杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

危険なメソッド

2014年08月09日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2012年10月27日公開 イギリス・ドイツ・カナダ・スイス  99分

1904年。29歳のユング(マイケル・ファスベンダー)は、チューリッヒのブルクヘルツリ病院で精神科医として働いていた。精神分析学の大家フロイト(ヴィゴ・モーテンセン)が提唱する“談話療法”に刺激を受けた彼は、新たな患者ザビーナ(キーラ・ナイトレイ)にその斬新な治療法を実践。間もなくユングは、ザビーナの幼少期の記憶を辿り、彼女が抱える性的トラウマの原因を突き止めることに成功する。しかし、医師と患者の一線を越えてしまった2人は、秘密の情事を重ねるようになり、ザビーナを巡るユングの葛藤はフロイトとの友情にも亀裂を生じさせてゆく。貞淑な妻よりも遥かに魅惑的なザビーナとの“危険なメソッド”に囚われ、欲望と罪悪感の狭間で激しく揺れ動くユング。やがて彼は、自分自身も想像しなかった痛切な運命を辿ることになるのだった……。


AKB48の歌詞にも登場するユングやフロイトという精神分析の大家の二人の物語であること、キーラやヴィゴが演じていることが鑑賞の動機です。

作中で語られる精神分析論は置いておいてどんな偉いお医者さんや学者でも心の内側にある欲望や葛藤は一般人と変わらないんだなぁというのが率直な感想かな

ザビーナは厳しい父の躾が原因となって性への衝動と抑圧の狭間で精神を病んでしまっています。感情を爆発させ暴れる姿は鬼気迫るものがあり、キーラの熱演が光ります
ユングは彼女との対話の中でその原因を探り出し、自覚させることで病状をコントロールすることに成功しますが、その過程で一線を越えて男女の仲になってしまうの

その発端はフロイトが患者としてユングに送り込んだグロス(ヴァンサン・カッセル)の欲望に忠実で自由な思想に感化されてしまったことです。グロスも精神科医なのねそして聡明で情熱的なザビーネと接するうちに自分の中にも欲望があることに気付くのです。ミイラ取りがミイラになったと言いますが、堅物だった筈のユングも一旦熱情の虜になれば、貞淑な妻より愛人に夢中になり、自分の感情をコントロールできなくなってしまう・・・その姿こそが人間らしいとも言えるけど、やっぱり共感は出来かねるかな。

フロイトとユングは親子ほどの年齢差があります。フロイトの考えに感銘を受けて訪ねてきたユングをフロイトは家族のようにもてなし、初対面で13時間も対話を続けるほど意気投合しました。彼こそ自分の後継者だと期待していたフロイトでしたが、ユングとザビーナの関係や、性理論が全てとするフロイトの考えにユングが疑問を抱いたことなどからやがて二人は決別することになるのです。二人の関係に亀裂が入った直接の原因として旅先で互いの夢を分析する場面が登場します。
ユングの見た夢が自分たちの関係が相容れないものに変容したことを指摘し、自らの夢の内容を話すことを拒んだフロイト。二人の師弟関係の蜜月もこの時終わりを告げたのだとわかります。

二人の偉大な心理学者の間にあって彼らに強い影響を与えたのがザビーナという女性。
彼女はユングの治療を受け、やがて不倫の関係に陥りますが、大学を出て自らも心理学者となるの。元々実家はかなり裕福なようです。彼女が精神を病んだ原因は幼少期のトラウマにあり、それを自覚することこそが病を克服することになったようです。ユングとの関係さえも彼女にとっては治療薬になったのかも。やがて彼女はフロイトの理論に賛同しユングの元を離れます。それはユングとの関係の終局でもありました。ザビーネとフロイトは共にユダヤ系の出身で、ユングは純粋なアーリア人であることも彼らの関係に影響を及ぼしているようです。やがて起こるナチ侵攻の悲劇は物語ではエピローグとして数行出てくるだけですが、フロイトは彼女に同胞の親愛は持っていたようです。

三人の関係は愛情と友情が入り混じった複雑さがありますが、それぞれの人生に欠くことのできないものでもあったのだと読み取れました。映画の中でザビーナが身につける衣装が全て白であることが印象に残りました。

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