2017年10月21日公開 アメリカ 115分
天才的な操縦技術を誇り、民間航空会社のパイロットとして何不自由ない暮しを送っていたバリー・シール(トム・クルーズ)の元に、ある日CIAのエージェント・シェイファー(ドーナル・グリーソン)がスカウトに現れる。CIAの極秘作戦に偵察機のパイロットとして加わる事となったバリーは、その過程で伝説的な麻薬王パブロ・エスコバルらと接触し、麻薬の運び屋としてもその才能を見せ始める。ホワイトハウスやCIAの命令に従いながら、同時に違法な麻薬密輸ビジネスで数十億円の荒稼ぎをするバリー。しかしそんな彼の背後には、とんでもない危険が迫っていた…。(公式HPより)
1970年代、大手航空会社の天才パイロットとして活躍し、その後CIAから極秘密輸作戦のパイロットにスカウトされ、さらに麻薬の密輸で莫大な財産を築いた実在の人物=バリー・シールの生涯の映画化ですが・・・これ、邦画タイトル間違えてない?アメリカをはめたんじゃなくてアメリカにはめられたような気がするんですが一文字違いでえらい違いですけど
たしかに彼は麻薬密輸ビジネスに手を染め巨額の富を築いたけれど、そのきっかけは国のスパイとしてスカウトしたことにあるんですから
CIAだけじゃなく、DEA(麻薬取締局)やホワイトハウスまでが目的達成のために彼を利用し、用済みとなるとあっさり放り出します。何だか国の操り人形みたいで可哀想な気も
ただし、バリーもただ言われるままに操られていたわけじゃないのね
CIAとパナマの独裁者・ノリエガの仲介をするようになったバリーはCIAの目を盗んでメデジン・カルテルの指示でコカインの密輸を請け負うようになります。DEAに目を付けられますが、今度はホワイトハウスのお墨付きでニカラグアの親米反政府組織コントラに武器を密輸し、兵士の訓練のための場所を提供させられます。ここでもバリーはコントラが本気で政府を倒す気がないと察し、武器の横流しを始めるんですね
もうこうなったら金は入る一方。銀行・信託銀行と預けてもまだまだ溢れ、家中に札束の入ったカバンがゴロゴロして庭に埋めてもまだ溢れ・・・
普通、これだけ大金が入ると人は欲望の限りを尽くすものですが、意外なことにバリーはいたってまともな市民でした。桁外れの贅沢をするでもなく、奥さんのルーシー(サラ・ライト)一筋で浮気もせず、子供もきちんと躾ける良き父親です。転がり込んできた義弟のJBときたらろくでなしを絵に描いたような男でしたが、仕事を与えて面倒を見てやります。でも、大金の入ったカバンを見つけたJBはこれを盗んで逃げようとして保安官に捕まってしまうんですね~~。これってけっこうヤバイ状況ですが、それでもバリーはJBを逃がそうとします。(結局麻薬密輸がばれるのを恐れたカルテルに口封じに殺されちゃうんですが)
DEAやFBI、AFTや州警察までもがバリーの逮捕に動きます。四方八方から囲まれての逮捕劇はまさに劇画調。絶体絶命のピンチですが、ホワイトハウスと取引をして逃れちゃうんですね~~。でもこの取引でメデシン・カルテルを裏切った彼は、報復を恐れて逃げ回ることになります。そもそも、裏切り行為がばれたのは、功を先走ったお偉方がいたから。所詮バリーも捨て駒の一つに過ぎなかったというわけです。
最後は全ての財産を失い、報復を恐れてモーテルを転々としながら、死を覚悟したバリーはこれまでの人生を振り返ってビデオに残します。車のエンジンをかけるとき、義弟の死に様(車に爆弾が仕掛けられていた)が頭に浮かび、毎回祈る思いでキーを回す姿が印象的でした。その際も彼は周囲にいる人々が巻き添えにならないよう気を使っていました。 彼の最期は爆死ではなく銃で撃たれるというものでしたが
密輸や武器の横流しは大罪で、彼は悪人には違いないのですが、バリーにはどこか人を魅了するところがありました。退屈な毎日からほんの少し飛び出して人生を楽しむ筈が、CIAと関わったがために思いがけない波乱が待っていたけれど、それでも彼は大いに楽しんだのだと思います