杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

素晴らしきかな、人生

2017年09月10日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2017年2月25日公開 アメリカ 94分

ニューヨークにある広告代理店の代表を務めるハワード(ウィル・スミス)は、最愛の娘を亡くしたことで深い喪失感から立ち直れずにいた。完全に人生を見失い、自分の殻に閉じこもって仕事も手につかないハワードを心配した同僚たちはある計画を思いつく。そしてある日、ハワードの前に年代も性別も異なる3人の奇妙な人が現れる。彼らとの出会いにより、ハワードの人生に徐々に変化が起こり始め・・。 

 

クリスマスシーズンのNYが舞台となれば、ハートウォーミングストーリーが定番ですが、この作品も、最愛の娘を喪い人生のどん底で苦しむ男が、奇妙な舞台俳優たちとの出会いを通して悲しみを受け入れ、もう一度心を立て直していく筋書となっています。

娘の死という現実を受け入れられないハワードは、「時間」「愛」「死」に宛てた手紙を書いて投函します。受け取る相手のいないこの手紙を書くこと自体が彼なりの悲しみを癒す手段の一つのようです。

彼が仕事から背を向けているせいで、会社の経営状態は悪化。共同経営者のホイット(エドワード・ノートン)は会社の買収を受け入れさせようと部下のクレア(ケイト・ウィンスレット)やサイモン(マイケル・ペーニャ)とある計画を立てます。それは彼が偶然出会った舞台俳優たちに「時間」「愛」「死」を演じてもらい、ハワードが悲しみを受け入れ、会社のことをちゃんと考えてもらえるようにすることでした。彼らは「死」ブリジッド(ヘレン・ミレン)「時間」ラフィ(ジェイコブ・ラティモア)「愛」エイミー(キーラ・ナイトレイ)を受け持つことにします。

ハワードと会社を心配する三人にもそれぞれ抱えている事情があります。ホイットは、不倫がばれて妻と離婚し、ママを傷つけたと娘に嫌われています。サイモンは持病が再発したことを仲間にも愛する妻にも打ち明けられずにいます。クレアは仕事一筋で婚期を逃し、せめて子供が欲しいと思って精子バンクを検索しますがそろそろ時間切れの状態で迷っています。そんな彼らの背中を俳優たちのアドバイスが押します。サイモンにはブリジットが妻に打ち明けなさいと言い、ホイットにはエイミーが娘と向き合いなさいと言い、クレアにはラフィが子供を持つ方法は一つじゃない(実子だけが選択肢じゃない)と言います。

舞台俳優たちが演じるのは人間ではない(死と時間と愛ですからね)ので、当然周囲の人間にも彼らが見えないという設定です。彼らとハワードが会話する時の様子も最初は周囲に誰もいないか計画を知っている三人の誰かだけがいる状態ですが、後半になって電車内や街の雑踏での会話はちょっと不自然だなぁと思い、ビデオの再生に至ってはこんな風に編集できるなんて凄すぎる!!と感心していたら、最後に驚きの真実が!!わかってみると納得なんですよね

でも、ハワードの立ち直りのきっかけは彼らだけではありませんでした。最初は家の外で、後に中に入っていくカウンセリング・グループの集会のホスト役の女性マデリン (ナオミ・ハリス)との交流も少なからぬ影響を与えています。しかしここでもアッと驚く事実が最後に明かされます。わかってしまえば、彼がなぜ夜ごと彼女の家まで自転車を走らせたのか、どうしてマデリンに娘の名を言えなかったのかすごく腑に落ちてしまうのです。そして娘の名前を言えた時、ハワードの時計はやっとその針を進めることができたのですね。病院で娘の死を受け入れたマデリンに言葉をかけた隣に座った女性の正体がわかり、全てが繋がっていたと思えたラストもでした。


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