杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅

2014年10月25日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2014年2月28日公開 アメリカ 115分

100万ドルが当たったという、いかにも古典的でインチキな手紙をすっかり信じてしまったウディ(ブルース・ダーン)は、モンタナからはるか遠く離れたネブラスカまで歩いてでも賞金を取りに行くと言ってきかない。大酒飲みで頑固なウディとは距離を置いていた息子のデイビッド(ウィル・フォーテ)だが、そんな父親を見兼ねて無駄骨と知りながらも、父を車に乗せて4州をまたぐ旅に出る。途中立ち寄ったウディの故郷で賞金をめぐる騒動に巻きこまれる中、デイビッドは両親の意外な過去を知る。


頑固者の父親と、そんな父と距離を置いて生きてきた息子が、旅を通して心を通わせるロードムービーです。

ウディはどうも呆けが入ってきているように見えます。そんな夫に妻のケイト(ジューン・スキッブ)は文句ばかり。兄のロス(ボブ・オデンカーク)は母親の味方です。
昔から大酒のみで家族に迷惑をかけていたウディに同情の余地はないように思えるのですが、何故か疎遠(とはいえ、父親が迷惑をかけるたびに引き受けに行く程度には家族仲は悪くはないようです)にしていたデイビッドが彼を連れてネブラスカまで行くと言い出すのです。それはデイビッド自身が自らの生き方に自信を持てずにいたことと無関係ではなさそうです。彼は同棲していた彼女に別れを切り出され、仕事に情熱も持てず、今の環境に窒息しそうになっていたのでしょう。無駄とわかりきっているネブラスカ行きに同行するのも、そんな日常からの逃避的要素の方が強かったのではないかしら。

旅の途中にある両親の故郷の田舎町に住むマーサ伯母さん( マリー・ルイーズ・ウィルソン)の家に寄った二人を追いかけてケイトとロスもやってきます。
しかしこのオヤジ、ちょっと目を離すとすぐに飲んだくれるし、秘密にしろと言われても「100万ドル当たった」と吹聴して騒ぎを巻き起こすわでロクな親父じゃない
マーサ一家(彼女の息子たちはオツムの弱そうな腕力バカ)はウディの話を真に受けて、賞金を分けろと迫ります。それはウディの友人で共同経営者だったエド・ピグラム(ステイシー・キーチ)も同様です。昔散々ウディの人の好さに付け込んだのに、まだたかろうとするなんてサイテー
母のケイトのキャラがまた強烈で、昔自分がいかにモテたかを息子たちに赤裸々に自慢するその神経が理解できないぞその姿は老醜そのものですが、きっと本人は露ほどもそれが品性に欠けている行為だとは思ってないんだろうなぁ

それでも、真実を知ってあざ笑ったエドに一発お見舞いし、あくまでネブラスカに行こうとするウディを結局は送っていくデイビッドや、マーサたちに小気味よい啖呵を切り倒れたウディにそっとキスするケイトの姿を見ると「あぁ家族なんだなぁ」と何だかホッとするのです。
コンプレッサーを借りたまま返さないエドの家の納屋からそれを盗み出そうとする兄弟の姿に笑い、そこが別人の家だとのほほんとのたまう両親にのけ反り・・この笑いのセンスが作品の持ち味かも/hand_goo/}

手紙にあった住所を訪れて「ハズレ」を確認したウディはそれで気が済んだのか大人しく帰ろうとします。旅の中で、父の本当の「夢」(息子たちに何かを遺してやりたかった)を知ったデイビッドは彼のためにトラックとコンプレッサーを購入し、故郷の町の道を(免許を取り上げられている)父親に運転させます。頭には景品にもらった「当選者」の帽子を被った姿でねそれは父のプライドを守る彼なりの最高の親孝行なのでした。

彼らにとって、この旅は決して無駄ではなかったのですね

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