた場面での男の行動や、オーナーが現金を手元に置いてる話などなど

美空を救いだす場面はアオヤマ君も活躍して面目躍如というところですが、美星との仲はまたまた進展せず・・今時の若者の恋愛にしては奥手過ぎませんか
「ビブリア古書堂~」を意識してるような展開なんですけど、二番煎じはどうもね

美星と美空は姉妹といっても「双子の」というオチそりゃないぜ

京都観光の写真の謎や、女子高生の恋愛沙汰、美空の後輩の疾走事件なども間に入ってきますが、容易に謎解き出来ちゃうので、本筋の方がまだ読み応えはあるかも

続編が出る頃にはもう少しこなれてくるかしらん

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クラウド・アトラス

2013年09月08日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2013年3月15日公開 アメリカ 172分

初老の男ザックリー(トム・ハンクス)には、時空を超えたいくつもの“自分”の物語があった。1849年の太平洋諸島。“彼”は医師ヘンリー・グースとして弁護士ユーイング(ジム・スタージェス)と出会う。ユーイングはホロックス牧師(ヒュー・グラント)と奴隷売買の契約を交わす。島で罹患したユーイングに、グースは無料の治療を買って出る。1936年、ユーイングの航海日誌を読む音楽家フロビシャー(ベン・ウィショー)は父親に勘当され、恋人シックススミス(ジェイムズ・ダーシー)のもとを離れて、スコットランドの作曲家エアズ(ジム・ブロードベント)の家へ押し掛ける。フロビシャーはエアズの採譜者を務めながら、後に幻の名曲となる「クラウド アトラス六重奏」を作曲する。フロビシャーからの最後の手紙をシックススミスが受け取った37年後の1973年、サンフランシスコ。物理学者となったシックススミスは、人命に関わる原発の報告書をジャーナリストのルイサ(ハル・ベリー)に託そうとして殺される。原発の従業員アイザック・スミスである“彼”はルイサと恋におち、会社を裏切る決意をする。2012年のロンドンで“彼”は作家ダーモット・ホギンズとして著書を酷評した書評家を殺し、カルト的英雄となる。大儲けした出版元のカベンディッシュ(ジム・ブロードベント)はダーモットの弟たちに脅迫される。2144年、遺伝子操作で作った複製種を純血種が支配する全体主義国家ネオ・ソウル。複製種ソンミ451(ペ・ドゥナ)は密かにカベンディッシュ原作の映画を観て自我に目覚める。革命軍チャン(ジム・スタージェス)と恋におちた彼女は、自ら反乱を率いる。ソンミが女神として崇められる地球崩壊後106度目の冬の地で、進化した人間コミュニティーからの使者メロニム(ハル・ベリー)が若き日のザックリーの村を訪れる。ザックリーがガイド役となり悪魔の地と呼ばれる険しい山の山頂にたどり着くと、メロニムの驚くべき使命が明かされる……。( Movie Walkerより)


デイヴィッド・ミッチェルの小説『クラウド・アトラス』が原作。19世紀から文明崩壊後までの異なる時代に舞台を置いた6つの物語が並行して進んでいきます。

う~~ん・・・一度観ただけじゃ本当に理解したとは言えない、深い作品
ブルーレイの特典の解説を見て「あぁそうだったのか」と。
そもそも6つの物語に登場する俳優は基本的には主要メンバーが姿や性別まで変えて繰り返し登場してくるのだからややこしい。
ハル・ベリーくらいは見分けられても他は解説観るまで気付かなかった人も多数
6つのお話をとっかえひっかえ読んでいるような進行は正直疲れます。ただ、それぞれの物語の時間的な流れはいじってないので、それぞれの結末もほぼ同時にわかるのはイイネ

一人の人間が時の流れの中で何度も生まれ変わっていくのですが、時に悪者であり時に英雄でもあるという複雑さゆえ、公開時の評価はあまり高くなかったような気がします。それで劇場鑑賞を見送ったような
逆に興味を持ったら記録媒体で何度も繰り返し見て、その度に新たな発見を楽しむということができる作品ともいえるでしょう

ユーイングは太平洋諸島での体験を通して奴隷解放運動に目覚めます。この時はまだ運命に対して受け身ですが、後にチャンに生まれ変わりソンミを守って死んでいく革命戦線の闘士という能動的な男として成長しているの

音楽家のフロビシャーは、恋人や成功の成就半ばで自殺します。彼がユーイングの書いた航海日誌の半分しか手に入れられなかったというのが生き方の暗示のようです。彼が恋人であるシックススミスに宛てた手紙は、物理学者となったシックスセンスの原発報告書に絡む事件でルイサの手に渡り、彼女の真実追究への発奮材料となるのです。

更に、ルイサの物語は後にカベンディッシュに勇気を与えます。このエピソードはノークス看護師(ヒューゴ・アーヴィングが女装で演じています)の描写を含めてドタバタ喜劇の様相を呈しています。長い物語の中で息抜き的扱いかな

そしてカベンディッシュの物語は未来で映画として使われ、それをソンミが観て感銘を受けるという・・・この世界はスタイリッシュに描かれています。まさにSF

最後は200年後。ソンミが神格化された世界で、悪徳医師のグースから生まれ変わったザッカリーが登場します。遠い過去の罪の意識は悪魔に姿を変えてザッカリーを唆しています。

恋人たちが繰り返し生まれ変わり巡り合い愛し合うのですが、これがなかなか複雑。
チャンとソンミのカップルは実はアダムとその妻ティルダでもあるのね
彼ら若いカップルから、メロニムとザッカリーの中年カップル、カベンディッシュと若き日の恋人とのハッピーエンドなどなど生まれ変わっていく中で世界を良い方向に導いて行く流れがあって、科学の進歩の物語でもあるけれど、正しい行為が未来を導いて行くことを示唆してもいます。

三時間近い長さもこれだけの意味を含ませているなら当然なのだけど、ぼんやり観てたらきっと飽きちゃうんだろうなぁ。

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