杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

HOKUSAI

2021年12月27日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2021年5月28日公開 129分 G

町人文化が華やぐ江戸の町の片隅で、食うこともままならない生活を送っていた貧乏絵師の勝川春朗(柳楽優弥)。後の葛飾北斎となるこの男の才能を見いだしたのが、喜多川歌麿(玉木宏)、東洲斎写楽(浦上晟周)を世に出した希代の版元・蔦屋重三郎(阿部寛)だった。重三郎の後押しにより、その才能を開花させた北斎は、彼独自の革新的な絵を次々と生み出し、一躍、当代随一の人気絵師となる。その奇想天外な世界観は江戸中を席巻し、町人文化を押し上げることとなるが、次第に幕府の反感を招くこととなってしまう。(映画.comより)

 

「富嶽三十六景」など生涯を通して3万点以上の作品を描き残したといわれる江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎の知られざる生涯を、青年期(柳楽優弥)と老年期(田中泯)の2部構成で映画化しています。監督は「探偵はBARにいる」シリーズ、「相棒」シリーズの橋本一。

独自の町人文化が花開く江戸。その自由さを危険視した幕府は、堕落させる害悪として、絵師や戯作者、版元に厳しい弾圧をかけます。

勝川春章に師事しながら、狩野派や唐絵にまで興味を示し破門された春朗(後の北斎)は、画の腕は確かだけれど鼻っ柱が強く人の言いなりになるのが嫌いでした。そんな彼の才能を使用人の瑣吉経由で“蔦屋耕書堂”店主蔦屋重三郎が見出し、歌麿や写楽に引き合わせ、「お前の絵は目に映るものをそのまま似せて写してるだけで、色気が無い」と指摘します。

創作に悩み放浪の旅に出た春朗は、白波が打ち寄せる海岸で雄大な富士山を見てインスピレーションが湧き、描き上げた絵を持って重三郎を訪ねます。彼に認められ『江島春望』を仕上げた彼は、名を北斎宗理と改めるのね。重三郎は彼に世界地図を見せ、世界に目を向けるよう諭して逝きます。

壮年となった北斎は絵師をして身を立て弟子を取り、コトと所帯を持っていました。彼女は北斎の勝手気ままな仕事を献身的に支えています。

瑣吉改め滝沢馬琴と名乗り戯曲師となった彼の読み物に北斎は挿絵を描いていますが、筋書きと異なる内容の絵を描く彼に馬琴も振り回されていました。また、版元から柳亭種彦(永山瑛太)という戯作者の挿絵を依頼され二人の親交が始まります。

歌麿が禁制されている絵を描いた咎で捕えられたと聞いた日にも彼は絵を描きます。

月日は流れ・・・

江戸の外れに居を移した北斎はコトを亡くし塞ぎこんでいました。彼の世話は弟子たちや娘のお栄が焼いています。

戯作者の柳亭種彦は本名を高屋彦四郎といい、御用改めとして永井五右衛門の下で働く武士でした。

永井から一層厳しい取り締まりをと檄を飛ばされた種彦は北斎に愚痴をこぼします。北斎は言いたい奴には言わせておけばよいと言います。

卒中を起こし倒れた北斎は、命はとりとめますが、利き手に震えが残ります。70歳となり病を得たからこそ見える世界があるはずだと再び旅に出た彼は、砂浜や山道の高台で見た富士山に創作意欲を掻き立てられ『富嶽三十六景』となりました。

種彦の書いた『偐紫田舎源氏』は、幕府を揶揄する内容で、もし彼の正体がバレたらとお栄は心配します。北斎は物書きになりたい人間が武家に生まれただけで、書く衝動は誰にも止められないと言います。

永井に探りを入れられ初めはやりすごしていた種彦ですが、遂に意を決し「私は書く事を辞めません。私が柳亭種彦です」と告げ、潔く刃に倒れます。遺体と対面した北斎は、無念の死を遂げた種彦の壮絶な形相が浮かび、『生首図』を描き上げます。この絵が御上に知れたら北斎の身が危ないと察したお栄は、一緒に江戸を出て弟子の鴻山のいる小布施に身を寄せます。

目に浮かぶ言葉を絵にしたいと願った北斎が描いた一対の絵、それは鮮やかな藍に渦巻く、怒涛図『男浪』と『女浪』でした。

映画は、北斎の人生を描くと言うより、彼の残した作品がいかにして生まれたかに重点を置いているように思えました。これをスクリーンで見たらその迫力に息を呑んだことでしょう。公開時、劇場で観たかったな


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