2018年5月4日公開 116分
妻と温泉地を訪れた初老男性が硫化水素中毒で死亡する事件が発生した。捜査を担当する刑事・中岡(玉木宏)は妻による遺産目当ての計画殺人を疑うが、事件現場の調査を行った地球化学専門家・青江修介(櫻井翔)は、気象条件の安定しない屋外で計画を実行するのは不可能として事件性を否定。しかし数日後、被害者男性の知人が別の地方都市で硫化水素中毒により死亡する事故が起きる。新たな事故現場の調査に当たる青江だったが、やはり事件性は見受けられない。もし2つの事故を連続殺人事件と仮定するのであれば、犯人はその場所で起こる自然現象を正確に予測していたことになる。行き詰まる青江の前に謎の女・羽原円華(広瀬すず)が現われ、これから起こる自然現象を見事に言い当てる。彼女は事件の秘密を知る青年・甘粕謙人(福士蒼汰)を探しており、青江に協力を頼むが……。(映画.comより)
東野圭吾の同名小説を三池崇史監督が実写映画化したサスペンスミステリーです。竜巻などの自然現象の描写はスクリーンで見応えありました。
といっても普通の人間を遥かに超えた能力を有する者の犯した殺人ですから、どちらかというとSFに近い内容。それゆえ謎解きの部分は重視されていない感じ 原作は未読なので比較できないですが、8年前の甘粕家の事件の際の犯人のトリックとか、今回の共犯者と、どのように接触したのかとか本筋とは違うけれど気になりました
謙人の父の甘粕才生(豊川悦司)は鬼才の映画監督ですが、己の欲望のためにはどのような犠牲も厭わない、そのあまりにも身勝手な考え方に怖気がします。(三池監督も鬼才と言われる人のようですが、良い意味で何か通じるところがあったりして)同じように人類の未来のためという名目で謙人や円華に手術を施した羽原(リリー・フランキー)の方がまだしも人間性が残っている気がしました。
謙人は二つの殺人に直接は手を下していませんが、彼らを死に導いたのは紛れもない事実です。父親への復讐は円華や青江に阻まれますが、後にこの父親は自殺したとされます。彼の自殺の理由は自らの犯罪を悔いたのでは決してなく、望んでいた世間の評価が得られないことへの絶望だったのだと推察します。
謙人が父親と対峙する場面は、舞台劇のようでした。自分で手を下さず自然現象を利用するため受け身の謙人に対して、銃は突き付けるわ、出来損ないの家族と言い放つはで、まさに悪魔の様相の父親。謙人の顔を覆うのは絶望か静かな怒りの炎か哀しみなのか・・・この時の福士君、「HIGH&LOW」シリーズの窪田君演じるスモーキーに雰囲気がとても似てます
それにしても青江君は事件の解決にさほど役立っていたようには見えなかった円華が過去のトラウマ(母親が竜巻で命を落としたのは自分の我儘が原因と自分を責めている)を克服するのには一役買ってはいたけどね
中岡刑事に至っては結局事件の真相に辿り着いても逮捕も立件もできず終いで中心人物の周囲をウロウロしただけの感がありました。円華の監視役の武尾(高嶋政伸)も然りです。
謙人たちの存在は公にできないので、事件そのものも国の圧力で闇に葬られてしまいます。ありそうで恐いぞ
未来をも見通せる彼らが、絶望ではなく希望を持って生きていける世の中であって欲しいと思ってしまいます。