杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

それだけが僕の世界

2019年06月16日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2018年12月28日公開 韓国 120分

かつてWBCウェルター級東洋チャンピオンとして、華々しく脚光を浴びたプロボクサー=ジョハ(イ・ビョンホン)。しかし40歳を過ぎた今は、チラシ配りなどで生活費を稼ぎネットカフェに寝泊まりする日々を送っている。そんなある日、17年振りに母親=インスク(ユン・ヨジョン)と再会を果たすジョハ。過去のある出来事から母親との関係は完全に断絶していたが、老いた母から一緒に暮らそうと頼まれ、明日の暮らしにも困っていたジョハは渋々インスクの家に向かう。そこには生まれて初めて会う弟=ジンテ(パク・ジョンミン)が住んでいた。突然の弟の出現に戸惑いを隠せないジョハ。サヴァン症候群だというジンテは、何を言っても「は~い」と無邪気な返事をするばかりで、ジョハの苛立ちは収まらない。一方、長年母に溺愛されて育ってきたジンテは荒っぽいジョハに恐怖心を抱き、食事中もキャッチャーマスクを装着する始末。ちぐはぐな3人の奇妙な共同生活が始まるが、それでも初めて息子2人が揃ってくれたことにインスクは嬉しくて仕方がない。3人の生活が、それなりにうまく回り始めていたのもつかの間。そんな折、インスクが仕事のため1か月近く家を空けるという緊急事態が起こる。かねてよりジンテにピアノの才能を感じていたインスクは、自分が不在の間に開催されるピアノコンクールにジンテを出場させたいとジョハに懇願。当面の生活費とコンクールの賞金につられジンテの面倒を見ることを了承する。インスクが旅立ってすぐ、急にいなくなったジンテをイライラしながら探すジョハ。そこで彼が見たものは、街の広場のピアノで見事なベートーヴェンの演奏を披露するジンテだった。ジンテの周りには人だかりができ、皆が彼の演奏に聴き入っていた。様々な思惑が交錯する中、迎えたコンクール当日。ジンテの演奏は成功するのか?優勝の行方は?しかし運命の歯車は、誰もが予想しない方向へと回り始めていた―。(公式HPより)


落ちぶれた元プロボクサーの兄と天才的なピアノの腕を持つサバン症候群の弟が織り成す兄弟の絆を描いたヒューマンドラマです。昔観た「レインマン」は兄(ダスティン・ホフマン)がサヴァン症候群で、商売の傾いた弟(トム・クルーズ)が兄へ渡る遺産目当てに一緒に暮らすうちに変わっていくんでしたっけね 展開としては似たようなもの・・・というか、状況設定を変えただけじゃん 悪くはなかったけど。

夫の暴力に耐えかねて自分を置いて家を出て行った母への恨みを抱えていたジョハですが、心の底では母の愛情を求めていたんですね 障害があるとはいえ、弟のジンテは母の愛情をたっぷり注がれて育っていて、もやっと感が拭えない気持ちは当然でしょう。母に仕事で家を空けると言われ渋々ジンテの面倒を見ることを引き受けたジョハですが、一緒に暮らすうちにジンテの純粋さや人の良い笑顔がジョハの頑なだった心を和らげていきます。特にジンテのピアノの演奏を聴いてからはね

ジンテのためにTシャツを買ってきたのに自分の買い物で弟から目を離したとか、チラシ配りを手伝わせた(本当は家でゲームとピアノばかりのジンテを外に連れ出したかったのだけどね)とか、一方的に母に責められたり、車に轢かれそうになった時も当たり屋扱いされたり・・・ジョハのぶっきらぼうで愛想のない態度は、しばしば誤解を招きます これじゃぁひねくれるのも仕方ない でもそんな時もジンテのピアノが心を解きほぐしてしまうんですね

車を運転していたのはジンテの憧れのピアニストでしたが、彼女は事故に遭って義足になり、それ以来ピアノが弾けずにいました。でもジンテの演奏を聴いて、またピアノに向かうことができるんですね コンクールでは彼女の模倣だと見なされ賞を逃すのですが、例え模倣でも聴衆の心を打ったのは事実。娘が再びピアノを弾いたことに感動した母親の強い推薦もあり、ジンテは発表会に特別参加を認められます。

実はインスクは末期癌で、仕事ではなく入院のため家を空けたのでした。ジョハがそのことを知った時には死期が迫っていました。病室でもインスクはジンテのことばかり心配しています。この母親、無神経なくらいなジョハへの対応が随所に見られ最後まで過去に息子を捨てたことを心から後悔しているようには見えなかったのよねぇ それでもジョハは母を赦すんですね

そういえば、登場する母親たち(インスクや大家やピアニストの母)は皆シングルマザーだったのも何かのメッセージを含んでいるのかしら?

大家の高3の娘が母の心配をよそにジンテとゲームばかりしているのですが、ジョハも加わってのゲームシーンがなかなかコミカルでした

ラストで、街の広場に抜け出してピアノを弾いていたジンテを見つけ出したジョハが弟の手を握って横断歩道を渡りますが、これは冒頭でインスクの差し出した手を握るジンテのシーンに重なります。兄弟の心が通じ合ったシーンではありますが、大好きなお母さんは逝ってしまったけれど、彼の周りには兄さんをはじめとして面倒を見てくれる人がいるんだなぁってちょっと安心するシーンでもありました。

ジンテを演じたパク・ジョンミンは韓国の若手実力俳優と言われていますが、三か月猛特訓して、演奏シーンも実際に彼が弾いているようです。(もちろん全部じゃないとは思いますが)そういえば昔中居君が「砂の器」の和賀役にあたり、やはりピアノを猛練習しましたが、役者って努力の天才ですね


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