2014年7月12日公開 104分
かつて日本のハリウッドと呼ばれた京都・太秦。斬られ役一筋の大部屋俳優香美山(福本清三)は、大御所の尾上(松方弘樹)の時代劇も打ち切られて出番がない日々が続く中、駆け出し女優・さつき(山本千尋)から殺陣の指導を請われる。「女優さんに立ち回りの役はありまへんで」と断るが、さつきの熱意に負けて師弟関係となる。
やがて時代劇でさつきはチャンスを掴んでスター女優となっていった。時が経ち、さつき主演の大作時代劇の撮影が行われることになるが、そこには香美山もお世話になった人たちの姿はかった。いつしか大切なものを見失っていたことに気づいたさつきは、体調を崩して引退し故郷で余生を送っていた香美山のもとを訪れて復帰を懇願し、頑なに復帰を断る香美山にさつきは稽古を申し込む。一ヶ月後。香美山は撮影所にいた。最期に尾上を刀を交わすため、そして愛弟子のさつきに斬られるために・・・。
沼兼一演:本田博太郎撮影所の演技課長。香美山たち大部屋俳優と深い信頼関係にある。川島明彦演:合田雅吏昔ながらの時代劇を毛嫌いしている、俳優出身のプロデューサー。東龍二郎演:峰蘭太郎撮影所所属の殺陣師。時代劇の制作本数減少に伴い引退する。栗塚旭演:栗塚旭(本人役)新選組副長・土方歳三を演じる時代劇俳優。太田邦彦演:木下通博香美山と同じくベテランの斬られ役俳優。松本雄策演:柴田善行若手の大部屋俳優だったが、俳優の道を諦めてラーメン屋に転職する。野々村たけし演:多井一晃香美山に憧れる若手俳優。天野達也演:中島ボイル大部屋俳優だったが、早々に京都を離れ東京を目指す。田村鮎奈演:川嶋杏奈美鶴の娘。料理屋を手伝ってはいるが、時代劇には興味がない。工藤淳演:尚玄新感覚の時代劇『ODANOBU』の主演を務めることになったアイドル。時代劇については無知。メグ演 :中村静香工藤の恋人で『ODANOBU』のヒロイン役だったが、トラブルにより降板。さつきに役を譲ることになる。和田シゲル演:市瀬秀和時代劇に無理解な映画監督。香美山奈那子演 :海老瀬はな香美山の亡き妻。若き日の香美山を病床から励ます。北村京子演:和泉ちぬ撮影所所属の床山。山崎奈緒演:穂のか先代 尾上清十郎の付き人演:仁科貴風間トオル演:風間トオル(本人役)中島貞夫演:中島貞夫(本人役)ベテラン映画監督。物語終盤で、劇場版『江戸桜風雲録』の監督を務める。
時代劇全盛時代を支えてきた京都・太秦を舞台に、時代劇を愛する人々の現在を描いた人間ドラマです。
TVをつければ普通に毎日時代劇ドラマが流れていたあの頃から時は流れ、大人になって数少なくなってしまった時代劇を見るたび映る斬られ役の人の顔を見ただけで「あ、この人は斬られるな」とわかってしまうほど顔馴染みになった福本さん。「5万回斬られた男」と呼ばれる彼が主役の映画が出来たと聞いてこれは絶対観たいと思っていました。
脇を固めるのは、松方弘樹や小林稔侍、本田博太郎に萬田久子ら太秦ゆかりのスターたちが勢揃いで華を添えています。
ドキュメンタリーのように、香美山の日常が映し出されていきます。
昔ながらの時代劇の製作が減り、若者向けの奇抜な時代劇(もどき)が作られるようになる中、時代劇に愛着をもたない若手のプロデューサーや監督に、エキストラ扱いされても黙々と役を演じる香美山ですが、仲間を庇って若手監督に詰め寄り、その気迫に圧倒された監督が後ずさってしまう場面では、彼の役者としての矜持が伝わってきました。
この件で映画の仕事を干され、映画村のショーに出るくらいしか仕事が回って来なくなっても淡々と受け入れる姿には哀愁が漂っていました。香美山がさつきに稽古を付けたのはそんな頃ですが、彼女の中に往年の名女優たちの面影を感じたことも理由の一つですね。
さつきが代役から主演女優への足掛かりをつかんだ長回しの殺陣の撮影で何度もNGを出した時、思わず助言を与えるのですが、このシーンがとても
でした。
鬘を脱いだ時の香美山は物静かで穏やかな人です。撮影所の俳優が集まる小料理屋の女将・鶴(萬田久子)は往年の大女優だった女性。駆け出しの頃の香美山の憧れの人
さつきは彼女に似ているのよね
先代 尾上清十郎(小林稔侍)に「斬られ方がうまい」と褒められ愛用の木刀を贈られてから、斬られ役一筋で生きてきた香美山を支えたのは亡き妻や仲間たちでもあります。さつきに大女優の素質を見出した彼は、件の木刀を彼女に贈りますが、スターになるうち撮影所の稽古場に置き忘れたままになっていました。久しぶりに撮影所に戻ったさつきが、自分の見失ったものに気付いてその木刀を再び手に取るシーンも
でした。
香美山が引退を決意したのは自分の腕が殺陣に耐えられなくなってきたからです。そんな彼が再び撮影所に戻ってきたのは、以前尾上と交わした約束と愛弟子のさつきの役に立ちたいという思いからだったのでしょう。
尾上との殺陣の前半で刀を取り落としてしまった香美山の姿を見て、後半はカットしようと言い出した監督の気持ちを変えさせたのは尾上とさつきの香美山と最後まで演じたいという熱い気持ちでした。それに応えて見事な殺陣を披露した香美山の姿に意地と誇りを感じました。
何というか・・いぶし銀のような作品です
かつて日本のハリウッドと呼ばれた京都・太秦。斬られ役一筋の大部屋俳優香美山(福本清三)は、大御所の尾上(松方弘樹)の時代劇も打ち切られて出番がない日々が続く中、駆け出し女優・さつき(山本千尋)から殺陣の指導を請われる。「女優さんに立ち回りの役はありまへんで」と断るが、さつきの熱意に負けて師弟関係となる。
やがて時代劇でさつきはチャンスを掴んでスター女優となっていった。時が経ち、さつき主演の大作時代劇の撮影が行われることになるが、そこには香美山もお世話になった人たちの姿はかった。いつしか大切なものを見失っていたことに気づいたさつきは、体調を崩して引退し故郷で余生を送っていた香美山のもとを訪れて復帰を懇願し、頑なに復帰を断る香美山にさつきは稽古を申し込む。一ヶ月後。香美山は撮影所にいた。最期に尾上を刀を交わすため、そして愛弟子のさつきに斬られるために・・・。
沼兼一演:本田博太郎撮影所の演技課長。香美山たち大部屋俳優と深い信頼関係にある。川島明彦演:合田雅吏昔ながらの時代劇を毛嫌いしている、俳優出身のプロデューサー。東龍二郎演:峰蘭太郎撮影所所属の殺陣師。時代劇の制作本数減少に伴い引退する。栗塚旭演:栗塚旭(本人役)新選組副長・土方歳三を演じる時代劇俳優。太田邦彦演:木下通博香美山と同じくベテランの斬られ役俳優。松本雄策演:柴田善行若手の大部屋俳優だったが、俳優の道を諦めてラーメン屋に転職する。野々村たけし演:多井一晃香美山に憧れる若手俳優。天野達也演:中島ボイル大部屋俳優だったが、早々に京都を離れ東京を目指す。田村鮎奈演:川嶋杏奈美鶴の娘。料理屋を手伝ってはいるが、時代劇には興味がない。工藤淳演:尚玄新感覚の時代劇『ODANOBU』の主演を務めることになったアイドル。時代劇については無知。メグ演 :中村静香工藤の恋人で『ODANOBU』のヒロイン役だったが、トラブルにより降板。さつきに役を譲ることになる。和田シゲル演:市瀬秀和時代劇に無理解な映画監督。香美山奈那子演 :海老瀬はな香美山の亡き妻。若き日の香美山を病床から励ます。北村京子演:和泉ちぬ撮影所所属の床山。山崎奈緒演:穂のか先代 尾上清十郎の付き人演:仁科貴風間トオル演:風間トオル(本人役)中島貞夫演:中島貞夫(本人役)ベテラン映画監督。物語終盤で、劇場版『江戸桜風雲録』の監督を務める。
時代劇全盛時代を支えてきた京都・太秦を舞台に、時代劇を愛する人々の現在を描いた人間ドラマです。
TVをつければ普通に毎日時代劇ドラマが流れていたあの頃から時は流れ、大人になって数少なくなってしまった時代劇を見るたび映る斬られ役の人の顔を見ただけで「あ、この人は斬られるな」とわかってしまうほど顔馴染みになった福本さん。「5万回斬られた男」と呼ばれる彼が主役の映画が出来たと聞いてこれは絶対観たいと思っていました。

