結城かおる(著) 角川文庫
何もない少女が服飾の才能ひとつで、後宮を変える。爽やかな中華青春物語!
涼国(りょうこく)の没落貴族の娘・鈴玉(りんぎょく)は女官として後宮に入り、家門再興に燃えていた。
だが見習いの稽古は失敗続き。真っすぐで理不尽を見逃せない性分も災いして、反抗的・落ちこぼれの烙印を押されてしまう。
こうなったからには主上の寵愛深い権門の側室づき女官となって一発逆転を目指すも、なぜか鈴玉を指名してきたのは、地味で権勢もない王妃さまだった。失望する鈴玉だったが、ある一冊の小説と友人たちとの出会いによって、次第に服飾の才能を開花させていく。
それは彼女自身の運命と、陰謀渦巻く後宮をも変えていくことにつながり……!?(作品紹介より)
どういうきっかけでこの本を知ったのかはもう思い出せないけれど、図書館で予約した時にはそれなりの順番待ちになっていて、やっと回ってきたもの。表紙を見て「あれ?これって少女漫画的な奴?」と嫌な予感がしましたが、全体としてはまぁまぁ面白かったかも。
舞台は中華だけど、もちろん架空の国の設定。しかし表紙は中華というより大正浪漫風でちぐはぐ感が否めないぞ
ヒロインの鈴玉は勝気というより世間知らずの生意気娘ですが、友達思いで真っ直ぐな気性が救いです。でもその直情傾向が災いして次々騒動を引き起こしてしまうのですが 宦官による艶本が登場しますが、婉曲でソフトな描写なのは読者層を意識してのことかしら
正妻である王妃を廃しようとする一派の陰謀に巻き込まれ、牢に入れられたり攫われて拷問を受けたりしながらも鈴玉は自分の信ずるままに突っ走ります。側室が超腹黒の嫌な奴で、逆に王妃は心優しく立派な女性です。地味で冴えなく見えた王妃が鈴玉の衣装センスで見違えるように美しくなり王の心をつかむ展開ですが元々この夫婦は心が通じ合っているので、外見は所詮二の次だったともいえるんですけどね 賢明な王なのに、側室の色気に彼女の本性を見抜けなかったのか疑問は残りますが、若さと政治的判断ってことで・・。
庭園に咲く花々や衣装の色合わせの描写は良いとして、登場人物たちの容姿については抽象的でイメージが浮かばなかったのはマイナス点。
後宮で生きることは王の寵愛を狙うことでもあるはずですが、鈴玉は王妃への忠誠を選択しています。武官の青年への淡いときめきも、この時点で終了って中途半端な気も。
このはねっ返り娘がどう成長していくのか、続編あるのかちょっと気になりましたが・・・たぶん・・ないね