杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札

2014年10月24日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2014年10月18日公開 103分 フランス

1956年、オスカー女優のグレース・ケリー(ニコール・キッドマン)は、モナコ大公レーニエ3世(ティム・ロス)と結婚。1961年12月、二人の子供に恵まれるも王室の中で孤立していたグレースの前に、脚本を手にしたヒッチコック(ロジャー・アシュトン=グリフィス)が現れる。「マーニー」という新作映画の出演依頼に訪れたのだ。そんな中、モナコ公国に危機が降りかかる。アルジェリアの独立戦争で戦費が必要になったフランスが、無税の国モナコに移転したフランス企業から税金を徴収して支払うよう要求、「従わなければモナコをフランス領とする」と声明を出したのだ。もし戦争になれば、軍隊もない小国モナコは、一瞬で占領されてしまう。政治で頭がいっぱいのレーニエに無視され、ますます居場所を見失ったグレースはハリウッド復帰を望むが、国家の危機的状況に発表は控えられる。だが宮殿から情報が漏れ大々的に報道、グレースの相談役で後見人のタッカー神父(フランク・ランジェラ)は、フランスのスパイがいると警戒する。1962年7月。国民の公妃への不満が高まる中、励ましてくれるのは義姉のアントワネット(ジェラルディン・ソマーヴィル)と、オナシス(ロバート・リンゼイ)の愛人マリア・カラス(パス・ベガ)だけだった。やがてレーニエはフランス企業への課税を了承。しかしド・ゴールは、モナコ企業にも課税してフランスに収めろと脅し同然の要求を突き付ける。レーニエは行き場の無い怒りをグレースにぶつけ、映画界からの引退を迫る。結婚式の記録映像を見ながら離婚を考え、涙にくれるグレースの傍らで優しく見守る神父は「人生最高の役を演じるためにモナコに来たはずだ」と諭す。数日後、神父はグレースを外交儀礼の専門家であるデリエール伯爵(デレク・ジャコビ)の元へ連れて行く。モナコの歴史、王室の仕組み、完璧なフランス語、公妃の作法、正しいスピーチ――グレースの夏は厳しい特訓で過ぎていった。9月22日、レーニエはヨーロッパ諸国の代表に軍事支援を募るサミットを開くが、ド・ゴール暗殺未遂の報せが入り失敗。さらに王室内の裏切り者が判明し、レーニエとグレースは深い衝撃を受け、二人は絶望の中で長らく眠っていた互いの愛を確認し合う。翌朝、グレースはヒッチコックに電話をかけて出演を断り、国際赤十字の舞踏会開催を発表、世界中の要人に招待状を発送する。1962年10月9日、侵攻を目前にモナコで開かれたパーティは大変な盛況を博し、そこにはド・ゴールの姿もあった。マリア・カラスの魂を震わす歌の後、主催者のグレースが舞台に上がり、この日のために練り上げた一世一代のスピーチが始まった……。(Movie Walkerより)


女優からプリンセスへ、お伽話を体現した女性というイメージしかなかったグレース・ケリーという人の素顔を垣間見たような気になる作品です。あくまでフィクションということですが、それでも彼女が何を思い何を成し遂げたのかに触れたような錯覚に陥りました。

ニコール・キッドマンが演じているのですが、個人的にはちょっとイメージが違うなぁ。
でも「クールビューティ」と称されたというグレースの気品を体現するには彼女は適任かも

モナコでグレースが心を許せるのは、大公を除くとごくごく限られた人しかいません。
タッカー神父は二人の結婚を後押しした人物のようです。何かにつけ悩みを相談するグレースは、神父に父親の庇護を重ねていたのかもと思いました。

秘されていた女優復帰の件が宮殿側から漏れて苦境に立たされた彼女が、実家の母に電話するシーンで、彼女が肉親の愛情に飢えていたのではと推察される会話があります。世間体を気にする母親に「普通の母娘の会話がしたかった」と電話を切るグレースの孤独が胸に迫りました。女優として成功し、シンデレラストーリーを生きても、彼女の心は満たされませんでした。彼女が本当に欲していたのは名声や豪華な暮らしではなく、自分を必要とし愛してくれる存在だったからです。

広すぎる宮殿で、いつしかすれ違っていく大公との距離に悩むグレースに、神父はデリエール伯爵を紹介します。自分の置かれた立場で輝くために成すべきことをせよという神父の配慮です。批判よりまず受容せよという教えでもあるのかも

さて、義姉のアントワネットは家族として優しく接してくれていましたが、実は彼女こそがド・ゴールと結託し政情不安に陥れた張本人
スパイとして真っ先に疑われた、公妃のお目付け役?のマッジはアントワネットの計画を知り証拠を集めていたという筋書きで、実は味方でした
義姉の裏切りを知り、証拠を突きつけるグレースは迫力がありました。

窮地に陥ったモナコを救うために彼女の取った秘策とは、舞踏会の主催です。
赤十字の名目でド・ゴールを含む各国指導者を招いた舞踏会の場で、彼女は完璧な公妃を演じきります。彼女のスピーチにド・ゴールその人ですら感銘を受けるのです。

シンプルに言えば、自分の生き方に迷っていた女性が、進むべき道を見出して踏み出していく姿を描いた物語なのですが、そこに一国の危機や宮殿の中の陰謀のサスペンスを加え、華やかな舞踏会や美しい衣装で魅せてくれます。

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