ドキュメンタリーのように、香美山の日常が映し出されていきます。
昔ながらの時代劇の製作が減り、若者向けの奇抜な時代劇(もどき)が作られるようになる中、時代劇に愛着をもたない若手のプロデューサーや監督に、エキストラ扱いされても黙々と役を演じる香美山ですが、仲間を庇って若手監督に詰め寄り、その気迫に圧倒された監督が後ずさってしまう場面では、彼の役者としての矜持が伝わってきました。
この件で映画の仕事を干され、映画村のショーに出るくらいしか仕事が回って来なくなっても淡々と受け入れる姿には哀愁が漂っていました。香美山がさつきに稽古を付けたのはそんな頃ですが、彼女の中に往年の名女優たちの面影を感じたことも理由の一つですね。

さつきが代役から主演女優への足掛かりをつかんだ長回しの殺陣の撮影で何度もNGを出した時、思わず助言を与えるのですが、このシーンがとても

鬘を脱いだ時の香美山は物静かで穏やかな人です。撮影所の俳優が集まる小料理屋の女将・鶴(萬田久子)は往年の大女優だった女性。駆け出しの頃の香美山の憧れの人


先代 尾上清十郎(小林稔侍)に「斬られ方がうまい」と褒められ愛用の木刀を贈られてから、斬られ役一筋で生きてきた香美山を支えたのは亡き妻や仲間たちでもあります。さつきに大女優の素質を見出した彼は、件の木刀を彼女に贈りますが、スターになるうち撮影所の稽古場に置き忘れたままになっていました。久しぶりに撮影所に戻ったさつきが、自分の見失ったものに気付いてその木刀を再び手に取るシーンも

香美山が引退を決意したのは自分の腕が殺陣に耐えられなくなってきたからです。そんな彼が再び撮影所に戻ってきたのは、以前尾上と交わした約束と愛弟子のさつきの役に立ちたいという思いからだったのでしょう。
尾上との殺陣の前半で刀を取り落としてしまった香美山の姿を見て、後半はカットしようと言い出した監督の気持ちを変えさせたのは尾上とさつきの香美山と最後まで演じたいという熱い気持ちでした。それに応えて見事な殺陣を披露した香美山の姿に意地と誇りを感じました。

何というか・・いぶし銀のような作品です
