杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

ペテロの葬列

2014年10月29日 | 
宮部みゆき(著)  集英社(発行)

今多コンツェルン会長室直属・グループ広報室に勤める杉村三郎はある日、拳銃を持った老人によるバスジャックに遭遇。事件は3時間ほどであっけなく解決したかに見えたのだが―。しかし、そこからが本当の謎の始まりだった!事件の真の動機の裏側には、日本という国、そして人間の本質に潜む闇が隠されていた!あの杉村三郎が巻き込まれる最凶最悪の事件!?息もつけない緊迫感の中、物語は二転三転、そして驚愕のラストへ!『誰か』『名もなき毒』に続く杉村三郎シリーズ待望の第3弾。 (「BOOK」データベースより)

TVドラマ化の前に図書館で予約してようやく順番が回ってきました
既にドラマ見ちゃったので、ページをめくるたびにドラマのシーンとリンクしてしまうのですが、ほぼ原作通りの展開だったのだなぁと改めて確認してちょっと嬉しかったりします
(原作ではムロツヨシさんの役はないのですね。)

バスジャックの犯人の老人が提案した「慰謝料」が実際に送られてきたことで、人質だった7人それぞれの心にも波風が立ちます。「慰謝料」を受け取るべきか、警察に届けるべきかを相談した彼らは、まずは「慰謝料」の送り主や、犯人の老人の真意を探ることにします。そして佐藤と名乗った老人が「暮木一光」という名前でひっそり暮らしていたこと、さらに彼が昔マルチ詐欺商法の指南役と関わっていたことなどが判明します。老人が名指しした「三悪人」とは詐欺商法の被害者でありながら加害者でもある人物たちでした。詐欺の首謀者たちが捕まっても、彼らのような存在はお咎めなしの現実に、老人は一矢報いたかったのでしょうか。

しかし事件の波紋は人質にも及びます。坂本君は自らも詐欺商法に加担してしまっていたことを知って絶望のあまり、老人をなぞってバスジャック事件を起こしてしまうのです。
杉村自身も、今多コンツェルン本社から異動してきた井手正夫によるパワハラ・セクハラ問題に振り回され、以前のトラブル(名もなき毒参照)がきっかけで知り合った私立探偵・北見一郎のかつての依頼人・足立則生が容疑者となった殺人事件に関わるなど、家庭や本業そっちのけの状態が続きます。

こんな状態では、妻の菜穂子が浮気に走っても同情の余地がありそうですが(実際ドラマではそのような心理状態を示唆していましたが)、原作では三郎が自分と結婚したことで自由を失っていく様に耐えられなくなった印象を受けました。夫を解放し自由を与えるため、また自身の守られるだけの生き方を変えるために橋本を利用したとも言えます。それではあんまりよね~橋本さん
そして、意外なほどあっさりと離婚を選んだ杉村にちょっと幻滅
それほどまでに超えられない格差婚だったってのも何だかな~~。
会社でも今多家の親族にも微妙な立場だった杉村の心の闇も深かったってことかしらん?

もし続編があるなら、杉村は地方の小さな出版社で仕事しながら北見のような探偵をしてそうだね

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