2016年10月21日公開 イギリス 109分
イギリス人大学教授ペリー(ユアン・マクレガー)と妻のゲイル(ナオミ・ハリス)は、モロッコで休暇中にロシアンマフィアのディマ(ステラン・スカルスガルド)と偶然知り合う。ディマから組織のマネーロンダリングの情報を聞いたペリー夫妻は、1つのUSBメモリをMI6に渡してほしいとディマに懇願され、突然の依頼に困惑するが、ディマと彼の家族の命が狙われていると知り、その依頼を仕方なく引き受けてしまう。それをきっかけに、ペリー夫妻は世界を股にかけた危険な亡命劇に巻き込まれていく。(映画.comより)
元MI6という経歴を持つ作家ジョン・ル・カレの同名スパイ小説の映画化です。ロシア・モロッコ・イギリス・フランス・スイスを舞台に友情や裏切り、復讐、そして愛が複雑に絡み合う展開はスリリングで一気に魅せてくれます。
冒頭で描かれるのは、ロシアンマフィアの抗争を思わせる殺しのシーン。17歳の姉の電話相手は年の離れた妹のようです。舞台はモロッコに飛び、夫婦関係が上手くいってない様子のペリー夫妻が登場。一見何の関係もなさそうですが、夫妻が入った高級レストランでディマと出会ったことから物語は動き出します。初めから強引なディマの誘いを断り切れず一緒に飲みに行くことになったペリーは、ディマから頼まれごとを引き受ける羽目に ここで、冒頭の「妹」が双子の姉妹であることや何故その両親や姉が殺されたのかが明かされるのです。
ただメモリーを渡すだけのはずだったペリーですが、下院議員ロングリング(ジェレミー・ノーサム)の悪事を暴いて失脚させたいMI6のヘクター(ダミアン・ルイス)の思惑が絡んで、思わぬ方向に。 民間人を巻き込んで良いのかと疑問を持った部下のルークとオーリーも、上層部の了承済と聞かされ手伝わされます。
(彼らが名誉の死を迎えることになるのは残念でした。
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ペリーの妻のゲイルは有能な弁護士。初めは面倒なことに巻き込まれたくないと拒否していた彼女も、人道的な見地から協力を了承します。ディマがペリーを見込んだのはペリーの正義感を垣間見たことが大きいようですが、ゲイルもまた同様に困っている人を見捨てられない性格のようです。
ディルと彼の家族を救うために、ヘクターの指示のもと、夫妻は偶然を装いディルに接触。ロシアンマフィアのプリンス(グリゴリー・ドブリギン)やその一味の目を掠めて彼らの逃亡に手を貸します。いざという時はゲイルの方が肝が据わって見えました危険を共にすることで夫妻の仲が修復されていくのは「吊り橋効果」かしらん
ヘクターが独断で動いていることを知っても最後まで協力するのね。家族の脱出劇の舞台はスイスのアインシュタイン・ミュージアムですが、その内部が見られたのが興味深かったです。
ヘクターがロングリングの家を訪ねたり、ディルの娘のナターシャが恋人のアンドレイ(ロシアンマフィアの一員)に電話したりしなければ隠れ家は突き止められなかったのにな~とか思ってしまうけど、マフィア相手に素人のペリーは大奮闘して見事撃退しちゃうんですから
ヘリ搭乗の際、ペリーを残した時点で何かある?と思ったら・・そうきましたか
これで事件は闇に葬られるのかと思ったら、ディルは情報を遺していました。ディマとペリーの出会いの時にその伏線はちゃんと仕込んであったんですねそして、今回もその情報を運んだのはペリーでした。
ディマ自身も善人というわけではないので(ロシアンマフィアの資金洗浄係)、彼の結末については妥当と思えますが、家族は守られたわけです。
ディマがプリンスの「銃」にまつわる話を遮り、その子供時代のエピソードを辛辣に皮肉るシーンが秀逸でした。静かな場面ですが内面で火花が飛び散っている感じが怖かった~