2016年12月10日公開 145分
主要燃料が石炭だった当時から、石油の将来性を見抜いていた国岡鐡造(岡田准一)は、北九州・門司で石油業に乗り出すが、その前には国内の販売業者や欧米の石油メジャーなど、常に様々な壁が立ち塞がり行く手を阻んだ。しかし鐡造は、どんなに絶望的な状況でも決して諦めず、それまでの常識を覆す奇想天外な発想と型破りの行動力、何よりも自らの店員(=部下)を大切にするその愛情で、新たな道を切り拓いていった。その鐡造の姿は、敗戦後の日本において、さらなる逆風にさらされても変わることはなかった。そしてついに、敗戦の悲嘆にくれる日本人に大きな衝撃を与える事件が発生する。石油メジャーから敵視され、圧倒的な包囲網により全ての石油輸入ルートを封鎖された鐡造が、唯一保有する巨大タンカー「日承丸」を、極秘裏にイランに派遣するという狂気の行動に打って出たのだった。イランの石油を直接輸入することは、イランを牛耳るイギリスを完全に敵に回すこと。しかし、イギリスの圧力により貧困にあえぐイランの現状と自らを重ね合わせた鐡造は、店員の反対を押し切り、石油メジャーとの最大の戦いに臨む。果たして、日承丸は英国艦隊の目をかいくぐり、無事に日本に帰還することができるのか?そして鐡造は、なぜ海賊とよばれたのか?その答えが明らかになる・・。(チラシより)
百田尚樹の同名小説の映画化です。国岡鐵造のモデルは出光興産創業者の出光佐三氏です。
店を存続させ、店員を養うために、漁師相手に船で燃料を売りにいくような無茶な商売をしたことから「海賊」と呼ばれるようになった国岡は、当然組合からも嫌われています。それが尾を引いて、戦後に組合から石油を回してもらえず窮地に陥るのですが、アメリカから突き付けられた難題を引き受けることで脱します。それは海軍燃料タンクの底に残った油の回収という過酷な作業でした。暗く悪臭のするタンク内で、泥混じりの大量の油を前に怖気づく店員たちでしたが、「戦争に比べたらなんのこれくらい」と作業に臨む店員たち・・いや、それってかなり危険だから!現場を訪れた国岡も率先して作業に臨んだりして士気は嫌でも高揚します。スポ根ものと勘違いしそうだぞ。
後半では、拿捕される危険を承知でタンカーをイランに派遣しますが、事前に知っていたのは船長(堤真一)だけで、船員たちは航海中に行先がイランであることを告げられるのです。そこで「嫌」って言えないでしょ、フツー危険な状況での連帯感や高揚感で一丸となる図は極めて危険な臭いがします。もちろん、国のためにという行為自体を非難するつもりはありませんが、それでも個人を犠牲にする姿勢に危うさを感じてしまいました。
彼らの団結を象徴するような音楽と歌が効果的に挿入されますが、これにも少し怖さを感じました。一種の軍歌みたいでね
国岡の人柄に惹きつけられて、冷静沈着な補佐役の柏井(野間口徹)、東雲(吉岡秀隆:後の出光興産三代目社長の石田正賓がモデル)、元漁師の長谷部(染谷将太)、元GHQの通訳・手島(鈴木亮平)などが集まります。
その一方で、国岡の妻・ユキ(綾瀬はるか)は子供が出来ないことや国岡が仕事一筋で家庭に目を向けない孤独から彼の元を去ります。
国岡は、日本の復興のために突き進んだ人のようですが、その行動は犠牲や危険を伴うものに見えます。カリスマには違いないけれど、熱に浮かされた狂気を孕んだ怖さも感じました。壮年の鐡造を演じる岡田君は上手かったけれど、国岡自身は好きになれなかったな~~